ダイキ弓道部にとって「3冠」に向けた挑戦がいよいよスタートする。6月5日から千葉県匝瑳市で開催される第56回全日本勤労者弓道選手権大会がその第一歩だ。ここを皮切りに、9月の国体(新潟)、10月の全日本実業団大会(東京)と3大会での優勝を部員たちは目指している。昨年10月より澤田紀之監督が復帰し、個々人は着実に力をつけてきた。5月の住吉大社全国弓道遠的大会(大阪)で5位入賞を果たした橋本早苗選手に、弓道部の現在と弓を射る魅力をインタビューした。
――住吉大会は5位の結果でした。振り返っていかがですか?
橋本: 入賞できたとはいえ、納得いきませんでしたね。一昨年は優勝した大会ですし、今回ももちろん1番を狙っていました。予選で4本すべて当て、残った5人で臨んだ決勝、最初の1本目でいきなり外してしまったんです。外した3人で順位を決めるために行った近寄せ競射(矢が的の中心に近い順番に上位となる方式)でも最下位になってしまって、結果は5人中5位。このところいい調子で弓を引けていただけに、最後につまづいて悔いが残っています。

――団体でも4位と一歩及びませんでした。部としての現状と課題は?
橋本: 射型の安定が共通の課題です。自分のペースで落ち着いて弓を引ければよいのですが、どうしても試合になるとペースを乱してしまう。ただ、澤田監督が復帰して練習量も増え、内容は着実にレベルアップしていると思います。若い選手も状態が上がってきましたから、私としてもかなり刺激を受けています。あとは結果を出すだけですね。

――結果を出すために大切なことは?
橋本: マイナス思考に陥らないこと。いざ試合が近づくと、緊張からか不安が先立ってしまいます。実際に的に向かう時も、もう少し我慢しなくてはいけないところで不安から逃れるように矢を離してしまう。「怖い!」って思ってしまうんです(笑)。
 そんな気持ちでは的中しないのは分かっています。頭では分かっていても、どうしてもメンタル面をコントロールできない。

――昨年、実業団大会の個人で優勝した時、「弓を楽しめたことが勝因」と語っていたのが印象的でした。弓道は精神面が大きなウエイトを占める競技ですから、本番でそういう心境にもっていくことも大切なんでしょうね。
橋本: そうですね。気持ちが前向きになれば体もうまく動いてくれますからね。ただ、試合を楽しむ気持ちになるのは難しい。練習の中で「これで大丈夫」という自信がなければプラス思考にはなれません。たとえ、うまく行っていなくても、いい意味で開き直ることも必要なのかなと感じています。

――その点では昨年の結婚で気持ちに変化が出てきているのでは?
橋本: 夫が身近な話し相手として側にいてくれることは大きいです。それまでは大会が近づくと、「うまく弓が引けるかな……」とひとりで不安をどんどん募らせていましたからね。夫と生活を始めて、そういった悪循環には陥らなくなりました。試合の前日には、必ずメールや電話をします。だから、大会直前の夫婦げんかは厳禁です。いい結果を残すためにも(笑)。

――弓道をはじめたきっかけを教えてください。
橋本: 高校に入学した時の部活紹介で、はかま姿に「かっこいい」と憧れたのが最初です。中学時代はバスケットをやっていたので、まったくの初心者でした。高校時代の成績は県総体止まりでしたが、一度、国体予選の代表に選ばれたことがあります。その時にお会いしたのが澤田監督でした。当時からダイキは弓道が強くて憧れの存在だったので、「ウチでやってみないか」と声をかけられた時にはうれしかったです。

――入社して、とまどいはありませんでしたか?
橋本: 毎日、いっぱいいっぱいでしたね。仕事も練習も100%で臨まなくてはいけませんからね。最初は仕事と弓道と寝るだけの生活でした(笑)。

――今はどんな仕事を?
橋本: 部署は経理です。20日前後や月末は忙しくなるのですが、職場の方のサポートに助けられています。どんなに大変でも「後はやるけん、練習行きよ」って声をかけてもらうので、余計にいい結果を残さなくてはと気持ちが入りますね。

――弓道をやっていて良かったことは?
橋本: やはり自分の努力が結果として出るところでしょうね。大会に出ると良くも悪くも「これだけできた」「これはできなかった」とはっきり分かりますからね。「できなかった」と感じる点が多いのは課題ですが(苦笑)、それでも「できた」という達成感を得られるところは魅力です。もうひとつは、試合を通じて、普段は出会えないような他の選手たちと仲良くなれることでしょうか。仕事だけでは、こんなに多くの人と接する機会はなかなかないと思います。

――6月の勤労者大会が近づいてきました。意気込みを聞かせてください。
橋本: まだ先だと思っていたのに、気付けばもう1カ月もないんですね。まずは24日に四国弓道選手権(高知)がありますから、そこに全力を注ぎます。この大会をいいステップにして、自信をつけて勤労者大会に臨みたいですね。
 先程も話したように、どの選手も内容は良くなってきました。今は毎日がとても充実しています。優勝は決して簡単な道のりではありませんが、全員で力を合わせて戦うつもりです。いいご報告ができるように頑張ります!
(写真:ダイキ弓道部の選手たち)

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(聞き手:石田洋之)
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