二宮: 3月1日にはJリーグが開幕します。今年はW杯イヤーですから、リーグ戦の勝敗はもちろん、代表入りを巡る各選手のアピールにも注目が集まります。シーズンの準備に、沖縄をキャンプ地に選ぶクラブは少なくありません。今年も9つのJクラブが沖縄でキャンプを張りました。FC東京は国頭(くにがみ)村で1月に約1週間、練習を行いました。
徳永: 国頭でキャンプをするのは3年連続です。気候は暖かいし、食事もおいしい。1年のスタートにあたってサッカーに集中できる場所に行けるのはとてもいいことだと感じています。

 沖縄まで応援に来るサポーターも

二宮: どのアスリートに訊いても、沖縄でのおいしい食事が練習後の楽しみのひとつになっているようですね。
徳永: 沖縄料理は好きなので僕も楽しみにしていますよ。練習でたくさん動きますから余計にお腹がすく。豚肉を使った料理などが出てくると最高ですね。キャンプ中はチームみんなで食事をとるので、コミュニケーションをとる時間が増えるのもチームのつながりを強くする上で大きいですね。

二宮: 1、2月の沖縄は雨も多いですが、練習場となる国頭村くいなエコ・スポレク公園陸上競技場の環境はいかがですか。
徳永: ピッチの水はけはいいですし、とても練習がしやすいグラウンドですね。練習場の近くには砂浜があるので、その上を走ったりもしました。日が照っていると、1月でも砂浜の上は熱いくらい(笑)。汗だくになりながら走りましたね。砂浜を走るのはすごくきつくて、翌日には足が筋肉痛になりますが、広い海を見ながらトレーニングをするのは気持ちがいいです。

二宮: シーズンに向けてフィジカルの状態をあげていくには、ちょうどいい場所だと?
徳永: シーズンに入って試合が続くと、体づくりのトレーニングをしっかりやるタイミングがなかなかありません。だから、シーズン前に暖かい環境の中で、楽しみながら体を鍛えられるのはプラスになると思います。

二宮: 徳永さんは長崎県の出身です。沖縄を初めて訪れたのは?
徳永: 高校(国見高)時代に試合で遠征しました。夏だったので、ものすごく暑かったですよ(笑)。それから合宿などで何度も沖縄に来ていますが、冬場でも暖かいシーズン前の1、2月の時期に練習をするのが一番ですね。

二宮: 今年はFC琉球がJ3入りを果たし、沖縄でもさらにサッカー熱が高まりそうですね。
徳永: FC琉球とは一昨年のキャンプ中に練習試合をしました。応援に来ているファン、サポーターも多くて、とても力が入っている
感じがしましたね。僕たちの練習を観に来ている人も年々、増えている気がします。東京から旅行も兼ねて、沖縄まで来てくれる熱心なファン、サポーターもいるんですよ。

二宮: 毎年、沖縄を訪れていると現地の人との交流も深まるのでは?
徳永: はい。シーズン中、わざわざ僕たちの試合を応援に来てくれる方もいて、本当に幸せなことです。キャンプ中にはサッカー教室を開催して、現地の子どもたちにもサッカーを楽しんでもらっています。

二宮: 昨年は天皇杯ベスト4。残念ながら準決勝でPK戦の末、サンフレッチェ広島に敗れましたが、年末まで試合がありました。年が明けて1月末からは香港でのAET CUPに参戦しています。オフは短かったと思いますが、コンディションはいかがですか。
徳永: 確かに休みは少なかったですが、体をオフにしている期間が短かった分、逆に仕上がりが早く、よく動けている感覚があります。

 特別なオーラを感じた中村俊輔

二宮: FC東京は第91回天皇杯を制し、ナビスコ杯も2度優勝しています。しかし、まだリーグ戦では優勝経験がありません。今季はリーグ制覇が大きな目標になります。
徳永: もちろんです。僕たちは一発勝負のトーナメントは強いのですが、長丁場の戦いになると勝負弱さが出てしまう。毎年、ここぞという時にミスが出て試合を落としています。勝てば上に行けるというチャンスをみすみす逃しているのが、すごくもったいないです。

二宮: 広島が連覇中とはいえ、決して潤沢な資金があって、圧倒的な戦力を誇っているがわけではありません。戦い次第ではどのクラブにも優勝の可能性があると言えるでしょう。
徳永: その通りです。チャンスは十分にあると見ています。広島と戦ってみて感じるのは、自分たちのサッカーがブレていないこと。守る時は守るし、攻める時は攻める。そのスイッチのタイミングを全員が理解して、連動できるところに強さがある。大人のチームという雰囲気がします。

二宮: 大人のチームといえば、昨季は横浜F・マリノスが最後の最後まで優勝争いを演じました。中村俊輔選手や中澤佑二選手といったベテランがうまく機能していましたね。
徳永: 2人の存在感は大きかったですね。ここも戦い方がはっきりしていて、周りの若い選手が連動して中村選手のやりやすいように動いてくる。だから中村選手もボールを思うように扱える。対戦していて「強い」と感じました。

二宮: 昨季は中村選手もコンディションが良く、円熟のプレーが光りました。
徳永: ボールを持っていても絶対取られないという自信にあふれていまいたね。相手の動きを最後まで見て逆をついてくるのは本当にうまかったです。おそらく体の調子も良かったのでしょう。昨季の中村選手は例年以上に特別なオーラを感じましたよ。ピッチ上で誰も寄せ付けないような雰囲気がありました。

二宮: 今季のFC東京はマッシモフィッカデンティ監督が新しく就任しました。長友佑都選手が所属していたチェゼーナなど、セリエAで指揮を執った実績もある指導者です。
徳永: Jリーグでは初のイタリア籍監督だと聞いています。セリエAを知っている監督が日本に来て、僕たちを指導してくれるのはうれしいですね。

二宮: Jリーグは20年ちょっとの歴史でJ1優勝したクラブが9つ。これは80年以上の歴史を誇るリーガ・エスパニョーラと一緒の優勝クラブ数です。つまり、Jリーグは群雄割拠でどこが勝つか予測がつかない。そこがひとつの魅力とも言えます。
徳永: 僕たちはまだリーグ戦で最終節まで優勝を争った経験がありません。やはり、最後まで優勝の可能性がある位置で戦うことがまずは重要だと考えています。その上で最後は笑ってシーズンを終えられれば最高ですね。

二宮: 徳永さんはプロ入りからFC東京一筋。大学時代から特別指定選手としてプレーして、今季が12年目のシーズンです。
このクラブで是が非でも優勝したいとの思いは人一倍強いでしょう。
徳永: 僕にとってFC東京は高校時代から声をかけていただいて、ずっとお世話になっているクラブ。大学(早稲田大)から東京で暮らしていて、地域に愛着もあり、今では第2の故郷です。だから、ぜひみんなで、強く、愛されるチームをつくって毎年、タイトルを獲れるようなクラブにしていきたい。これが理想ですね。


(後編は2月28日更新予定です) 

<徳永悠平(とくなが・ゆうへい)プロフィール>
 1983年9月25日、長崎県生まれ。ポジションはDF。長崎・国見高時代は2年時にインターハイ、国体、選手権の3冠達成。3年時も選手権連覇とユース選手権優勝を果たす。早大進学後は4年時に主将としてチームを牽引し、9年ぶりの1部復帰に導く。大学在学中から特別指定選手としてFC東京でプレーし、06年にプロ契約。左右のサイドバック、ボランチを務め、04年、09年にナビスコ杯制覇、11年には天皇杯優勝を経験する。各年代別の代表にも選ばれており、09年に初のA代表入り。12年にはオーバーエイジ枠でロンドン五輪に出場する日本代表に選出され、ベスト4入りに貢献した。13年は東アジア杯で代表に招集されて初優勝。180センチ、77キロ。背番号2。


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(構成:石田洋之)
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