田舎の人は皆、声がデカイ。コソコソ話すことができない。東京の電車の中でもお構いなしだから周囲の人はびっくりする。
 
 なぜ田舎の人は声がデカイのだろう。有力な説として人が少ないから、大声で話さないと、ちゃんと聞き取れないというものがある。
 
 確かに子供の頃、みかん畑では皆、大声で話していた。大声じゃなければ、10メートルも離れると聞き取れないのだから仕方がない。港でもそうだった。漁師さんたちは、皆デカイ声で語らっていた。小声で話す漁師さんなんて見たこともない。
 
 過日、愛媛の田舎から政治の仕事をしている人たちがやってきて、数人でテーブルを囲んた。場所は銀座のシャレた焼き鳥屋だ。ただでさえ声がデカイのに、飲めば、さらにボルテージが上がる。
 
「これは、ここだけの話じゃけどのォ~」。もう。その時点で「ここだけの話」ではなくなっているのだが、誰も気にもとめない。大らかというか、無防備というか……。
 
「もう少し、小さい声で話した方がいいんじゃないの」。さりげなく注意すると、思いがけないセリフが返ってきた。「アンタ、都会の人みたいじゃのォ」。うれしさ半分、寂しさ半分。複雑な気持ちになった師走の夜だった。
 
(編集長N)

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