こう見えても一度だけサッカーのワールドカップに出場したことがある。ワールドカップ? 二宮さんが? おそらく読者の皆さんの頭の中には「?」がチカチカと点滅しているはずだ。


 ワールドカップはワールドカップでも、私が出場したのはFIFA(国際サッカー協会)非公認の“草ワールドカップ”である。
 あれは今から12年前のことだ。アメリカ大会、私は西海岸を中心に試合を見て歩いた。
 サンフランシスコのスタンフォード・スタジアムでブラジル―ロシア戦を観戦した直後の出来事。ゲートを出て、木立の中を抜けると、そこには一面の芝生が広がっていた。

 バスを待つ間、芝生の上にはいくつもの輪ができた。そこでは各人種、各民族入り乱れての“国際草サッカー”が行われていた。
 ゴールはどこかから運んできたドラム缶2本。チームの分け方は裸組とシャツ組。バスを待っている者なら、誰でも自由に参加することができた。人数制限は全くなし。

 無性にボールが蹴りたくなった私はシャツを脱いで裸組に加わり、夢中でボールを追った。この“草ワールドカップ”は全てのバスが出払うまで、メンバーを数十分単位で替えながら延々と続いた。あんな楽しい“試合”に参加したのは、生まれて初めてだ。
 東京で“草サッカー”を楽しんでいる子供なんて、見たことがない。いや“草野球”だって、もう何年も見ていない。

 公園に行っても「キャッチボール禁止」「サッカー遊び禁止」と書かれた看板が掲げられているため、結局は散歩くらいしかすることがない。
 「最近の子供は家の中でゲームばっかりやっていて外で遊ばない。だからひ弱なんだ」
 こんな声をよく耳にする。しかし、東京では外で遊ぼうにも、遊ぶところがないのが実状である。愛媛はどうだろう?
 子供の体力低下の責任は大人にもある。

(この原稿は2006年8月号『アクリート』に掲載されました)
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