ニューヨーク・ヤンキースの井川慶投手が17日、本拠地のトロント・ブルージェイズ戦で後半戦初先発を果たした。井川は5回3失点で勝ち投手の権利を持って2番手にマウンドを譲ったが、同点に追いつかれて3勝目はならなかった。試合は4−4の同点で迎えた6回にヤンキースが2点を勝ち越し。6−4で逃げ切って3連勝をおさめた。
 フィリップス、勝ち越しタイムリー
トロント・ブルージェイズ  4 = 002011000
ニューヨーク・ヤンキース 6 = 02200200×
勝利投手 プロクター(2勝5敗)
敗戦投手 タワーズ(4勝6敗)
セーブ   リベラ(2勝3敗14S)
本塁打   (ブ)グラース13号2ラン、14号ソロ、リオス19号ソロ
       (ヤ)松井秀14号ソロ、カノ7号ソロ、ロドリゲス32号2ラン

 メジャー復帰後、3試合で0勝1敗。とにもかくにも結果がほしい井川だったが、この日も首脳陣やファンを納得させる投球はできなかった。
 初回は2死1、2塁、2回は2死満塁と立ち上がりから得点圏に走者を背負う。速球でなんとか後続を打ち取り、ゼロに抑えたが2回で48球を要した。この時点で早い時期での交代を告げられるのは目に見えていた。

 それでも2回裏、苦しむ左腕を援護すべく、松井秀喜が立ち上がる。先頭打者として打席に入った松井は変化球をライトへ運ぶ。10試合で6本目となるゴジラの一発。ヤンキースが先制した。その後、ロビンソン・カノにもソロが飛び出し、2−0。井川には願ってもない先取点をもらう。

 ところが3回、井川もブルージェイズ打線につかまる。先頭のバーノン・ウェルズを四球で歩かせると、4番トロイ・グラースを追い込みながら、決め球が中へ。グラースが放った打球はライトスタンドへ飛び込む同点2ランとなった。取った後に取られる最悪のパターン。井川は波にのれないまま序盤を終える。

 ヤンキースは3回裏、アレックス・ロドリゲスの2ランで再び勝ち越しに成功。井川は毎回のようにピンチを迎えながら、勝ち投手の権利を得る5回のマウンドにやってきた。先頭は前の打席で本塁打を打たれているグラース。細心の注意を払わなくてはならない場面だった。
 にもかかわらずカウント2−2から投じたストレートは真ん中に入る。メジャーの4番クラスなら、打ち返すのは容易な絶好球だ。はじき返したボールは松井の頭上を越え、スタンドに消えた。結局、井川はこのソロ本塁打の1点で切り抜け、勝ち投手の権利をかろうじて手にすることはできた。

 ただ、5回で投球数は119。7安打3失点の内容では次の回のマウンドに上がることはできない。6回、後を継いだスコット・プロクターが同点ソロを浴びて、井川の3勝目はつゆと消えた。直後にヤンキース打線が2点をあげ、白星がプロクターについたのは皮肉だった。勝負事に“たられば”はないが、5回をゼロに抑えれば約3カ月ぶりの3勝目はグッと近づいていただろう。

 5回で7三振を奪った投球が示しているように、速球と変化球のコンビネーションがはまれば、メジャーの打者をキリキリ舞いさせる実力が井川にはある。しかし、現状では抑えている印象よりも打たれている印象のほうが強い。故障で戦列を離れていたジェフ・カーステンズやフィル・ヒューズら先発投手の復帰が近づいており、このままでは再びマイナー降格の可能性も出てきた。

 次回登板は22日(日)のタンパベイ・デビルレイズ戦が予定されている。30億円ルーキーへのニューヨーカーの評価は登板を重ねるごとに手厳しくなってきた。残されたチャンスが刻一刻と少なくなっていることは間違いない。

<桑田VS松井稼、メジャー初対決は二ゴロ>

 ピッツバーグ・パイレーツの桑田真澄投手は同日、コロラド・ロッキーズ戦に後半戦に初登板した。9−8とロッキーズがリードした6回、3番手としてマウンドにあがった桑田はいきなりエラーで無死2塁のピンチを背負う。

 ここで打席に入ったのは2番・松井稼頭央。02年の日本シリーズ以来となる対決が実現した。PL学園の先輩後輩対決は初球、松井稼がバントの構えをみせる。先輩をいきなり揺さぶったものの、バントはファウル。2球目、今度は桑田が緩いカーブで打ち気をそらす。松井稼はこれをファウルで逃れる。カウント2−0の3球目、丁寧に桑田が低めを突くと後輩はセカンドゴロに倒れた。

 しかし、この打球で走者は3塁に進み、次打者の犠飛で桑田は1点を失う(自責はゼロ)。桑田は犠飛を許したところでマウンドを降り、3分の2イニングを投げて無安打1失点の内容だった。貴重な追加点をあげたロッキーズは10−8で逃げ切り勝ち。直接対決は先輩の勝利に終わったものの、後輩・松井の所属するロッキーズが試合をモノにした。
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