独立リーグの発展を私は2つの意味で支持している。ひとつは夢を諦めきれない若者への再チャレンジの場として。バブル崩壊以降、プロ野球の実質的なファームの役割を果たしていた社会人の企業チームは激減した。将来、野球で生活したいと考えている若者にすれば、行き場がないのが実情だ。
 
 どんなに素質を持った“ダイヤモンドの原石”も磨かなければ、ただの石コロである。独立リーグでは、プロの指導者が基本を教え、年間80試合前後の実戦経験を積ませることで、スリーパー(眠っている才能)にチャンスを与えている。日本からメジャーリーグへのスター選手流出が相次ぐ中、彼らに代わる人材供給基地として、その存在意義はますます高まっている。

 2つ目はスポーツによる地域振興。四国も北信越もこれまでNPBの球団が存在しなかった。人々が野球観戦を楽しむ機会は限られていた。
 四国や北信越は首都圏やほかの大都市と比べて娯楽が少ない。中央と地方の文化格差は、経済格差以上に深刻な問題だ。この格差が若者の中央志向につながっていることは言を俟たない。地域にスポーツクラブが増えれば、住民に娯楽を提供するのみならず、若者を引きとめることもできる。

 今シーズンからアイランドリーグには九州の2球団が加わった。長崎セインツと福岡レッドワーブラーズだ。一方、BCリーグも福井ミラクルエレファンツと、群馬ダイヤモンドペガサスが新規参入した。これで両リーグとも6球団ずつの運営になり、早くもNPBと同じチーム数(12球団)に到達した。
 広域化はビジネスチャンスの拡大にもつながる。アイランドリーグでは、九州に領域を広げたことに伴い、ソフトバンクモバイルとメインスポンサー契約を結ぶことができた。契約金額は年間1億円近いという。アイランドリーグは過去3年間、億単位の赤字に悩まされていただけに、大手企業のサポートは経営面でも大きなプラスとなるだろう。

 各球団の地域に密着した地道な取り組みも実を結び始めた。4月12日の愛媛のホーム開幕戦ではリーグ4年目にして、1試合の観客動員が初めて1万人を突破した。おらがまちのチームを支えようという機運は地域全体に高まりつつある。
 アイランドリーグは岡山や宮崎、BCリーグは福島などにもチームをつくるなど、さらなるエクスパンション(球団拡張)に乗り出す構え。関西にも和歌山などを中心に新たな独立リーグ創設の動きがあり、その概要がこのほど発表された。いずれは1県に1つ、独立リーグの球団が誕生することになるかもしれない。スポーツを通じて、地域を元気に――。スポーツも「地方分権型」が主流になりつつある。

<この原稿は2008年5月20日号『経済界』に掲載されたものです>
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