43の国と地域が参加した南アフリカW杯アジア地区予選で、最終予選にコマを進めたのは日本、豪州、バーレーン、ウズベキスタン、カタール、韓国、イラン、サウジアラビア、北朝鮮、UAEの10カ国。W杯出場経験があるのはこのうち7カ国だが、組み分け抽選の結果、A組に入ったのは日本と豪州のみ。この事実ひとつをとっても日本はクジ運に恵まれたといえる。W杯未出場国が悲願をかなえるのは、我が日本代表の苦闘の歴史が物語るように容易なことではない。

 あえて不安材料をあげれば「アウェーで始まりアウェーで終わる」ことか。自国開催となった02年の日韓大会を除き、これまで日本は2度、アジア予選を勝ち抜いてW杯に出場している。98年フランス大会と06年ドイツ大会だ。双方とも最終予選はホームで始まりホームで終わっている。フランスW杯最終予選初戦はホームでのウズベキスタン戦。カズがハットトリックを決めるなど日本は大量6点を奪ったが、後半に3点を返されるなど守備面に不安を残した。もし初戦のウズベキスタン戦がアウェーだったら……。フランスへの道のりはさらに困難なものとなっていたに違いない。

 結局、UAEとの熾烈な2位争いは最終戦にまでもつれ込む。勝ち点はわずかに日本が1ポイントリード。最終はホームでのカザフスタン戦。5対1と圧勝し、ジョホールバルでのイランとの第3代表決定戦に弾みをつけたのである。

 ドイツW杯最終予選初戦はホームでの北朝鮮戦だった。後半ロスタイム、大黒将志の劇的なゴールで日本は北朝鮮をかろうじて振り切ったが、あれがピョンヤンでのゲームだったら逆の目が出ていたのではないか。もし初戦でつまずいていたら「日本とイランで決まり」と見られていた“無風区”のB組に突風が吹いていたであろう。日本は最終的には1位通過を果たしたが、後で振り返ると初戦が全てだった。

「アウェーで始まりアウェーで終わる」最終予選をどう戦い抜くか。危機感を共有するためにはひとつくらい高いハードルがあった方がいいのかもしれない。ちなみに初戦の相手バーレーンはホームスタートのホーム終わり。私の評価では▲だが、スケジュールに恵まれたことで〇に近付いてきた。初戦で叩き、スケジュール上のアドバンテージを無力化しておきたい。

<この原稿は08年7月2日付『スポーツニッポン』に掲載されています>

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