監督が代われば、こうも変わるものなのか。一時は最下位に沈み、最大で11あった借金が今じゃ貯金4、チームも2位に浮上した(9月17日現在)。9年ぶりのAクラス入り、クライマックスシリーズ出場はほぼ確実である。
 笛吹けど踊らなかったオリックス・バファローズを戦う集団に変えたのがテリー・コリンズ監督辞任後、ヘッドコーチから監督に昇格(当初は監督代行)した大石大二郎だ。彼が指揮を執ってからチームは右肩上がり。

 ある主力選手は声を潜めて言った。「コリンズはこちらが相談を持ちかけても話を聞いてくれなかった。“すべてボスに従え”という態度だった。ヘッドコーチの大石さんは監督と選手の板挟みになっていた。お互いが苦しい時期を過ごしていただけに“戦友”という思いがある。今は非常に風通しがよくなった」

 弁護するわけではないが、コリンズは決して凡庸な指揮官ではない。アストロズ時代にはBクラスの戦力ながら1994年から3年連続で勝ち越している。卓越した野球理論の持ち主でもある。

 しかし、オリックスではあまりにも米国流にこだわり過ぎた。たとえば2軍戦の視察。選手層の薄い日本では、一軍メンバーが故障した場合、誰を代わりに使うかを素早く判断するためにも、できるだけ多くの選手のプレーを見ておいたほうがいい。だが、コリンズは一度しか足を運ばなかった。米国ではメジャーリーグの指揮官がシーズン中、マイナーリーグを視察することはまずありえない。「郷に入りては郷に従え」という格言があるが、コリンズは日本流に興味を示さなかった。

 外国人監督辞任→コーチから監督昇格の成功例としては、75年の広島が挙げられる。ジョー・ルーツ監督辞任後に指揮を執った古葉竹識は見事にチームをまとめ上げ、初のリーグ優勝に導いた。大石バファローズにもそんな気配が漂っている。

<この原稿は2008年10月4日号『週刊ダイヤモンド』に掲載されたものです>
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