南アフリカW杯に4大会連続4度目の出場を目指す日本は、アジア地区最終予選でオーストラリア、バーレーン、ウズベキスタン、カタールと同じA組に入っている。
 もう片方のB組は韓国、イラン、サウジアラビア、北朝鮮、UAEと強豪揃い。どの国もW杯出場経験があり、この中で2位までに入るのは至難の業だ。
 それを考えればクジ運に恵まれたと言っていいだろう。

 岡田武史監督は組分け抽選後、こう語っていた。
「チーム力から考えて、決して悪い組ではない。移動や環境を考えても、そんなに悪くないのではないか」
 各組の2位までに入れば、自動的に本大会出場権が与えられる。3位でもまだチャンスがある。別の組の3位と5位決定戦を行い、これに勝てばオセアニア1位とプレーオフに回る。
 オーストラリアがアジア連盟に転籍した今、オセアニア予選を勝ち抜くのはニュージーランドでほぼ決まり。
 では、アジア5位とニュージーランドではどちらが強いのか。何が起こるかわからないのがW杯予選とはいえ、客観的に見ればアジア5位の方が上だろう。
 つまり事実上、アジアの出場枠は5枠。最終予選は10チームが参加するのだから、確率的には5割か。
 B組は韓国、イラン、サウジアラビアの3カ国が3強を形成する。つまり、このうちのひとつが5位決定戦に回る可能性が高い。
 もし日本がA組3位となった場合、相手はその3カ国のいずれかになりそう。蹴落としてプレーオフに進むのは容易ではない。何が何でも2位以内を死守したい。

 そこでA組を見ると、オーストラリアと日本が頭ひとつ抜けている。FIFAランキングもオーストラリアの37位の次は日本の38位。ダークホースと見られるウズベキスタンは76位だ。
 しかし、FIFAランキングを額面どおりに受け止めるわけにはいかない。
 アジア地区3次予選ではFIFAランキング72位のバーレーンと1勝1敗で星を分けた。苦しめられたオマーンはFIFAランキング81位だった。
 星勘定すれば、4勝2敗2分けの勝ち点14あたりが合格ラインか。これを下回ればかなり苦しくなる。
 大切なのは序盤の3連戦をうまく乗り切ることだ。もちろん油断はできないが、ある程度勝ち点の見込める相手が続く。しかし、その内容によっては岡田監督の進退問題に発展するかもしれない。
 気になるのは移動距離だ。東京から一番近いタシケント(ウズベキスタン)でも約6000キロ。中東は8000キロを超える。
 オーストラリア以外の国は日本での試合はドロー狙いだろう。逆に言えば、ホームゲームはしゃにむに勝ちにくるはず。
 日本にすれば、アウェーで勝ち点3を取るより、相手に勝ち点3を与えないことの方が重要である。

 岡田ジャパンの司令塔・中村俊輔がいいことを言っている。「最終予選は9カ月間の長丁場。1度か2度、自分たちの計画通りに行かない試合は絶対に出てくる。その時に崩れるのか、それとも立て直せるのか。すぐに次の局面や試合で修正して、自分たちのサッカーをいかに表現できるのかが大切になる。」(報知新聞6月28日付)
 そのとおりだ。何が起きてもジタバタしないことだ。
 日本はこれまで「ドーハの悲劇」「ジョホールバルの歓喜」というフレーズからもわかるように、悲劇と歓喜を繰り返してきた。
 それが日本人のいいところでもあり悪いところでもあるのだが、第2次大戦を見ればわかるように感情の振り子が振れやすい。目先の勝利や敗北に一喜一憂することなく冷静に、そしてタフに戦い抜くことが肝要である。日本にとって最大のアドバンテージはオーストラリアを除く3カ国にW杯出場経験がないこと。この差は大きい。

(この原稿は『週刊漫画ゴラク』08年7月25日号に掲載された内容に一部加筆したものです)

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