ローカルクラブながら昨季J1で4位に入り喝采を浴びた大分トリニータが、今季は序盤からつまずき、リーグ戦4試合を残してJ2への降格が決定した。昨年11月にJリーグカップを制し「地方の雄」と呼ばれたことが、もう随分昔の出来事だったような気がする。
 大分の悲劇は降格だけに留まらなかった。09シーズンのホームゲームを開催する資金が底をつき、Jリーグに対し資金援助を要請した。これを受けリーグ側は09年11月末までに必要な3億5千万円を融資、さらに2億5千万円を貸し付けた。
 リーグが把握している大分の経営状況は累積赤字11億円、債務超過5億6千万円、10年1月末までの借入金12億円という厳しいもの。鬼武健二Jリーグチェアマンは「存続が危ぶまれるほど深刻な経営危機。破綻に近いといっても過言ではない」と報告した。

 Jクラブの営業収入は主に広告料、入場料、Jリーグからの分配金によって成り立っている。J1とJ2を比較するとJ2のクラブは広告料収入でJ1の29%、入場料収入で25%、分配金で27%と総収入は実に4分の1にまで落ち込む。
 大分のホーム九州石油ドームにはJ2降格が決まっても2万人近いサポーターが詰めかけており、入場料収入が激減することはなさそうだが、今年の東京ヴェルディのように63%も観客を減らした例もある。

 余談だがJリーグ創設の理念である「地域密着」を無視したヴェルディには自業自得の感もある。
 今になってヴェルディの幹部は「地域密着が大前提。一から地道な活動をしていく」などと語っているが、それ以前の経営者は、いったい何をしていたのか。
 地域に愛されないクラブは弱くなると、難破船からネズミが逃げ出すようにサポーターもいなくなる。ヴェルディのこれまでの経営者は地元ではなく親会社の方ばかり向いて仕事をしていた。これではサポーターに愛想を尽かされても仕方がない。

<この原稿は「フィナンシャルジャパン」2010年2月号に掲載されました>
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