前インディアンスの大家友和はMLBでは日本人投手として野茂英雄の123勝に次ぐ51の勝ち星を挙げながら、それに見合う評価を日本では得ていないような気がする。それは日本での印象が薄かったせいだろう。94年に京都成章高からドラフト3位で横浜に入団したが、5年間在籍して1勝(2敗)しかあげていない。まさに海を渡ってから地歩を固めた選手といえる。
 その大家に先頃、滋賀県内で会った。渡米に向けトレーニングに励んでいた。どの球団のスプリング・トレーニング(キャンプ)に参加できるかは未定だ。
 アメリカではキャンプの招待選手のことをインバイティ(invitee)と呼ぶ。キャンプで首脳陣の目に留まるような活躍をみせればメジャー契約も夢ではないが、その可能性は決して高くはない。大家は昨年はインディアンス、一昨年はホワイトソックスのインバイティとしてキャンプに参加した。一昨年は結局メジャーに昇格できなかったものの、昨季はシーズン途中に2年ぶりの復帰を果たした。

「MLBのキャンプは主力中心に物事が運ぶため、インバイティにはなかなかチャンスが巡ってこない。しかし、準備を怠るわけにはいかない。主力がケガをしたり、不調で急に“オマエ、投げろ”ということもありますから。そこで結果を出さなくてはならない。まったく登板のチャンスがないまま1日が終わってしまうこともあります。昨年なんて“オレ、何しに来たんやろう”という感じでした」

 インバイティならではの悲哀もある。エクスポズ時代の02年に13勝、03年には10勝と2年連続2ケタ勝利の実績を持つ大家だけに主力選手との“格差”は骨身にこたえた。
「たとえばフォトデー。主力選手は背番号入りのユニホームで名鑑やメディア向けの写真を撮られるのですが、インバイティは背番号なし。撮影場所に行ってみたら“オマエらはいらねぇ”と言われて、仕方なくクラブハウスに引っ込んだこともありました」

 招待選手と言えば聞こえはいいが、大家に言わせれば「主力選手が故障した場合の保険」。その扱いは「招かれざる客」に等しい。それでもMLBのマウンドにこだわる理由は何か。「僕はMLBをリスペクトしている。自分もその一部でありたい」。最高峰のマウンドへのまなざしは昔のままだ。

<この原稿は10年2月10日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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