今シーズンより信濃グランセローズ監督に就任した佐野嘉幸です。私は現役引退後ずっとNPBや韓国でコーチや二軍監督、一時はMLB(サンディエゴ・パドレス)のスカウトを行なってきましたが、昨年は初めてどこにも所属せず、時折少年野球で指導する程度の生活をしていました。そんな私に信濃の三沢今朝治球団社長から電話がかかってきたのは昨年11月のことでした。もちろん、断る理由などありません。しかも聞けば、信濃は2年連続で地区最下位とチームが低迷している。これまでの経験をいかし、なんとか再建したいという思いで、監督を引き受けました。
 私は一昨年まで千葉ロッテの巡回コーチをやっていましたので、もちろん独立リーグの存在は知っていました。実際、ファームではBCリーグの群馬ダイヤモンドペガサスや四国アイランドリーグ(現四国・九州アイランドリーグ)のチームと親善試合をしたこともあります。

 試合をする前は、ファームとはいえ、こちらは歴としたプロ球団。独立リーグとの差はかなりあると思っていました。ところが、いざやってみると、思っていた以上に独立リーグのレベルが高いことに驚かされたものです。

 さて、チームは今月から合同自主トレーニングを中野市で行なっています。まだ外は雪が積もっていて、グラウンドは使える状態ではありません。ですから体育館などを借りて室内で行なっています。
 信濃では例年、全員集まっての本格的な練習は3月のキャンプからでした。しかし、キャンプまでのコンディションづくりがうまくいかない選手もいたようで、今年はキャンプ前からしっかりとトレーニングしていこうということで、1カ月早い始動となりました。さらに開幕が4月3日からと昨シーズンよりも1週間早まったことも理由の一つです。また球団が室内とはいえ、練習できる環境を整えることで雪国のハンデ克服という意味合いもあります。

 現在は主に1シーズン戦える体力を養うことを重要課題としてトレーニングを行なっています。室内でも可能なフリーバッティングなどを行うこともありますが、実践的な練習は3月のキャンプからと考えています。その頃にはすっかり雪も溶け、思いっきりグラウンドで白球を追えるようになっていることを祈るばかりです。

 長年、指導者をやってきましたが、最も大事なことは野球への熱意と根気強さだと思っています。独立リーグの指導も全く変わりません。そして、選手に求めたいのは切り替えの早さです。BCリーグでは1シーズン72試合あります。どんなに強いチームでも負ける日もあります。内容的にもいい試合ばかりではありません。大事なのは反省はしても負けをひきずらないこと。とにかく、明るく、活気のあるチームにしたいと思っています。

 昨シーズンのチームデータを見てみると、打撃の方はそれほど不安には思っていません。課題はやはり投手を含めた守備。特に投手陣は勝ち頭だった星野真澄(巨人)、高田周平(阪神)の2本柱が抜けたのは、やはり大きいですね。
 私自身、チームを率いて初めての年ですから不安もあります。しかし、16名の新人選手には素質の高い選手も多く、彼らがどこまで活躍してくれるのか、それによってチームがどう化けるのか、非常に楽しみでもあります。

 前述したように、現在選手たちは室内でのトレーニングに励んでいます。選手は皆、早くグラウンドで思いっきり走り回りたいとウズウズしていることでしょう。しかし、みんな声がよく出ており、室内でも元気いっぱいです。
 もちろん、目標は優勝です。そのためにもどういう展開になっても、試合が終了するまで決して諦めず、そして粘り強く戦っていきます。ファンの皆さんには、一つ一つのプレーに情熱をもった選手の姿をぜひ応援してもらいたいと思っています。

佐野嘉幸(さの・よしゆき)プロフィール>:信濃グランセローズ監督
1944年4月1日、山梨県出身。甲府工業高から1962年、東映(現・北海道日本ハム)に入団。72年に南海へ移籍し、レギュラーに定着した。73年にはリーグ優勝に貢献する。75年のシーズン途中で広島に移籍し、同年チーム初のリーグ優勝に貢献。79年に現役を引退し、翌年から国内外の球団でコーチや二軍監督を務める。2001年〜03年にはMLBパドレスのスカウトに就任。04年〜08年は千葉ロッテのコーチを務めた。今季より信濃の監督に就任した。


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