チアリーディングの日本一決定戦――。今年も8月26〜28日の3日間に渡り、国立代々木競技場第1体育館で「Japan Cup 2011チアリーディング日本選手権大会」が開催された。全国から中学、高校、大学、社会人チームが一堂に会し、迫力と美しさを兼ね備えた演技で会場を沸かせた。帝京大学チアリーディング部「BUFFALOS」は昨年、同大会で初の表彰台(大学の部ディビジョン1・3位)をつかんだ。今年6月の関東チアリーディング選手権でも初優勝を飾り、今最も勢いのあるチームとして注目されている。果たして日本選手権ではどんな演技を見せてくれたのか。

「自分たちの演技ができなかったことが悔しい」
 メンバーから何度も聞かれた言葉だ。準決勝を3位で通過し、決勝に臨んだ「BUFFALOS」は弾けるような笑顔と快活な掛け声、そしてキレのある動きを見せ、観客たちを魅了した。「練習でもあまり成功率はよくなかった」という前半の見せ場、トップがダブル(2回転)を決め、さらに3−3−2(3人のベースの上に3人のミドル、さらにその上に2人のトップのピラミッド)から3−3−4のスタンツへとつなげる連続技を成功させた。

 さらに中盤のダンス、ジャンプ、タンブリングの平場では全員の動きがピタリと揃った。
「やっていて気持ちがよかった。みんなの心が一つになっていると感じられました」(栗原茜・文学部3年)
 息のそろったキレのある演技に、歓声がさらに大きくなる。そして最後は3人のトップの“1.5回転”で締めくくった。難易度の高い技を次々と成功させた「BUFFALOS」。だが、得点を待つ選手たちからは誰ひとり納得した表情が見られない。それはそのまま結果に表れた。223.5点で4位。あと一歩のところで昨年に続いての表彰台は夢に終わった。

 ジャパンカップではBチームのリーダーとして大学部門ディビジョン2で準優勝したキャプテン杉下有香(医療技術学部3年)は、ジャパンカップでのAチームの演技をこう語る。
「とても攻めていて、かっこよかった。でも、練習でできているところを見ていただけに、一緒に悔しい思いをしたという感じです」

 3位の立命館大学とは2点、2位の梅花女子大学とは6点とその差はほとんどない。いったい何が敗因だったのか。
「やりたいことはしっかりとやれましたし、いいところは出せたと思います。でも、簡単な技のところでミスが出てしまった。順位よりも、それが心残りです」
 岩野華奈監督がそう語るように、転落シーンがいくつか見られ、「BUFFALOS」の良さであるはずの完成度が薄れてしまったのだ。
 
「普段の練習ではほとんどミスしたことのなかったところでミスが出てしまいました。でも、いつもできていたからこそ、安心して、ほんの少し気の緩みが出てしまったのかもしれません」。西村和佳(医療技術学部4年)はミスの要因をそう分析する。

 一方、1年時からAチームに入っている増谷祐弥(文学部2年)はチームの足りない部分は“気持ちの強さ”だと感じている。
「みんなで頑張っていこうという感じですごくまとまりのあるチーム。でも、本番での度胸、精神的強さが少し足りないかな」

 実はこの2人、帝京大学では初めて日本代表に選出され、11月に香港で開催される世界選手権に向けて現在は、週のほとんどを大阪で過ごしている。全国から集まった精鋭たちとともに過ごす日々は学ぶことも多く、刺激を受ける毎日だという。だからこそ、「BUFFALOS」の課題も見えてきたのだろう。
「日本代表は絶対に諦めないという粘り強さ、一人として妥協しない強さがすごい。そうしたことを帝京に持って帰りたい」
 日本代表の2人がもたらす影響はチームにとって小さくはないはずだ。

 12月には今年最後の大会が待っている。メンバーは皆、ジャパンカップでの雪辱を晴らしたいと「絶対にノーミスの演技をする」と意気込んでいる。そこには岩野監督への熱い思いがある。
「私たちに熱い気持ちを注いでくれた岩野監督への感謝の気持ちを最後のインカレでは出したい」(西村)
「本当に一番に私たちのことを考えてくれている。その気持ちに応えたい。みんなそういう気持ちでやっていると思います」(杉下)

 では岩野監督が目指す演技とは――。
「確かにスタンツで一つも落とさない、ノーミスで演じ切ることは大事です。それだけ技術的にも精神的にも強さを兼ね備えているということですから。ただ、チアは人に元気を与えるスポーツ。一番重要なのは自分たちの演技をどう見せて、何を伝えるか。その部分をこれから学生と一緒に話し合って、つくりあげていきたいと思っています」

 悔し涙からうれし涙へ――ジャパンカップを糧に、「BUFFALOS」は初の全国制覇に挑む。



(文・斎藤寿子/写真・川本聖哉)
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