ソチ冬季五輪11日目終了時点で、日本は6個(金1、銀3、銅2)のメダルを獲得している。金メダル数(5)、総メダル数(10)ともに史上最多だった「長野五輪超え」(橋本聖子団長)の目標達成は難しい状況だが、金なしの計5個のメダルに終わったバンクーバー大会の成績は上回った。
 注目したいのは、4つというメダル獲得競技数だ。フィギュアスケート(羽生結弦=金)、スノーボード(平野歩夢=銀、平岡卓=銅)、ノルディック複合(渡部暁斗=銀)、ジャンプ(葛西紀明=銀、団体=銅)。これはアルベールビル大会、長野大会と並んで史上最多タイだ。

 この多様性こそ、日本の強みではないか。というのも近年、メダルが獲れそうな競技種目に集中的に資金を投じようとする、いわゆる「選択と集中」方式を支持する声が強くなっており、しかし、それについては慎重であるべきだと私は考えている。選ばれなかった側にとっては“排除の論理”に過ぎないからだ。

 記憶に新しいところでは、民主党政権時代、ボブスレーやリュージュなどのマイナー競技が事業仕分けの対象候補となった。「普及していない競技にも補助が必要か?」というのが、その理由だった。普及していないからこそ助成による下支えが必要ではないのか。
 確かに、現時点でボブスレーやリュージュにメダルを獲るだけの実力はない。しかし、8年後、16年後はどうか。もっと長い目で見るべきだろう。

 それを確信させてくれたのが、羽生がこの国にもたらしたフィギュア男子初の金メダルである。フィギュアに日本が初めて代表を送り込んだのは1932年のレークプラシッド五輪。つまりセンターポールに日の丸を掲げるのに、82年もの歳月を要したのである。

 11日目終了時点で、アジア勢の金メダル数トップは中国だ。金3、銀2、銅1で計6個のメダルを獲得している。しかし、獲得競技はショートトラック、スピードスケート、フリースタイルの3つで、人口約13億人の大国としては、やや物足りない。

 もう一度、日本の多様性に話を戻せば、メダリストの年齢層からも、それはうかがえる。冬季五輪史上日本人最年少メダリストに、同最年長メダリスト。年齢の幅、実に26歳。プリンスもいればレジェンドもいる景色は、個人的には悪くないと思っている。

<この原稿は14年2月19日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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