6月7日に開幕した「EURO2008 オーストリア・スイス大会」は18日、1次リーグの全日程を終了し、ベスト8が出揃った。ポルトガル、トルコ、クロアチア、ドイツ、オランダ、イタリア、スペイン、ロシアと錚々たる顔ぶれだ。決勝トーナメントは19日のポルトガル対ドイツ戦を皮切りに行われ、決勝の地・ウイーンを目指す戦いはさらに激化する。
 1次リーグは予想通り過酷な戦いだった。前回大会覇者のギリシャはスペイン、ロシア、スウェーデンに敗れ、勝ち点1も取れずに大会を去った。フランスやチェコといった強豪国も姿を消した。また、共催国のオーストリア、スイスが敗退し、決勝トーナメントに開催国が進出しない初めての大会となった。
 
 準々決勝最大の注目カードは19日に行われるポルトガル対ドイツだ。この両国は、EURO2004ポルトガル大会、ワールドカップ2006ドイツ大会と、近年、ホスト国としてビッグタイトルに挑んだ経験を持つ。しかも、ポルトガルは決勝で伏兵・ギリシャに、ドイツは準決勝で王者・イタリアに敗れ、頂点まであと一歩のところで涙を飲んだ。この対決を制したほうが欧州王者に最も近づくことは間違いないだろう。

 今大会、ポルトガルは現役最高選手の呼び声高い、クリスティアーノ・ロナウドを擁して欧州初制覇を目論む。ロナウドは世界屈指のドリブル、シュート、フリーキックの技術を兼ね備え、完璧なオフェンス能力をもつ。今大会でも、2戦目のチェコ戦に1ゴール2アシストを記録するなど調子はよさそうだ。
 ポルトガルの特徴はロナウド、シマン、リカルド・カレスマら魅力的なウインガーによるサイド攻撃だ。こういった選手達に、起点となるデコから高精度のパスが供給されると相手はたちまちピンチに陥る。唯一の不安材料といえるのが、絶対的なFWの不在だが、エース・ロナウドはそれを補って余りある存在感をみせる。
 グループリーグでポルトガルは、トルコ、チェコを相手に開幕2連勝を果たし、早々に首位通過を決めた。そのため3戦目は主力を休ませる余裕をみせた。その第3戦は開催国スイスに不覚を取ったものの、ロナウドやデコといった主力を温存したことでドイツ戦に向けて万全の状態で臨めるだろう。

 一方、ドイツは4度目(西ドイツ時代含む)の欧州制覇を目指す。ドイツは今大会の予選12試合で35ゴールをあげた。これは参加国中最多ゴールだった。攻撃陣の充実度は近年最高だろう。強靭なフィジカルとキックの高い精度を誇るセンターハーフであるミヒャエル・バラックは、ドイツの“心臓”ともいえるプレーヤーだ。今大会では、グループリーグ3戦目にオーストリアを破る決勝点を上げ、母国を決勝トーナメントに導いた。バラックは所属するチェルシーが、チャンピオンズリーグの決勝(5月21日)でロナウド擁するマンチェスター・ユナイテッドに敗れた。雪辱の思いは人一倍強いはずだ。
 バラックと並んでひときわ輝きを放つのは23歳のルーカス・ポドルスキだ。今大会でも既に3ゴールをあげ、グループリーグ突破に大きく貢献した。優秀なアタッカーに加え、ドイツの特徴である、恵まれた体格を生かした高い守備陣と、そこからのカウンター。攻守に高いレベルを誇るゲルマンたちの1996年以来の欧州制覇は夢ではない。

 両者の戦いはフィジカルに勝るドイツの守備陣を、ポルトガル自慢のサイドアタックで攻略できるかがポイントになる。ロナウドの自由を奪い、いかにして封じ込められるかがドイツに課せられた最大のミッションである。一方、ドイツにとってはポルトガルの猛攻をしのいだ後のカウンターを狙いたい。また、CBのペア・メルテザッカーが196センチ、バラックも188センチと空中戦はドイツに分がある。セットプレーの攻防が鍵を握るかもしれない。

 そのほか、“死のグループ”といわれたC組を全勝で乗り切ったオランダも優勝候補の一角にあげたい。自慢の攻撃陣は3試合で9ゴールをあげ、調子を上げている。また、ドイツをおさえてB組の首位通過を決めたクロアチアも不気味な存在だ。グループリーグで披露したパスサッカーを発揮できれば、今大会の台風の目になるかもしれない。4年に1度の決戦は残り10日間。繰り広げられる熱戦に寝不足の日々が続きそうだ。
 
「EURO2008 」の今後の大会日程は以下のとおり。

【準々決勝】
19日 ポルトガル×ドイツ(スイス・バーゼル)
20日 クロアチア×トルコ(オーストリア・ウイーン)
21日 オランダ×ロシア(スイス・バーゼル)
22日 スペイン×イタリア(オーストリア・ウイーン)
【準決勝】
25日 19日の勝者×20日の勝者(スイス・バーゼル)
26日 21日の勝者×22日の勝者(オーストリア・ウイーン)
【決勝】
29日 25日の勝者×26日の勝者(オーストリア・ウイーン)

※日付はすべて現地時間