9日、キリンチャレンジカップ2008が新潟・東北電力スタジアムで行われ、日本代表はUAE(アラブ首長国連邦)に1−1で引き分けた。

 圧倒的に攻め込みながらも勝ちきれず(東北電ス)
日本代表 1−1 UAE代表
【得点】
[日] 香川真司(72分)
[U] I・アルハマディ(77分)
 9月に行われたW杯最終予選の初戦を白星で飾った日本代表は、10月15日(水)にホーム初戦となるウズベキスタン戦を控えている。直前のテストマッチの相手に選ばれたのが、日本とは別組でアジア最終予選を戦っているUAEだ。彼らは最終予選で2連敗を喫しており、15日に控える韓国とのアウェー戦は背水の陣で挑まなくてはならない。お互いのチームが、必勝を期して臨む本番前の大事なテストマッチとなった。

 日本は昨日のACL準決勝に出場したG大阪と浦和のメンバーは登録せず、代表2試合目の出場となるDF寺田周平(川崎F)、代表初招集のFW岡崎慎司(清水)という新たなメンバーが先発に名を連ねた。また、MF稲本潤一(フランクフルト)が久しぶりに代表戦のピッチに立った。

 4−3−3という布陣で試合に臨んだ日本は、MF中村俊輔(セルティック)や稲本を中心に攻撃を組み立てる。FW玉田圭司(名古屋)、大久保嘉人(神戸)が相手DFの裏に走りこみ、チャンスを作っていく。次戦のホームゲームを睨み、チーム全員が前へ出る意志を持って積極的な試合運びをみせた。

 攻撃で新しい動きを見せたのは岡崎だった。技術に秀でたタイプではなく、泥臭くボールに絡んでいく選手で、最近の日本代表にはいない闘志を前面に出すタイプだ。Jリーグでも連続試合ゴールを決めるなど波に乗ると手の付けられないほどの得点能力を発揮する。まだ周囲との呼吸は合っていないが、今後の日本に欠かせない存在になりうるだろう。

 守備面では、ピンチらしいピンチはなく安定した対応を見せた。DF中澤佑二(横浜)とコンビを組んだ寺田も無難にこなしていた。前半25分にはMF長谷部誠(ヴォルフスブルグ)の左サイドからのFKにゴール前へ飛び込んでヘディングシュートを放った。ボールは惜しくもゴール右にわずかに逸れたが、田中マルクス闘莉王(浦和)の不在を感じさせない、高さのある武器を見せてくれた。

 この日の日本で最もよかった点は前線からの守備。高い位置でボールを奪う意識があり、奪い取ってから攻撃へつなげる全体の押し上げも早かった。ウズベキスタン戦でしっかり勝ち点3を取りにいくためのシミュレーションとして、この試合を捉えていたのだろう。岡田武史監督の意図が十分に選手間で理解されていたように感じられた。

 前半を0−0で折り返し、後半も早めのチェックからチャンスを作っていく。後半9分には、相手ゴール前でボールを奪った玉田が右サイドを突破し、ゴール前にグラウンダーのクロスを上げる。岡崎がニアサイドへ走りこみDFをつる動きをみせ、ボールはゴール正面でフリーの大久保の足元へ。シュートを放つが、ボールは大きくゴールバーの上を通っていく。いい形は作るものの得点が入らない展開にスタジアム全体に苛立ちの空気が流れだしてきた。

 その雰囲気を打破し、待望の先制点が生まれたのは後半27分。右サイドから大久保がゴール前にDFラインとGKの間に絶妙なクロスを上げる。そのボールに飛び込んだのは途中出場のFW興梠慎三(鹿島)だった。ヘディングシュートはUAEゴールのバーを叩くが、こぼれ球にDF内田篤人(鹿島)が追いつき再びゴール前に折り返す。そこへ待っていたのはこちらも途中出場の香川真司(C大阪)。ほぼファーストタッチでゴールネットを揺らし、1−0と日本がリードする。23歳以下代表として、北京五輪に出場した選手たちが生み出したゴールだった。

 しかし、喜びもつかの間、その5分後に強烈なカウンターを食らい、FWI・アルマハディに強烈な同点ゴールを決められる。中東特有のタテ一本のパスからのカウンターで、相手の個人技にやられてしまった格好だ。得点直後の失点は与えたくなかった日本。バーレーン戦同様、嫌な形で失点を喫してしまった。

 その後、勝ち越し点を奪うべく攻撃を仕掛けた日本で輝きを見せたのは、先制点を奪った香川だった。後半37分には右サイドを内田が突破し、ゴール前にクロスを上げる。このボールをゴール前の香川がジャンプしながらトラップし、右足でボレーシュートを放つ。惜しくもゴール上に外れたが、流れるような攻撃でUAEゴールを脅かした。後半42分にもゴール前に上りフリーでヘディングを放つが、これはミスショットとなり得点にはならず。しかし、ゴールへの姿勢をしっかりと見せ、最終予選の勝負所で“スーパーサブ”として投入される機会があるだろう。

 日本はロスタイムまで攻める姿勢をみせたが、最後までUAEゴールをこじ開けることはできず、試合は1−1のまま終了し、勝ちにいったテストマッチを引き分けで終える結果になった。

 試合後、岡田監督は「前半は相手がゆっくりした出足だったので余裕を出しすぎた。後半は前線からいい動きができたと思う。若い選手がのびのびとやってくれた。守備に関して、サッカーだから1失点はしょうがない。それよりも点が取れなかったことが問題だ。得点が入らず勝てなかったことは悔しい」と、得点を決め切れなかった攻撃陣に注文をつけた一方、若手選手の活躍には合格点を出していた。

 バーレーン戦では3−0から2点を決められ、終始落ち着いた試合運びをしながらも、最後はバタバタの勝利。最終予選は何が起こるかわからないということを実感させられた試合だった。今日の試合も完全に支配しながら、勝ちを収められなかった。得点を決めるべきところで決めなければ結果は伴ってこない。今後は結果が求められる戦いが続く。攻撃の最後の部分で精度を高めていく必要があるだろう。

 6日後の埼玉ではウズベキスタンを相手に早い時間に先制点を挙げ、失点を喫することなく勝利を収めたい。初戦に続き勝ち点3を加算できれば、南アフリカへの道は明確に開けてくる。順調にW杯への切符を手にするためにも、15日には1回でも多く、得点を取るシーンをサポーターに見せてほしい。

<日本代表出場メンバー>

GK
楢崎正剛
DF
中澤佑二
寺田周平
→高木和道(46分)
内田篤人
長友佑都
MF
長谷部誠
稲本潤一
→中村憲剛(63分)
中村俊輔
→香川真司(70分)
FW
玉田圭司
→興梠慎三(56分)
大久保嘉人
→佐藤寿人(82分)
岡崎慎司
→巻誠一郎(82分)