22日、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)準決勝第2戦が埼玉スタジアム2002で行われた。試合は前半35分、FW高原直泰のゴールで浦和が先制する。しかし、ガンバも後半6分にDF山口智のゴールで追いつき、さらに後半28分にMF明神智和のゴールで勝ち越しに成功する。その3分後にも鮮やかなカウンターからMF遠藤保仁のゴールでダメ押し。2戦合計4−2で浦和を下し、クラブ史上初の決勝進出を決めた。
 アウェーで後半3得点の逆転勝ち(埼玉)
浦和レッズ 1−3 ガンバ大阪
【得点】
[浦和]高原直泰(35分)
[G大阪]山口智(51分)、明神智和(73分)、遠藤保仁(76分)

 万博で行われた第1戦はお互いが譲らず1−1の引き分けに終わっている。浦和が細貝萌のミドルシュートで先制したが、後半に主導権を握り、攻め続けたガンバが遠藤保仁のPKで追いついている。第1戦でアウェーゴールを奪っている浦和がスコア上では有利だが、第1戦の勢いを見る限り、ガンバにも十分チャンスがあるように感じられた。

 現在の両クラブの状況は対照的だ。浦和はACLを含めたここ5試合で2敗3分と勝ち星を挙げていない。前節のJリーグでは3カ月ぶりに埼玉スタジアムで敗戦を喫している。その試合後には田中マルクス闘莉王がサポーターとフェンス越しに口論になるなど、決していいチーム状況ではない。準決勝第1戦でGK都築龍太、MF細貝萌、相馬崇人がイエローカードをもらい、累積警告で出場停止となっているのも痛いところだ。

 一方ガンバは、ここ5試合で3勝2分と負けがない。前節もホームで逆転勝ちを収めている。今年5月に埼玉スタジアムで行われた浦和のホームゲームで、3−2と勝利しており、今日の試合でも、その再現を狙っていた。

 試合は立ち上がりから一進一退の攻防を見せる。浦和はFWの高原とエメルソンの二人に縦パスを繋げ起点を作っていく。対するガンバは遠藤、橋本を中心に中盤からパスを回しつつ攻撃を組み立てていった。

 浦和に先制の場面が訪れたのは、前半35分。PA内でパスを受けた高原が、ゴール前に上がってきた田中マルクス闘莉王へヘディングでパスを送る。これを一旦ガンバDFがクリアするが、そのボールに高原が再び反応する。右足を鋭く振りぬき強烈なグラウンダーのボールがガンバゴールに突き刺さった。2試合合計で2−1となる先制点で5万8千人が詰め掛けた埼玉スタジアムのボルテージは一気に最高潮に達した。

 この得点で俄然勢いのついたレッズは、前半終了まで猛攻を見せる。39分にはエメルソンが決定機を迎えるが、シュートは大きく枠の外へ。42分にはスローインのボールを再び高原が、左足でダイレクトにシュート。ボールはガンバゴールに襲いかかるが、惜しくもバーに弾かれ得点ならず。浦和は圧倒的に押しながらも、1得点に留まり後半に入っていく。

 後半が開始すると、1点ビハインドのガンバが仕掛ける。FWロニーに代え、MF佐々木勇人を投入した。ロニーを下げたことにより、ワントップの布陣になったガンバは中盤を厚くしてボールをキープし始める。佐々木は右サイドを幾度か突破し、チャンスを演出していった。

 そして、後半6分に待望のアウェーゴールが生まれた。右サイドで獲得したCKを遠藤がゴール前に上げる。そこへドンピシャのタイミングで飛び込んだのは山口だった。打点の高いヘディングシュートにGK山岸範宏は全く反応できず、ボールは左サイドネットに吸い込まれる。後半の早い時間に1−1に追いつき、この時点で2戦合計2−2。アウェーゴールの数も並び、次の1点がどちらに入るかが、勝敗のポイントとなった。

 後半からガンバが布陣を変えてボールを保持することに成功した一方、浦和の攻撃は試合開始時と同じようにFWに長いボールを放り込むのみだった。時折、ファールをもらいリスタートからチャンスを迎えたが、ガンバDFを完全に崩すシーンは皆無だった。

 試合を支配し始めたガンバに追加点が入ったのは後半28分。同点弾と同じく右コーナーキックからのボールが入り、ニアサイドの混戦から流れてきたボールを押し込んだのは明神だった。値千金のアウェーゴールをねじ込み、2−1と逆転に成功する。この時点で浦和が決勝に進むためにはアウェーゴールを計算すると、2点が必要になった。このゴールが決まったことで、レッズイレブンは意気消沈し足が止まったように思えた。

 ここでガンバは攻撃の手を緩めず、さらに畳み掛けてくる。勝ち越し点の3分後、後半31分にガンバは鮮やかなカウンター攻撃を繰り出す。前線に走りこんだFWルーカスがしっかりとタメを作り、浦和陣内で3対3の状況を作り出す。一旦後方にボールを戻し、前線の選手を追い越す動きでゴール前に上がっていた遠藤にラストパスが送られる。この時、浦和のDFラインは完全に崩壊しており、遠藤はフリーの状態。落ち着いて右足を振りぬき、浦和のゴールネットを揺らした。3−1となり、この瞬間にガンバの決勝進出がほぼ決定した。

 この後もガンバが決定機を作り出す一方、レッズは田中達也、永井雄一郎を投入するがゴールは奪えず、3−1で試合終了。ガンバ大阪がクラブ創設史上初の決勝進出を決めた。

 試合後、ガンバ大阪西野朗監督は「前半はスタジアムの雰囲気に呑まれたが、後半のいい時間帯に得点が入ったことでチームが落ち着きを取り戻した。1次リーグ突破を目標に挑んだ大会で決勝に進出できたことは嬉しい。ガンバはまだアウェーで一度も負けていない。今日のように敵地で素晴らしい戦いができるということはチームに力がついていること。タフに戦ってくれた選手たちを称えたい」と、ACLでいまだ無敗のチームが実力をつけていることを口にした。

 今日の試合でダメ押しのゴールを挙げた遠藤は決勝戦に臨むにあたり「1戦目がアウェーなのでしっかりと勝って、アウェーへ乗り込みたい。僕たちには失うものがないので、全力で戦っていきたい」と初のアジア王者への意気込みを見せていた。

「ここまで来たら、日本の代表としてカップを持って帰らなければならない」。西野監督は試合後の会見をこう締めくくった。昨年、浦和が初めて日本に持ち帰った優勝カップを2年連続で日本に持ちかえることができるのか。注目の決勝戦はアデレード・ユナイテッド(オーストラリア)を相手に11月5、12日に行なわれる。