2008年のJリーグも残すところ2節となった。J1の優勝争いはもちろんのこと、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)出場権をかけた上位争いやJ2への降格争いも佳境に入っている。残り2節のみどころと優勝争いの行方を展望する。
 今年のJ1優勝争いは大混戦になっている。過去にも2003年第2ステージ(横浜F・マリノスが優勝)や2005年(ガンバ大阪が優勝)のように最終節まで全く勝者がわからないシーズンがあったが、今年もそれらに匹敵する団子状態が続いている。Jリーグが1シーズン制に移行して以降、最少勝ち点での優勝は05年のG大阪(60)。今シーズンもその数字と並ぶような低い優勝ラインになりそうだ。
 J1で優勝の可能性を残しているのは、鹿島アントラーズ、名古屋グランパス、川崎フロンターレ、浦和レッズ、大分トリニータ、FC東京の6クラブ。しかし残り試合数を考えると、実質的には首位から勝ち点2差の名古屋、首位から3差の川崎Fまでの3クラブに絞られていると言ってよいだろう。

 もっとも優位な立場にあるのは、当然ながら首位の鹿島だ。33節はホームでジュビロ磐田と、最終節ではアウェーでコンサドーレ札幌との対戦が控えている。自力で優勝できる唯一のクラブだけに、2連勝すれば無条件で11度目のタイトル奪取となる。

 しかし、鹿島にとってあまり好ましくない数字がある。鹿島は前節の大分戦で勝利しているが、ここ10試合のリーグ戦で、連勝が1度しかない(27−28節)。それ以前の連勝になると7月上旬の15−16節までさかのぼる。今年の鹿島の勝ち点は57。第32節を終わった時点で、勝利数は16となっている(9敗7分)。つまり、首位の鹿島でもリーグ戦の半分は勝っていないのだ。この事実を見ても、最終節まで全て勝つことは難しいのではないか。

 さらに次戦の相手は、現在15位ながら上り調子の磐田だ。J1残留に向けて1試合も負けられない相手との戦いは非常に厳しくなることが予想される。

 勝ち点2差で追う名古屋はホームで札幌、アウェーで大分との戦いが控えている。J2降格が決まっている札幌に勝つことは優勝への絶対条件。難しいのは最終節の相手だろう。大分が逆転優勝する可能性は極めて小さいが、彼らはACL出場権が与えられる3位以内を目指している。ナビスコカップ王者だけに、容易に勝てる相手ではない。今シーズンを盛り上げたドラガン・ストイコビッチとペリクレス・シャムスカの両外国人指揮官の手腕にも注目したいカードだ。

 2位名古屋を勝ち点差1で追う川崎Fは、ヴィッセル神戸、東京ヴェルディとの試合が残っている。鹿島との勝ち点差は3だけに、全勝で乗り切らなければ優勝は見えない。最終節は残留争いを展開するヴェルディとの対戦になる。8年前まで同じ川崎を本拠地としていたクラブ同士の戦いは普段に増して激しくなるだろう。

 今週末に行われる33節で鹿島が勝利し、名古屋が敗れて川崎Fが引き分け以下だと、鹿島の連覇が決まる。しかし、そう簡単に事は進まないだろう。03年第2ステージ、05年シーズン、そして昨年と、混沌とした優勝争いで優勝したのは、シーズン終盤に追い上げてきたクラブだった。過去の歴史から見ると、今シーズン1度も首位に立っていない川崎Fが最後に笑うことがあるかもしれない。

 一方、残留争いに目を向けると、史上稀にみる大激戦の様相を呈している。コンサドーレ札幌の降格が29節には決定し、自動降格となる17位と入れ替え戦にまわる16位の座を巡る戦いは最終章へ突入した。熾烈な争いをしているのはジェフユナイテッド千葉、磐田、東京V、大宮アルディージャ、アルビレックス新潟の5クラブだ。特に下位3クラブは厳しい戦いが待っている。

 勝ち点35で17位の千葉はシーズン途中でアマル・オシム前監督から、アレックス・ミラーに監督が変わった。彼はイングランドプレミアリーグの名門リバプールでアシスタントコーチを務めていた、世界的にも評価の高い指導者だ。ミラー監督が初めて采配をふるった14節からの成績は、5連勝を含む7勝6敗6分。1年間の勝ち点35のうち、75%以上を彼の就任後に手にしたことになる。仮にJ2に降格してもミラー監督の続投は決定しており、チームが一枚岩になって戦う態勢は整っている。もともと力のあるチームだけにこのまま17位という位置に居続けるとは考えにくい。

 1つ上の16位には東京Vがいる。千葉との勝ち点差は2。残る2試合はアウェーでの横浜F戦と、ホームでの川崎F戦だ。Jリーグ創設時からのライバルと、前述の通り少なからず因縁のある相手。06年からの2シーズン、J2を経験しているだけに、選手たちもJ1残留に向け必死の戦いを続けている。

 15位の磐田はヴェルディと勝ち点が並び、得失点差で上位にいる。だがその差もわずかに2だ。33節で首位・鹿島との対戦を控えているが、最終節は磐田と勝ち点2差の大宮との対戦になる。大宮も降格の可能性が消えておらず、33節の大宮の結果次第では非常にハードな戦いになるだろう。しかし、磐田はここ6試合で3勝1敗2分とチームは上昇ムード。ハンス・オフト監督が就任してからも低迷が続いていたが、やっとエンジンが温まってきたところか。

 もちろん13、14位の大宮と新潟も安閑とはしていられない。17位千葉までの勝ち点差はわずか4。下位チームが連勝することにでもなれば、降格圏に転落する危険性は十二分にある。

 このように残り2節は、それぞれの思惑が絡み合い、非常にスリリングな戦いが繰り広げられそうだ。33節は今週末29日(土)、30日(日)に開催される。最終節は12月6日(土)14:30に9試合が一斉にキックオフのホイッスルが鳴る。毎年様々なドラマが待っているJリーグのクライマックス。はたして今年はどのような結末が待っているのか――。

<注目の対戦カード>

11月29日(土)
清水 × 千葉(日本平、13:00)
鹿島 × 磐田(カシマ、14:00)
川崎F × 神戸(等々力、14:00)
横浜FM × 東京V(日産ス、14:00)
11月30日(日)
名古屋 × 札幌(瑞穂陸、16:00)

12月6日(土)
札幌 × 鹿島(札幌ド、14:30)
千葉 × F東京(フクアリ、14:30)
東京V × 川崎F(味スタ、14:30)
磐田 × 大宮(ヤマハ、14:30)
大分 × 名古屋(九石ド、14:30)