27日、「Dynamite!!〜勇気のチカラ2008〜」(12月31日、さいたまスーパーアリーナ)の記者会見が都内で行われ、武田幸三(治政館)対川尻達也(T-BLOOD)、武蔵(正道会館)対ゲガール・ムサシ(team Mousasi/Red Devil International)の対戦カードが発表された。「K-1」対「DREAM」となるこの2試合はいずれもK-1ルールが採用される。K-1ルール初挑戦の川尻は「今は恐怖しかありません。だけど踏み出します。勇気の力で武田選手に挑戦します」と試合への意気込みを語った。
(写真:激しい“殴り合い”が期待される川尻(左)と武田)
 ムエタイ王者・武田対“クラッシャー”川尻。自らの拳に絶対の自信を持つハードパンチャー同士の激突が決定した。
 武田は外国人選手として史上4人目のムエタイ王座を獲得したキックボクサー。一撃必殺の右ストレートがフィニッシュブローだ。近年はK-1のリングから遠ざかっていたが、久々の大舞台を前に期するところがあるだろう。「命を張って闘います」の言葉にも、この試合にかける決意のほどが窺える。
 
 対する川尻は、04年に修斗ウェルター級王座を獲得。日本人離れしたフィジカルから繰り出されるパウンドで勝利を重ねてきた。DREAMではライト級トーナメント準決勝でエディ・アルバレス(エリートXC/ファイト・ファクトリー)に敗れはしたが、負傷欠場に追い込み、破壊力の高さを証明した。川尻は武田戦受託の理由を、「青木(真也)君が体重差のある、リスクがある相手との試合を望んでいるのであれば、自分もリスクのあるK-1ルールという土俵で戦いたいと思った」と興奮気味に語った。DREAMを背負うファイターとしての誇りが川尻を無謀な挑戦へと駆り立てたのだ。総合仕込みの打撃の圧力が、キックで一時代を築いた武田をどこまで追い詰められるかが勝敗のカギを握る。

 川尻が口にした“青木のリスクのある相手”とは、秋山成勲(フリー)のことである。青木はこれまで何度も対戦要求をしてきたが、秋山は“無関心”を示した。しかし、秋山が熱望した吉田秀彦(吉田道場)戦が、吉田の戦極ニューイヤーイベント出場決定によって事実上消滅したことで、「青木×秋山」戦実現の気運が高まったとの見方もできる。秋山の大晦日参戦について、谷川貞治K-1イベントプロデューサーは、「複数の選手を対戦相手候補として提示したので、秋山選手が選ぶのを待っているところ」と説明した。秋山は06年は桜庭和志(LAUGHTER7)戦、07年は三崎和雄(GRABAKA)戦と連続して大騒動を巻き起こした張本人。良くも悪くも“大晦日の顔”である男の決断に注目が集まる。

 もうひとつの対戦決定カードは武蔵対ゲガール・ムサシだ。ゲガール・ムサシが総合のリングで活躍し、脚光を浴びるにつれて、関係者の間で噂されていた“ムサシ対決”が実現することになった。
 武蔵は空手仕込みの打撃と老獪なテクニックで、長年K-1の日本人最強の座に君臨してきた。WORLD GPでも03、04、06年に準優勝を果たし、頂点まであと一歩と迫った。5度目となる大晦日決戦に向けて、「相手のことはよく知らないが、二人も“ムサシ”はいらないのでやっつけたい」と早くも勝利宣言。武蔵は自らよりも体重が15キロ以上も軽い総合格闘家の挑戦を退けられるか。
(写真:“ムサシ対決”に臨むことになった武蔵)

 対するゲガール・ムサシは今最も勢いのあるファイターといえる。デニス・カーン(アメリカン・トップチーム)、メルヴィン・マヌーフ(ショー・タイム)といった猛者を連破して、DREAMミドル級GPの初代王者に輝いたのも記憶に新しい。武蔵と比べると経験の差は否めないが、23歳の昇り竜の爆発力は侮れない。
 ゲガール・ムサシは武蔵戦に向けて次のようなコメントを寄せた。「DREAMミドル級チャンピオンとして大晦日のイベントに出られることを非常に楽しみにしている。そして今回、対戦相手は自分と同じ名前を持つ『武蔵』選手。日本で『ムサシ』といえば、K-1の武蔵選手のほうが有名みたいだが、それも今年の大晦日までだろう。ファイターとして武蔵選手をリスペクトしているが、格闘技界に同じムサシは二人も必要ない。もし私に負けたら、本名のミスター・モリか、コジローと改名してほしい。自分自身にとっては、K-1ルールで、しかも階級の違う武蔵選手への挑戦は、まさしく『勇気のチカラ』が試される闘いになると思う。自分の持てる力を全て出し、DREAMミドル級チャンピオンとして恥ずかしくない試合を見せることを約束する」

 またこの日、Dynamite!!に関するTBSの番組製作発表も併せて行われ、メインキャスターに佐藤隆太、井上和香、キャスターに田丸麻紀、解説に高阪剛(アライアンススクエア代表)、須藤元気(拓殖大学レスリング部監督)が抜擢されることも発表された。記者から「大晦日に見たいカード」を訊かれると、高阪は「青木真也対ホイス・グレイシー」、須藤は「清原和博対長渕剛」と答え、会場を沸かせる一幕もあった。
(写真:中継を盛り上げる出演者。(左から)高阪、井上、佐藤、田丸、須藤)

 今年の大晦日は18時からボクシングWBA世界フライ級王者坂田健史(協栄)がデンカオセーン・シンワンチャー(タイ)を迎えるV5戦、19時からDynamite!!と2部構成で中継される。また、K-1とDREAMの大連立によって、この日発表された2カードのように“異種格闘技戦”のマッチメークも可能となった。秋山や青木をはじめとした多くの注目選手の参戦も今後続々と発表される予定。7年目を迎える大晦日の格闘技の祭典のゴングまであと1カ月余りを残すのみだ。

Dynamite!!〜勇気のチカラ2008〜
2008年12月31日、さいたまスーパーアリーナ
開場14:00 開始:15:00

【対戦決定カード】
〔K-1ルール〕
武田幸三(治政館)×川尻達也(T-BLOOD)
武蔵(正道会館)×ゲガール・ムサシ(team Mousasi/Red Devil International)

【既報対戦カード】
桜庭和志(LAUGHTER7)×田村潔司(U-FILE CAMP)
〔ライト級ワンマッチ〕
ヨアキム・ハンセン(フロントライン・アカデミー)×J.Z.カルバン(アメリカン・トップチーム)
〔K-1甲子園準決勝〕
日下部竜也(中部大会優勝/愛知県立豊田高校)×卜部功也(関東地区優勝/千葉県立岬高校)
HIROYA(主催者推薦/セントジョーンズインターナショナルハイスクール)×嶋田翔太(主催者推薦/私立西武台高校)