11日、日本代表は横浜国際競技場で2010年南アフリカW杯に向けた大一番、オーストラリア戦に臨む。アジアだけでなく、ワールドカップの舞台で世界の強豪を相手に戦うことを考えると、この1戦を落とすことは許されない。昨年の1月に代表監督に就任した岡田武史監督の成果が表れる試合になりそうだ。
(写真:笑顔で代表会見発表に臨んだ岡田監督)
 W杯最終予選での日本の成績は2勝1分けの2位。3連勝でトップに立つオーストラリアとの勝ち点差は2だ。3位以下はカタール、バーレーン、ウズベキスタンと続く。昨年11月に行われたカタールとのアウェー戦を3−0で圧勝、グループ2位までW杯出場権を無条件で獲得できるだけに、南アフリカへの視界は良好だ。

 しかし、日本代表がW杯に出場することが目的だったのは過去の話と言っていいだろう。アジア最終予選の厳しさを理解した上で、日本は本大会で上位争いのできるチームを作っていかなければならない。オーストラリアは日本にとってアジアで数少ない同等、もしくは格上の相手となる。オーストラリアは本来ならばオセアニア連盟に入るべき国だ。しかし同国は代表強化策としてアジアでのライバル国との戦いを望み、06年1月からアジア連盟へ転籍した。これは日本にとっても好都合だ。数少ない真剣勝負の場を自分たちも活かさない手はない。

 先日のフィンランド戦を5−1で快勝した岡田ジャパンだが、相手は若手中心のメンバーで本気度が低かった。監督、選手はこの結果を受けてオーストラリア戦を楽観視はしていないだろう。日本も、フィンランド戦では海外リーグに所属する主力選手を招集せず、国内の選手を中心に試合に臨んだ。本番前の一戦だったが、明日の先発メンバーとは大きく異なる名前が並ぶことになる。

 日本の生命線となる中盤には中村俊輔(セルティック)、遠藤保仁(G大阪)といったお馴染みの選手が入る。岡田監督の標榜する「パス&ムーブ」「ハードワークするサッカー」を実現するためには、豊富な運動量で相手を圧倒しなければならない。ホームゲームということで、序盤から積極的な動きを見せることが予想される。中盤の底に入る長谷部誠(ヴォルフスブルグ)やサイドバックの内田篤人(鹿島)や長友佑都(FC東京)には90分間、相当な運動量が要求されるだろう。

 日本にとって不安な点は、国内の選手はシーズンオフであるということ。もちろん国際親善試合で90分間戦ってはいるが、W杯最終予選という真剣勝負となると疲労度はかなりちがってくるはずだ。一方のオーストラリアは大半の選手が欧州リーグで活躍する選手たち。もちろんシーズン真っ最中である。後半30分過ぎに運動量が落ち、集中が途切れたところで失点するというシーンがないように注意していかなければならない。

 オーストラリア最大の武器は高さだ。FWジョシュア・ケネディ(カールスルーエ)は194cmの長身。他にも180cm台の選手が多数来日しており、フィジカル面では相手に分があると言えるだろう。対する日本のDF陣では経験豊富な中澤佑二(横浜FM)、田中マルクス闘莉王(浦和)は身長差のあるFWを相手にしても十分に勝負できる。しかし、彼らがゴール前から引っ張り出され、サイドバックの内田、長友らが中央に絞ったところでの空中戦には細心の注意が必要となる。

 先日行われたアジア杯予選で日本がバーレーンから失点を喫したシーンはまさにそんな場面だった。FKからのボールに対し、長身選手と競り合ったのは内田だった。完全に競り負けてしまい、ヘディングで先制点を奪われた。あのシーンを繰り返さないためにも中澤、闘莉王がゴール前から外れた時には、サイドのみならず中盤からもサポートできる態勢を作ることが必要だ。中盤からの長谷部らのカバーリングにも期待したい。

 直接的に高さを封じるだけでなく、精度の高いクロスボールを上げさせないこともポイントになる。つまり事前にサイド攻撃を抑えることが肝心だ。特に左サイドMFマーク・ブレシアーノ(パレルモ)は力強いドリブルと鋭い飛び出しを持っている。彼と対峙することになる内田には攻撃の組み立てよりもブレシアーノに仕事をさせないことを念頭においてもらいたい。高さで劣るのであれば、事前に相手の得意なパターンに持ち込ませないことが重要である。

 先述したように、日本にとってアジアで数少ない同レベルの実力を持った相手だ。2010年7月に行われる本大会までの試金石になる試合となる。自分たちの長所を活かしつつ、相手の得意な形に持ち込ませない。オーストラリアを相手にそのような戦いができれば、本大会でも決勝トーナメント進出、さらに上の結果を残していくことができるだろう。アジアでの枠を超えた、世界を見据える戦いを岡田ジャパンには披露してもらいたい。

(大山暁生)