28日、日本代表は埼玉スタジアム2002でアジア最終予選第5戦バーレーン戦に臨む。バーレーンは08年1月に岡田武史監督が就任して以降、5度目の対戦となる因縁浅からぬ相手だ。ここまでの戦績は2勝2敗と互角、今年1月のアジア杯予選では0−1と敗れている。これまでホーム戦で勝ちのない岡田JAPANは是が非でも勝たなければいけない一戦で、どのような戦いを挑むのか。
(写真:代表発表会見で笑顔の岡田武史監督)
 アジア最終予選A組は、前節で日本と引き分けたオーストラリアが勝ち点10で首位に立つ。日本は勝ち点8で2位につけ、バーレーンが勝ち点4、以下はカタール、ウズベキスタンと続く。日本が本大会で決勝トーナメントに進出することを目標にするならば、A組1位を取ることは最低限のノルマだろう。最終予選は残り3試合、首位のオーストラリアに離されないためにも、バーレーン戦は勝ちが必須だ。

 しかし、今回の最終予選で岡田JAPANは、ホームで2引き分けと勝ち星を挙げていない。敗因ははっきりしている。ゴール前に引いた相手を崩すことができていない、この1点だ。

 記憶に新しいオーストラリア戦は、相手が実力のあるチームだけに、ドローも仕方のないところかもしれない。しかし、昨年11月のウズベキスタン戦は勝たなければいけない試合だった。先制点を奪われ前半のうちに玉田圭司(名古屋)のゴールで追いついたものの、後半だけで9本のシュートを放ちながらドローに終わっている。

 現在、ウズベキスタンは日本と引き分けた以外は3戦全敗。この程度の実力の相手にも、守りを固められると勝ちきれないようでは、本大会に駒を進めたとしても過去のW杯の成績を上回ることはできない。今回のバーレーンも引いた布陣で徹底してゴール前を固める可能性は非常に高い。今までのホーム戦とは一線を画す、得点を挙げる日本代表がみたいところだ。

 過去のバーレーン戦を振り返ると、2勝2敗で2つの勝利は昨年6月W杯3次予選(ホーム、1−0)と9月W杯最終予選(アウェー、3−2)、そして2つの敗戦は昨年3月W杯3次予選(アウェー、0−1)と09年1月アジア杯予選。4戦全てが1点差の接戦だ。

 ここで注目したのは3次予選のホーム戦。28日と同じく埼玉スタジアムで行われた試合は後半ロスタイムにDF内田篤人(鹿島)のクロスが直接ゴールに吸い込まれ決勝点となった。決勝点を奪うまでに日本が放ったシュートは12本。主導権を握り続けたものの、ゴールを奪うことはできなかった。この試合のバーレーンは、最終予選進出をすでに決めていたため、若手主体のチーム編成だった。当然ながら、28日の試合では3次予選よりもメンバーが強化される。その上で、ミラン・マチャラ監督は、得点を奪われるまでの90分間の再現を試みるだろう。

 先日発表された代表メンバーにFW矢野貴章(新潟)の名前があった。矢野について岡田監督は「引いた相手に対して、ゴール前に飛び込んでいくことができる、点を獲るために必要な選手」と表現した。

 玉田、田中達也(浦和)、大久保嘉人(ヴォルフスブルク)をFWとして重用している岡田監督だが、今回のバーレーン戦は「リスクを負ってでも点を獲りにいく」試合としている。大型FWである矢野を投入して、これまでボールの収まりが悪かった前線に起点を作りたい。

 3月24日から合宿に入っている代表チームは、これまでの布陣である玉田、田中達のツートップだけでなく、二人に加え前線に大久保(もしくは松井大輔(サンテティエンヌ))を投入し、3トップ気味のシステムをテストしている。しかし、スピード型である3人を並べても、ゴール前で相手に与える脅威は少ないだろう。3トップでいくならば、矢野を中央に配置し、玉田、田中達のスピード型FWで絡めていくのがベストだ。もちろん、岡田JAPANの基本形である4−2−3−1のワントップでの起用もいい。クラブもJリーグで好スタートを切っているだけに、矢野にはその勢いを代表チームに持ち込んでもらいたい。

 A組1位で最終予選を終えるためには、首位オーストラリアとの勝ち点差2はキープしたい。6月17日に行われる直接対決(アウェー)で逆転するには、28日のゲームは勝ちが必須だ。仮に負けるようなことがあれば、岡田監督の進退問題になる。オーストラリア戦では、満員のサポーターを沸かせることができなかった岡田JAPAN。28日も、6万人近くのサポーターが埼玉スタジアムに詰めかける。彼らを熱狂させ、勝ち点3を奪わなければならない。バーレーン戦は勝利と内容の両方を問われる1戦となる。

(大山暁生)