昨季、3年ぶりのリーグ優勝まであと一歩と迫りながら、巨人に13ゲーム差を引っくり返された阪神。その屈辱を晴らそうと、今季にかける思いは強いはずだ。そんな中、岡田彰布前監督に代わり、新指揮官に就任したのが真弓明信監督。果たして真弓監督が考える期待の星とは? そして優勝するためのシーズンプランとは? 開幕を直前に控えた真弓監督を二宮清純が直撃した。
二宮: キャンプでの手ごたえはいかがでしたか?
真弓: 投手に故障者が出てしまいましたが、野手の方は順調ですね。

二宮: 新戦力については?
真弓: 上本博紀(早大)に期待しています。走塁もできるし、バッティングも守備もいい。実戦向きかなと思いますね。

二宮: 監督は特に守備を重視されています。現役時代は名手として鳴らした監督から見て、上本選手のグラブさばきはどうですか?
真弓: グラブさばきがいいとグローブに自然とボールが吸い込まれているような感じに見えてくるものなんです。

二宮: 違和感なくスムーズにボールが入ってくると。
真弓: はい。動きが柔らかいんですね。上本はそういう動きができていますので、慣れれば守備も問題なくこなせると思いますよ。

二宮: 今シーズン、2年目の白仁田寛和への期待の声も大きいようですが。
真弓: そうですね。白仁田はすごくいい素質を持っています。ただ、シーズンを通して使うには、まだ体力的に無理かもしれませんね。チームがいい状態の時に使っていけば、伸びていってくれると思います。

二宮: ところで真弓さんが理想とする野球とはどんなものですか?
真弓: 実はあまり理想って考えたことないです。ただ守りについては1点でも少なく、できれば0点に抑えるという考え方が一番勝ちに近いんじゃないかなと思っています。そして攻撃ではヒットが出なくても1点を取れると。そうすれば、勝率も高くなるでしょうからね。そういうチームが理想かな。

二宮: 昨季は、どこのチームにもビジターの試合でかなりやられたような印象があります。
真弓: ビジターに弱いのは、甲子園が特別な球場だというのもあると思います。逆にドームが本拠地のチームが、天然芝で内野が土のグラウンドである甲子園を不得意にしているんじゃないかなと。

二宮: 交流戦でもホームは10勝2敗なのに、ビジターになると5勝7敗と負け越してているんですよね。
真弓: パ・リーグはほとんどのチームがドーム球場ですからね。ドーム球場ってボールが見やすいんですよ。ナイターの試合でも、デイゲームと同じようにボールがしっかりと見えますからね。そういったドームと甲子園との違いが星に表れているんだと思います。それと東京ドームでの試合は、いつもホームラン競争みたいになってしまう。今シーズンは、それにも対応する必要がありますね。

二宮: そうなってくると、いくらつなぐ野球が大事とはいっても、阪神の場合はホームランがあまりにも少ない。やっぱり大砲が必要ですよね。
真弓: そうですね。今シーズンはホームランを増やそうと選手たちにも言っています。昨季まで3番だった新井貴浩を5番にしたのも、もっと振り回してもらいたいなという意図からなんです。

二宮: 少々、三振しても目をつぶると。
真弓: えぇ。

二宮: 不安材料はキャッチャー矢野輝弘の年齢。そろそろ世代交代の時期でもあると思うのですが……。
真弓: そうですね。結局、どんなにいいキャッチャーがいても試合に出ていなければ育ってこないんです。だから、今から人選して試合をこなしながら少しずつ伸びてくれればと思ってはいるんですけどね。ただはじめからどう育てても2割5分しか打てませんよとか、守りがここまでしかいきませんよっていうキャッチャーを育てていくわけにはいきませんからね。可能性がどれくらいあるのかを見極めて、その選手に数多くチャンスが来るようにしたいと考えています。

二宮: 使わないと育たないというのはその通りですよね。しかしシーズンが始まると、勝利が第一ですから、なかなか若手を起用し続けるというのは難しい面もある。
真弓: 試合を捨てるわけではありませんが、ある程度はそのキャッチャーにかけるということはしていかなくちゃいけないでしょうね。だから若いキャッチャーが先発マスクを被っていたのに、試合がもつれてきたからといって途中で矢野を出すということはしないようにするつもりです。矢野が先発で出ていて、点差が開いて楽になったから若いキャッチャーに代えるということはあるとは思いますけどね。

二宮: メジャーリーグでは主戦キャッチャーは数試合に1回、休養させるところが多い。矢野もそういうふうにしたいと。
真弓: ベストコンディションで試合に臨んでもらおうと思ったら、年齢的なことを考えると休ませながらというふうになってくると思います。そう考えると、今年は2番手のキャッチャーにチャンスがすごく多く与えられるでしょうね。

二宮: 最後になりますが、“真弓野球”とはどんなものでしょう?
真弓: あまり変わったことはしないでしょうね。それこそ100人が100人、「ここはバントだな」と思うところで、バントのサインを出せる。それが私の野球です。

二宮: メジャーでは最初は(勝率)5割くらいでいいから、最後に勝負かけようという考えが主流ですが、逆に日本の場合は開幕ダッシュを大事にする監督もいます。真弓監督はどうお考えですか?
真弓: 先発ピッチャーを我慢して使っていこうとすると、どうしても何試合か落とすゲームが出てくると思うんです。でも、その我慢を後半にいかしたいなと思っています。開幕ダッシュできるかどうかはちょっと不安ですが、最後はなんとか(優勝で)締めたいなと思っています。

<小学館『ビッグコミックスピリッツ』4月13日号(3月30日発売)では真弓監督へのインタビューが掲載されています。そちらもぜひご覧ください!>