bjリーグでは16、17日に有明コロシアムで地区チャンピオン、そしてリーグチャンピオンを決定するファイナルが開催される。カンファレンス セミファイナルを勝ち抜き、「ファイナル4」に進出したのは設立1年目ながら見事ファイナルへの切符をつかみとった浜松・東三河フェニックス、昨シーズンの最下位から大きく躍進し、初のプレイオフ進出を果たした琉球ゴールデンキングス、昨年の雪辱を狙う東京アパッチ、そして4連覇を狙う大阪エヴェッサの4チームだ。果たして、勝利の女神はどのチームに微笑むのか。決戦を直前に控えた4チームの代表に意気込みを訊いた。

【イースタン・カンファレンス】
「影の立役者・スタンリー」(浜松・東三河フェニックス/中村和雄HC)
 新潟アルビレックスBBとのセミファイナルは、初めてのプレイオフということもあり、やはりプレッシャーが大きかったですね。しかもレギュラーシーズンで共に2メートル以上の長身選手、PF/Cドクン・アキングベードとC/Fポール・ビュートラックが2人そろった新潟とは対戦したことがなかったためにイメージがわかず、第1戦は非常に苦戦しました。そのため、延長戦の末に1点差で落としてしまいました。

 しかもGマイケル・ガーデナーが始まって5分も経つと、異常なまでの疲労を見せたのですから、焦りましたね。それでも45分間出場してチーム最多の29得点をマークしてくれたのですが、呼吸困難のようにさえなっていたので、もしや体調に異変をきたしているのではないかと思ったほどです。結局、体調面は心配ないということでした。本人は絶対に首を縦に振らないと思いますが、おそらく極度の緊張からそういう状態になったのでしょう。

 私はその日、ガーデナーと同じくキーパーソンであるGFマーカス・モリソン、FCスタンリーオシティの部屋を訪れ、それぞれに期待している役割について話をしました。特にガーデナーには「全部、オマエに任せているからな」と告げ、モチベーションを上げるように努めました。実は私自身もプレッシャーを感じていたんです。チーム設立前の昨シーズン、有明コロシアムで行なわれたプレイオフを観戦しながら、「来年はここに立ちたい。浜松の選手たちをこの場で戦わせてあげたい」と思っていたわけですが、やはり初めてのプレイオフは緊張しましたね。

 しかし、第2戦は第1戦での反省を踏まえ、戦略を立て直したおかげで、快勝。最終戦もモノにし、無事、カンファレンス ファイナルに進出することができました。ホーム開催ということもあって、ブースターの皆さんの声援が後押しなったことは言うまでもありません。最終戦の後にはスタッフやボランティアの皆さんとともに感謝祭を行ないましたが、そこでの盛り上がりも最高でした。

 さて、カンファレンス ファイナルの相手は東京アパッチです。東京との対戦を望んでいた私としては嬉しさでいっぱいです。というのも、カンファレンス ファイナルは東京のホーム有明で行なわれます。東京戦となれば、会場には多くのお客さんが詰め掛けることでしょう。アウェイというハンデはありますが、どうせやるなら観客は多い方がいいですからね。今からとても楽しみです。

 東京はアグレッシブな選手が集まったチームで、異常なまでに勝利への執念を燃やしてきます。外国人も日本人も皆、個性が強く、それでいてチームとしてちゃんとまとまっているのです。今はケガ人もいませんので、万全な状態でプレイオフにも臨むことができているのも強みですね。また、ジョー・ブライアントHCは意表のついた作戦で相手を惑わすのが巧い。例えばメンバーチェンジですが、こちらが全く予想のつかないタイミングで行なったり、戦法をしいてくるのです。日本人にはない思い切りのよさがあり、外国人HCならではの作戦は見ていておもしろいですね。

 その東京との試合でポイントとなるのはガーデーナーとスタンリーの息がどれだけ合うかということにかかってくると思います。実はマイケルの活躍は、スタンリーあってのもの。彼が細かく目配りをし、マイケルが今、自分にどうしてもらいたいのか、パスを出したいのか、チェックにいってもらいたいのか、スペースを空けてほしいのか、を瞬時に判断してくれているのです。また、チームがまとまっているのも、スタンリーの存在が非常に大きい。彼はいつも冷静で、練習の取り組み方一つにしても全くムダがありません。メンタル面も強く、今も本当はケガしている両足が痛いはずなのに、絶対に自分から弱音を吐きません。こうした真摯な姿勢が他の選手にもいい影響を与えてくれています。

 東京戦でもスタンリーがガーデナーあるいはモリソンの良さを引き出してくれれば、浜松らしいバスケットを展開できると思います。あとはハートの勝負。1年前から目指してきた有明で、しかもホームの東京相手にぜひ勝利をつかんで、西地区王者とのファイナルに進出したいと思います!


「昨季の屈辱が優勝への起爆剤に」(東京アパッチ/青木康平選手)
 セミファイナルの仙台89ERS戦では、何よりもまずディフェンスを選手全員で頑張ることでした。オフェンスはディフェンスさえしっかりできれば、後から自然とついてくるもの。第1戦がまさにそうでした。前半、僕たちはなかなか得点することできませんでしたが、ディフェンスを頑張ったおかげで引き離されることなく、ほぼ同点で折り返しました。これが後半に生き、この試合に勝つことができたのです。第2戦は1Qこそ東京が主導権を握ったものの、2Q以降は1点を争う大接戦となりました。僕はこの試合、大事な場面でフリースローを3本中2本落としてしまいました。あのまま負けてしまっていたら、本当に大きなショックを受けていたことでしょう。

 しかし、チームは1点差で勝つことができました。これはホームで戦えたことが何よりも大きかったと思います。もし、アウェイでの試合だったら、負けていてもおかしくはありませんでした。どのスポーツもそうですが、特にバスケットボールはメンタル的要素が大きいスポーツです。選手たちは応援の力で後押しされ、自然と体も動いてくる。特に今回のようなプレイオフ、しかもあれだけのクロスゲームとなれば、フリースローやレイアップシュートなど、派手さのないプレーにも会場が沸きます。相手としてはこれ以上やりにくいことはありません。自分たちにとって最高のシチュエーションでプレーできたことに感謝したいですね。

 さて、カンファレンス ファイナルでは浜松・東三河フェニックスと対戦します。浜松はGマイケル・ガーデナー、GFマーカス・モリソンが得点源。なかでもガーデナーはゲームを支配する能力があり、調子に乗せてしまうと、もう誰にも止めることができません。その浜松とはレギュラーシーズンでは2勝6敗という戦績ですが、チームが仕上がった状態での最終戦では1勝1敗にもっていくことができました。これが大きな自信となっており、相性が悪いというイメージは全くありません。浜松戦での最重要課題はガーデナーをどう抑えるかということ。1人で20点近く得点することも覚悟しなければなりませんが、それでも自由自在にプレーさせず、タフなショットを打たせることでリズムを崩していきたいですね。

 今回は僕たちにとって初のチャンピオンとなる最大のチャンスだと思っています。というのも、チャンピオンになるための全ての条件がそろっているからです。まず、不可欠なのが勝利への執念を持ち続け、いかにチームとしてまとまることができるかということです。東京は昨シーズン、ファイナルで大阪エヴェッサに破れ、涙を飲みました。その悔しい経験をしたメンバーがほとんど今シーズンは残っています。ですから、今季こそ優勝したいという気持ちはどのチームよりも強いはずですし、そのことがチームに結束力を生み出してくれています。また、ケガ人もおらず、チームの力を存分に発揮することができる最高の状態にあります。加えてファイナルでもホームの有明コロシアムで戦うことができるのですから、これ以上の条件はありません。あと2試合、ブースターの皆さんと共に戦い、有終の美を飾りたいと思いますので、熱い応援よろしくお願いします!


【ウエスタン・カンファレンス】
「リンに勝ち、大阪に勝つ!」(琉球ゴールデンキングス/桶谷大HC)
 ライジング福岡とのセミファイナルでは、結果だけを見れば順調に勝ち進んだ感がありますが、やはりウエスタン・カンファレンス1位であること、そしてホーム開催ということで選手たちは一様にプレッシャーを感じていたようです。そのため、2戦とも前半は気負いすぎてしまってアウトシュートが入らず、なかなか自分たちの流れにもっていくことができませんでした。福岡は前半、いつものプレスディフェンスではなく、ゾーンをしいてきました。しかし、高さはそれほどありませんから、逆にこちらがインサイドの攻撃をあつくし、相手をファウルトラブルに追い込めば、簡単に崩すことができました。

 さらにアウトからのG金城茂之のシュートが当たり始めた後半には、福岡はオールコートでのプレスディフェンスにかえてきました。しかし、私たちにとってはその方がかえって攻撃しやすかったのです。G澤岻直人、Fアンソニー・マクヘンリーのほか、ベンチメンバーであるG菅原洋介もハンドリングに長け、縦の突破力がありますのでアップテンポな展開となり、アウトナンバーをつくることができるからです。つまり、ゾーンでもプレスでも、どちらも対応することができる戦術の幅の広さが、2連勝を飾れた勝因だったのではないかと思います。

 さて、カンファレンス ファイナルでは大阪エヴェッサと対戦します。レギュラーシーズンでは6勝2敗と大きく勝ち越していますが、3年間プレイオフでは1度も負けていない大阪だけに、ここ一番での勝負強さは随一でしょう。その大阪戦で一番警戒しなければならないのは、やはりチームの大黒柱であるFリン・ワシントンです。彼に気持ちよくプレーさせては絶対にいけません。

 そのためには彼と他の選手とのラインを断絶し、周りからのフォローをさせないようにすることが重要です。うちには1対1に強い選手が豊富に揃っていますので、ファウルにさえ注意すれば、彼が1人で攻める分にはそう怖くはありません。ドライブをしかけてきても、それに対応するだけの高さも当たり負けしないだけのフィジカルの強さもあります。もちろん、他の選手への対応も怠ることはできませんが、何よりもまずリン・ワシントンを止めること。これが大阪戦を勝ち抜くポイントとなってくると思います。

 一発勝負の試合では、ターンオーバーで相手にリズムを与えないこと。そしてクロスゲームとなればなるほど、フリースローの成功率が勝敗を分けるカギとなります。そして、リーグのトップチームが集うプレイオフでは、心技体全てが揃っていなければ勝ち抜くことはできません。そのためにも本番までにしっかりと準備をして万全な態勢で臨みたいと思います。


「考えるより行動あるのみ!」(大阪エヴェッサ/天日謙作HC)
 先日のセミファイナルではファイナル進出に王手をかけて臨んだ第2戦を落としてしまいましたが、最終戦を勝ち抜き、カンファレンス ファイナル進出を決めることができました。第2戦の敗因は高松の攻撃陣へのプレッシャーが不足していたことが挙げられます。高松戦のポイントの一つは、SG岡田優やPG中川和之といったアウトシューターに気持ちよく3Pを打たさないことだったのですが、2戦目はそれがうまくいきませんでした。

 しかし、最終戦では再度そのことを確認し、執拗にプレッシャーをかけることで高松の3Pは岡田選手の1本に抑えることができました。そしてオフェンスではFリン・ワシントンが31点中、約半分の16得点を叩き出す活躍を見せ、無事に次のステージへと進むことができたのです。

 このセミファイナルで改めて感じたことは、リン、Fライアン・ブラックウェル、Gナイル・マーリーの“BIG3”のメンタル面の強さです。第2戦を24点差で落とした後のロッカールームは、意外にも暗い雰囲気は全くありませんでした。というのも、彼らは最終戦にもつれこんだことをネガティブには考えておらず、「今からが面白いんだ!」というふうに捉えていたからです。私も全く同じ気持ちでした。ですから、チーム全体が「よっしゃ、いくぞ!」という意気込みをもって最終戦に臨むことができたのです。

 さて、カンファレンス ファイナルでは琉球ゴールデンキングス(沖縄)との対戦です。沖縄はCジェフ・ニュートン、Cクリス・エアー、Fアンソニー・マクヘンリーと2メートル以上の長身選手がインサイドを固め、ディフェンスリバウンドではリーグ最多を誇るチームです。得点力は、レギュラーシーズンの終盤から少し落ちてきているものの、G金城茂之には警戒が必要ですね。彼は素早くコートを走り抜け、レイアップシュートを打ったり、アウトシュートも得意としています。大阪としては彼に速攻や3Pを決められると厄介ですので、沖縄を勢いづかせないためにも、金城の得点をできる限り抑えることが一番のポイントとなるでしょう。

 また、オフェンス面ではスピードが大事になってきます。大阪が勢いに乗っている時というのは相手がどのチームであろうと、フロントコートに素早くボールが入り、スピーディな展開へともっていくことができているのです。それができたのがセミファイナル第1戦、そして最終戦でした。ファイナルでも流れのある攻撃で、こちらのペースにもっていきたいと思っています。

 今回でプレイオフは4度目となるわけですが、選手にとって短期決戦で最も大事なことはとにかくハードワークに徹すること。ここまで来たら、いろいろと考え込んでも仕方がありません。考えれば考えるほど、体は動かなくなるものです。それよりも最後までアクティブにプレーすること。これこそが短期決戦を勝ち抜く重要な要素となるはずです。4連覇を目指し、まずは目の前に迫った沖縄とのカンファレンス ファイナルに全力を出し切りたいと思います。


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