6日、南アフリカW杯アジア最終予選第6戦がタシケントで行われ、日本代表はウズベキスタン代表と対戦した。日本は岡崎慎司(清水)、大久保嘉人(ヴォルフスブルグ)の2トップで試合に臨み、前半9分、岡崎が左足で放ったシュートをGKにセーブされながらも、こぼれ球をしぶとく頭で押し込み先制点を挙げる。その後は大歓声を背に攻めるウズベキスタンにペースを握られたが、体を張ってのディフェンスで前半を1点リードで折り返す。後半になっても流れは変わらずウズベキスタンに攻め込まれるが、必死の守りでゴールは許さない。残り2分に長谷部誠(ヴォルフスブルグ)が一発退場、岡田武史監督がベンチから退席を命ぜられるアクシデントもあったが、ロスタイム4分間を経過しても得点を与えず、1対0のまま試合終了。アジア最終予選A組2位以上が確定し、98年フランスから4大会連続4度目のW杯出場を決めた。

 岡崎が殊勲の決勝弾 (タシケント)
日本代表 1−0 ウズベキスタン代表
【得点】
[日] 岡崎慎司(9分)
 ウズベキスタンとのアウェー戦で勝利すれば、世界最速での南アフリカW杯を確定させる岡田JAPAN。岡田監督が「ウズベキスタンはここまで勝ち点4だが、過小評価してはいけない」と試合前に語ったとおり、最終予選で最もタフな戦いとなった。

 試合開始直後から、もうあとがないウズベキスタンが出足鋭く攻めの形を作り、日本はなかなかボールを前線に収めることができなかった。それでも岡崎、大久保が流動的にポジションを変化させながら、ターゲットとなりチャンスメイクを心がける動きをみせていた。

 日本に初めてのチャンスが訪れたのは前半9分。カウンターからゴール正面でパスを受けた中村憲剛(川崎F)がタメを作りながら前へ向き、右サイドへ浮き球のパスを出す。そこへDFラインの裏を狙って飛び出してきたのは岡崎。相手DFを背負いながらもうまくトラップし、左足でシュートを放つ。ボールは一旦GKにセーブされたものの、跳ね返りを自らの頭で倒れこみながらヘディングシュート。ボールはウズベキスタンゴールに突き刺さり、最初の決定機にしっかりと先制点を奪う事に成功した。

 岡崎と中村憲という直前のテストマッチで活躍した2人によって得点がもたらされ、岡田監督の起用に見事に応えてみせた。

 その2分後にも、岡崎がゴール正面で倒されFKを獲得。キッカー遠藤保仁(G大阪)の右足から放たれたシュートは左ゴールポストを叩く。これを大久保がつめてゴールへ押し込んだ。日本に追加点が入ったかに見えたが、大久保のポジションがオフサイドと判定され、得点ならず。絶好の機会を逃し惜しくも追加点にはならなかった。

 前半20分まではウズベキスタンに攻め込まれながらも、短いパスをつなぎながら中盤を支配することに成功した日本代表。しかし、25分を過ぎたあたりから徐々に中盤でボールを奪うことができなくなっていく。先制を許しあとのなくなったウズベキスタンが、満員のスタジアムからの声援を背に積極的にルーズボールに飛び込み試合の流れを掴んだ。日本は最終ラインでクリアするものの、セカンドボールをことごとく相手に拾われ、苦しい時間帯が続いた。

 試合終了間際には、カウンターから右サイドを突破し、体調不良の内田篤人(鹿島)の代わりに出場した駒野友一(磐田)の低いクロスを、ゴール前の中村憲がキープ、時間を作り、絶妙のタイミングでボールを下げたところに遠藤が上がって左足のシュート。GKが一歩も動けない鋭い弾道がゴールを襲うが、わずかに枠の外に外れた。このプレーで前半は終了。前半の半分以上は守勢にまわった日本が1点のリードで前半を折り返した。

 両軍ともハーフタイムでの選手交代はなく、後半が開始される。立ち上がり早々、長谷部が左サイドを突破し、ゴール前で待つ大久保にクロスを上げる。クリアにいったウズベキスタンDFが必死に足を伸ばし、ゴール横へはじき出そうとするが、クリアボールはゴールポストに直撃。あわやオウンゴールかと思われるシーンで日本が最初のチャンスを迎えた。

 しかしその後は前半と同じく一方的なウズベキスタンペース。中盤で全くボールを奪えない日本は、中村俊や岡崎も前線から守備に追われる厳しい展開になる。特に中盤のセルヴェル・ジェパロフがボールを保持すると、鋭いドリブルと強烈なシュートがあるためヒヤリとする場面が多かった。サイドからも再三突破を許したものの、ゴール前の攻防では中澤佑二(横浜FM)や田中マルクス闘莉王(浦和)が踏ん張りをみせ得点は許さない。楢崎正剛(名古屋)も相手シュートを落ち着いて処理し、無失点のまま試合は進んだ。

 日本にとって大きなピンチが立て続けにやってきたのは残り10分頃から。右サイドからのFKをジェパロフが強烈な左足のシュートでゴールを脅かす。これはDFがギリギリのクリアをみせコーナーキックに逃れる。ウズベキスタンにとって9本目となった右サイドからのコーナーは、ジェパロフが左足で回転をかけ直接ゴールを狙った。ボールはクロスバーを叩き、日本は九死に一生を得た。

 さらに両サイドから攻撃を繰り出すウズベキスタンに岡田JAPANは防戦いっぽうとなる。88分過ぎには左サイドで守備にはいった長谷部が相手にヒジを入れたと判断され一発レッドで退場になり、土壇場で一人少ない状況に追い込まれる。さらにこの直後には岡田監督が審判から退席処分を言い渡された。異様な雰囲気の中でゲームはロスタイムに突入し、スタジアムは地元サポーターの声援によって興奮は頂点に達した。

 ロスタイムは4分。ウズベキスタンの猛攻は続き、3分ほど経過したところで日本はゴール正面でファウルを犯しFKのチャンスを与える。距離にして約30m、キッカーはまたしてもジェパロフだ。強烈なシュートがゴール左上を襲ったが、ボールはわずかに枠の外へ。最後の最後まで肝を冷やす展開になったが、時計の針が94分を過ぎたところで審判が試合終了のホイッスルを吹く。アジア最終予選に入って最も苦しかったアウェー戦で勝利を収め、岡田JAPANが南アフリカへの切符を手にした。6日での出場権獲得は世界最速で、日本にとっては4年前のドイツ大会に続き、一番乗りでの出場権獲得となった。

 試合後、岡田監督は「タフな戦いだったが、選手がよく戦ってくれた。(出場権獲得で)ようやく目標へのスタートラインに立てた。これからが本当のチャレンジだ。(退席処分について)こんな審判もいるのかな。選手に指示を出しているだけで退場になった。信じられない判定が多かった。(W杯に向けて)これからが勝負。予選残り2試合は大事な強化の場になる。1歩でも前進できるようにしたい」と12年前に日本代表を初めて率いた因縁の地での出場権獲得について語った。

 キャプテンの中澤は「苦しい試合で1−0という最高の結果が残せた。押し込まれたが、全員がW杯に行きたいという気持ちを持って試合に集中できた。4年前はお客さんのいない中での出場権獲得だったが、(今回は)多くのサポーターと喜びを分かち合えてよかった。残り2試合あるが、今は(出場権獲得を)喜びたいと思います」と興奮気味に答えた。

 決勝点を決めた岡崎は「キリンカップなどで点を決めていたが、予選でチームのために何かしたいと思っていたので嬉しい。まだまだ課題はあるが、W杯ベスト4に向けてステップアップしていきたい」と喜びつつも、早くも次の目標にむけた姿勢をみせた。

 本大会への切符がかかる試合で、ようやく苦しい試合を味わった岡田JAPAN。相手に押し込まれながらも無失点で切り抜け勝ち点3を奪ったことは大きい。また、岡田監督の起用に応え、岡崎・中村憲の両選手が結果を出したことは明るい材料だ。

 一方で、本大会ベスト4を狙うチームにしては、まだまだ足りない部分が多すぎる。多くの選手が試合後に口にした「まだまだ課題がある」という言葉。本大会までちょうど1年間の時間がある。世界の一流どころと伍して戦うためには“足りない部分”を明確にし、補っていく作業が必要となる。

「やっとスタートラインに立てた」。岡田監督の言葉どおり、日本代表にとって南アフリカW杯にむけた本当の挑戦はここから始まる。

(大山暁生)

<日本代表出場メンバー>

GK
楢崎正剛
DF
中澤佑二
田中マルクス闘莉王
駒野友一
長友佑都
MF
遠藤保仁
長谷部誠
中村憲剛
→本田圭佑(65分)
中村俊輔
→阿部勇樹(89分)
FW
大久保嘉人
→矢野貴章(67分)
岡崎慎司