17日、日本代表はメルボルンでアジア最終予選最終戦オーストラリア戦に臨む。オーストラリアとは06年W杯ドイツ大会で1−3の惨敗を喫した日本にとっては忘れられない相手。今年2月のアジア最終予選(ホーム)では、守備を固められてスコアレスドローに終わっている。W杯で上位進出を果たすためには、アジア予選を2位で通過するわけにはいかない。岡田JAPANにとって、オーストラリア戦は真価の問われる一戦となる。
(写真:「本当の勝負の1年」に入った岡田武史監督)
 すでに日本とオーストラリアはアジア最終予選A組で2位以内を確定させ、南アフリカへの切符を掴んでいる。首位オーストラリアが勝ち点17、2位日本は勝ち点15。その差は2で、この試合に日本が勝利すればグループ首位で南アフリカへ駒を進めることになる。

 オーストラリアはここまで5勝2分けで負けなし。特筆すべき点は最終予選で一度もゴールを許していないこと。前回ドイツ大会からゴールを守るGKマーク・シュワルツァー(フラム)、昨季までプレミアリーグ・ウエストハムで主将を務めたDFルーカス・ニールらを中心としたアジア最強の守備陣が岡田JAPANの前に立ちはだかる。攻撃面では、チームの精神的支柱でもあるハリー・キューウィル(ガラタサライ)がコンディション不良のため出場しないものの、フィジカルが強く迫力のあるオフェンスで日本ゴールを脅かす。3年前にカイザースラウテルンではじき返されたオージーの壁を岡田JAPANは打ち破ることができるのか。壁を突き抜けた時、初めて世界に通用するサッカーが我々の目の前に示されることになるだろう。

 しかしながら、敵地に乗り込む日本代表は万全の態勢とは言いがたい。08−09シーズンを戦い抜き、疲労蓄積の激しい欧州在籍組(松井大輔を除く)は、オーストラリア遠征に帯同していない。また、前試合のカタール戦に続き、右足太股に故障を抱える遠藤保仁(G大阪)も欠いている。その上、これまで日本のDFラインを支え続けた中澤佑二(横浜FM)も体調を崩し欠場の予定だ。2月のオーストラリア戦とは、先発メンバーが6名も入れ替わると予想されている。4カ月前の試合とは別のチームでメルボルンに乗り込むと言っても過言ではない。ただ、厳しい状況にあっても来年の本大会で上位進出を狙うのであれば、常に自分たちの目指すサッカーを具現化しなければならない。本大会でもケガ人や出場停止選手が続出する可能性はあるのだ。

 注目したい選手は松井大輔(サンテティエンヌ)。ここ2試合は岡崎慎司(清水)の台頭もあってベンチを温めることが多かったが、中村俊輔(セルティック)、大久保嘉人(ヴォルフスブルグ)の欠場によりチャンスが回ってきた。今シーズンはクラブでの出場機会が大きく減り、コンディション不良が懸念されたが、10日のカタール戦では途中出場ながらまずまずの動きを見せた。17日は左サイドでの先発が濃厚。オーストラリアの上背のあるDF陣を崩すためには、ゴールライン付近まで深くえぐるドリブルが有効となる。そこから精度の高いボールが玉田圭司(名古屋)や岡崎にピンポイントで合えば、日本の得点が生まれるだろう。

 もう一人のキープレーヤーとして橋本英郎(G大阪)を挙げたい。カタール戦に続き中盤の底に入る橋本だが、10日の試合ではゲームを組み立てることができず、90分間を通じ消極的な動きに終始した。オーストラリア戦でコンビを組むのは今野泰幸(F東京)だろう。今野よりも前の位置に構え、中村憲剛(川崎F)とのパイプ役を果たしてもらいたい。昨年末のクラブW杯ではマンチェスター・ユナイテッド相手に豪快なミドルシュートを叩き込んでおり、ここ一番での攻撃参加にも大きな魅力がある。タレント豊富な中盤の中で、常に代表に選出されているだけに、ここで大きな成果を残したいところだ。

 W杯出場を決めているとはいえ、選手間での代表入りをかけたサバイバルは始まったばかり。これまでの主力である海外組が不参加のオーストラリア戦は、ベンチを温めてきた選手にとって絶好のアピール機会だ。南アフリカへ当落線上にいる選手は、オージー相手に一泡吹かせようと目論んでいる。

 岡田武史監督がチームを率いて1年半が経つ。チームに植えつけてきたサッカーが前回W杯ベスト16の相手に通用するのか? オーストラリアはアジア内で真剣勝負のできる数少ない相手だ。本番への大切なシミュレーションとなる一戦には、グループ首位通過と岡田JAPANの1年半の成果が懸かっている。

(大山暁生)