プロ野球はシーズン終盤を迎え、ますます激しい攻防戦が繰り広げられている。なかでも注目はクライマックス・シリーズ(CS)進出をかけての3位争いだ。セ・リーグでは後半に入って調子のいい阪神が東京ヤクルトを猛追。パ・リーグは埼玉西武から3位の座を奪い取った東北楽天が球団設立初のCS進出へと着々とを歩を進めている。8日現在、ヤクルトと阪神は2.5ゲーム差。楽天と西武は3ゲーム差と、最後までどちらに転ぶかわからない状況だ。残り30試合を切り、今後さらなる混戦模様が予想される。
 後半に入り、最も勢いに乗っているのが阪神だろう。オールスター直後に4連勝を飾ると、8月半ばからは7カード連続の勝ち越し。最大13.5ゲームあったヤクルトとの差は、8日現在2.5ゲームにまで迫っている。この勢いの原動力となったのが、途中加入したブラゼルの存在だ。68試合で打率3割5厘、14本塁打、45打点という成績からもその功績ぶりがわかる。

 だが、そのブラゼルにアクシデントが起こった。5日の広島戦で左ひざを痛め、7日に登録抹消をされたのだ。検査の結果は左大腿四頭筋筋挫傷。幸い靭帯は損傷しておらず、シーズン中の復帰の可能性もある。ここまでチームを牽引してきた助っ人に、チームは最高の舞台を用意することができるのか。そのためには、ブラゼル復帰までに勢いを低下させてはならないが、やはり抜けた穴は大きかった。8日の中日戦ではチャンスらしいチャンスを得られないまま、完封負けを喫した。中日は唯一、今季一度も勝ち越していない相手だけに、初の勝ち越しを決めればさらに勢いづくことは間違いない。後続からは広島が必死の追い上げを見せており、なんとしても中日に勝ち越したいところ。9、10日の試合は阪神の今後を占う意味でも最初の正念場となりそうだ。

 猛追をみせる阪神、広島からなんとか逃げ切りを図りたいヤクルトは、投手陣にケガ人が続出しており、チーム事情は苦しい。特に絶対的な抑えとしてチームを牽引してきた林昌勇の離脱はあまりにも痛い誤算だろう。加えて中継ぎの五十嵐亮太も2軍落ちと、後ろが不安定な状態だ。さらに追い打ちをかけるように先発の由規も右手中指のマメの影響で登録抹消となった。もともと先発陣が手薄なだけに、由規の離脱でまさに火の車状態。リリーフの押本健彦を先発に起用するなど、投手陣総出でのスクランブル起用で凌ぎ切りたいところ。打線の奮起にも期待したい。

 一方、パ・リーグでは3位・楽天が4位・西武に3ゲーム差をつけ、逃げ切りを図ろうとしている。8月、17勝7敗と快進撃を見せた楽天。岩隈久志と田中将大の2人のエースが復調したことが最大の要因だ。さらに米国から帰国し、チームにカムバックした福盛和男の存在が大きい。23試合に登板し、6勝0敗9セーブ、防御率0.90と非常に安定している。

 楽天にとって最も不安視されるのは見えないプレッシャーとの戦いだろう。今月に入って、CS進出のマジック点灯まであと1勝と迫ったが、そこから4連敗を喫した。この時期での上位争いは未経験の選手も多い。また、これまでとは違った追いかけられるプレッシャーもある。緊迫したゲームが続く今後、崩れずに戦い切ることができるか。巨匠・野村克也監督の手腕が問われそうだ。

 昨季覇者の意地を見せたい西武だが、チーム状態は芳しくない。特に開幕から不安定さを露呈しているのが抑えだ。今季リーグワーストの12度のサヨナラ負けがそれを物語っている。昨季、31セーブを挙げ、守護神として活躍したグラマンは開幕から故障が相次ぎ離脱。その代役として抜擢された小野寺力も不振で現在は2軍落ちしている。

 打線も主砲の中村剛也が故障で戦線離脱するなど、昨季のような爆発力は影を潜めている。これまで以上に投手陣の力が必要になることは必至で、安心して後ろを任せられるクローザーがいないのはあまりにも痛い。潮崎哲也投手コーチはあえて抑えを置かず、9回は残った投手陣総出で守り切るプランを挙げているが、そう簡単な話でない。リリーフ陣への負荷を軽減させるためにも、涌井秀章、岸孝之といった完投能力の高い先発投手の踏ん張りが再浮上のカギを握りそうだ。