後期も残り10試合を切り、終盤に入っています。富山サンダーバーズは8日現在、北陸地区2位。首位の石川ミリオンスターズとは1.5ゲーム差。逆転優勝の可能性は十分に残されています。多少、故障者が出ているものの、チームの士気は高まっており、いい状態です。前期はゲーム差なしで優勝を石川に奪われていますので、後期はその雪辱を果たし、プレーオフに進出したいと思っています。
 今は、どのチームも優勝するために必死ですから、ここにきて僅差のゲームが続いています。8月16日以降の10試合で1点差ゲームは6試合にものぼります。こうした接戦を拾ったゲームも少なくないのですが、それでも試合終盤にリリーフピッチャーが崩れて負けを喫したゲームもあります。そのため、先発とリリーフを入れ替えるなど、試行錯誤している状態が続いています。

 今シーズンは昨シーズン、抑えとして活躍した小園司(神戸9クルーズ)の代わりに、プレーオフで好救援を演じた木谷智朗(関東一高−東京情報大−愛媛マンダリンパイレーツ)を後ろに回し、萩原淳由(上牧高−大和高田クラブ−NOMOベースボールクラブ)とともにリリーフの柱に立てました。

 しかし、本来先発タイプである木谷は、どういうふうにモチベーションを上げていけばいいのか迷っていました。抑えとしてのプレッシャーも彼に重くのしかかったのでしょう。防御率4.53が表しているように、本来の力を出し切れずにいました。そこで7月末から先発だった日名田城宏(高岡西高−北陸大)を後ろにまわしました。その理由は、チームの中で唯一、空振りを取れるピッチャーだからです。

 シーズン後半になると、優勝争いが激しくなり、接戦も多くなります。こうした時に試合の終盤、最も苦しい場面ではやはり三振が取れるピッチャーがいるのといないのとでは全く違うのです。しかし、リーグの奪三振部門ベスト10に誰一人入っていないことからもわかるように、チーム内には三振が取れる投手がいません。その中でなんとか空振り取れるのが日名田のスライダーなのです。先発タイプが多い中、リリーフも任せられる貴重な存在で、チームへの貢献度は非常に高いものがあります。

 一方、先発は小山内大和(土岐北高−金沢総合科学専門学校−宮城建設−愛媛MP)と田中孝次(釜利谷高−帝京平成大)が中心です。小山内は開幕投手を務めたものの、その後は故障で戦線を離脱していました。6月半ばに復帰したものの、体が思うように動かず、ボールも昨シーズンのようなキレや勢いはありませんでした。投手というのは、自分のイメージ通りに投げることができないと、それだけで調子を崩してしまうものなのです。本来は四球の少ないはずの小山内が今季は15試合で20個もの四球を記録していることからも、彼本来のピッチングができていないことは明らかです。

 本人も相当悩んでいたようです。しかし、試行錯誤していく中で、ここ最近になってようやく納得のいくボールが投げられるようになってきているようです。チームとしてはこれからが正念場。昨シーズンまでとはいかなくとも、チームに貢献してくれることを期待しています。

 残り9試合となり、これからますます厳しい戦いが待っています。今シーズンは絶対的なエースも守護神もいません。ですから、先発、リリーフを固めることなく、投手陣総出で挑んでいく覚悟です。

 今後は石川戦2試合、福井戦5試合、群馬戦2試合という組み合わせです。なかでもポイントとなるのは、やはり石川との直接対決。ここで2勝できれば、ぐっと優勝へ近づくことができます。

 とはいえ、石川戦は3勝7敗と大きく負け越しています。「石川に負ける」というよりもむしろ「南和彰(神港学園高−福井工大−巨人−カルガリーバイパーズ)に負けている」と言った方がいいかもしれません。南は元NPB選手だけあって、スピードはもちろん、キレもコントロールもリーグ随一のピッチャーですから、攻略することはなかなか難しい。選手たちも苦手意識をもってしまっているかもしれません。しかし、南を打つことができなければ、選手たちが目標としているNPBへの道は開かれることはありません。「何としてでも打つんだ」という気迫のこもったバッティングを見せてほしいと思います。

 一方、投手陣も石川の打者に対してはあまりいいイメージはありません。石川の選手は金森栄治監督の基本に忠実な指導がいきわたっているのでしょう、なかなかボール球に手を出してくれないのです。しかも、今シーズンの富山の投手陣は四球がリーグ最多とストライクゾーンで勝負することができていません。積極的に振ってくる打者であれば、ボール球にも手を出してくれますので打ち取りやすいのですが、石川のようにじっくりと的をしぼって打ちにこられると、非常にやっかいなのです。そうならないためにも、ストライク先行で勝負して、相手を追い込むことが重要です。とにかく、この石川2連戦を取り、優勝へと一気に加速していきたいと思っています。


横田久則(よこた・ひさのり)プロフィール>:富山サンダーバーズコーチ
1967年9月8日、和歌山県出身。那賀高からドラフト6位で指名を受けて1986年、西武に入団した。その後、ロッテ、阪神へと移籍。02年オフに阪神から戦力外通告を受けるも、台湾の兄弟エレファンツに入団した。2年目には5勝を挙げる活躍を見せたが、肩の故障などに苦しみ、06年限りで引退を決意。07年より富山サンダーバーズのコーチに就任した。
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