9日、オランダ・ユトレヒトで国際親善試合が行われ、日本代表はガーナ代表と対戦した。
 前半にPKで先制された日本は、後半2分にも失点を喫し2点のリードを奪われる。8分に中村憲剛(川崎F)が1点を返すものの、21分にマシュー・アモアー(NAC)に3点目を奪われ厳しい展開となった。しかしここから玉田圭司(名古屋)、岡崎慎司(清水)のゴールで追い上げると、迎えた28分、途中出場の稲本潤一(レンヌ)が代表戦6年ぶりとなるゴールを決め4−3とし、試合をひっくり返した。
 両軍あわせて7ゴールの打ち合いを制した日本が逆転勝ちを収め、オランダ遠征を締めくくった。

 5分間で3得点あげ逆転(ユトレヒト)
日本代表 4−3 ガーナ代表
【得点】
[日] 中村憲剛(53分)、玉田圭司(68分)、岡崎慎司(69分)、稲本潤一(73分)
[ガ] アサモア・ギャン(31分、47分)、マシュー・アモアー(66分)
 4日前、オランダを相手に0−3の完敗を喫した日本代表は、今回の遠征で最後に招集された前田遼一(磐田)を前線に配置しガーナ戦に臨んだ。対するガーナは5日のW杯アフリカ予選で、大陸一番乗りでW杯行きの切符を手にしている。疲れの残る中、2日前にオランダ入りし、この試合に挑んだ。欧州のトップリーグで活躍するマイケル・エッシェン(チェルシー)やスレイ・ムンタリ(インテル)ら主力選手も先発出場した。

 日本は前線の岡崎と前田の2人にパスを預け、くさびをいれながら攻撃を組み立てた。短いパスもよく繋がり、ガーナDFラインの裏を突く場面が目立った。前半11分には田中マルクス闘莉王(浦和)からのロングフィードを前田がうまくトラップしシュート。続く13分には中村俊輔(エスパニョール)のスルーパスに反応した中村憲剛(川崎F)がGKと1対1になりシュートを放つ。さらに17分にもロングパスから抜け出した岡崎慎司(清水)がクロスを上げると見せかけてゴールを狙った。

 立て続けに決定的な場面を演出しながらも、岡崎のシュート以外はゴールの枠を捕えることができず、得点をあげられなかった。

 そんな中、直前にアフリカでW杯予選を消化し、動きの悪かったガーナに先制のチャンスが訪れた。前半29分、ガーナのコーナーキックの際、ファーサイドのボールをクリアしようとした長友佑都(F東京)の手にボールが当たり、PKを与えてしまう。これを落ち着いてアサモア・ギャン(レンヌ)が決め、ガーナが先制した。

 オランダ戦では、先制を許したところから一気に崩れた日本だったが、34分、38分と中村俊が立て続けにミドルシュートを放つなど、失点後も攻めの姿勢は崩れなかった。それでもゴールを奪うには至らず、前半をこのまま0−1で折り返した。

 後半開始直後に再び試合は動き出す。2分にゴールを奪ったのはガーナだった。ゴールキーパーからのロングフィードに走りこんだギャンが中澤佑二(横浜FM)と競り合いながらうまく体を入れボールをキープし強烈なシュートを打つ。都築龍太(浦和)の懸命のセーブも及ばず、ボールはゴールネットを揺らした。縦1本のパスと身体能力の違いでゴールを許した日本イレブンに2点の差が大きくのしかかった。

 それでも、今日の日本はこのままでは終わらなかった。2点目を奪われた直後に田中マルクス闘莉王(浦和)が強烈なシュートを放ちゴールを脅かすと、後半8分、ガーナDFのクリアボールを左サイドで拾った中村憲が左足を豪快に振りぬく。シュートは低い弾道を描きポストに当たりながらゴールへ吸い込まれ1−2。オランダ遠征で初めて日本がゴールネットを揺らした。

 ガーナも21分、ピッチ中央のムンタリからのパスをDFラインの裏で受けたアサモアがダメ押しとなる3点目をゴールに流し込み、日本の追い上げムードに水を差した。

 オランダ戦では2枚しかカードを切らなかった岡田武史監督が今日は積極的に動いた。後半18分には長谷部誠(ヴォルフスブルグ)に替えて稲本を、3点目を奪われた後には前田に替えて玉田を、中村俊に替えて本田圭佑(VVVフェンロ)を投入した。

 ガーナは3点目を決めた時点で、明らかにギアを一つ落とした。そうでなくてもW杯予選から中2日で臨む過密日程、この時間帯から急激に運動量は落ちていた。

 相手の足が止まったことで、後半から投入された選手が結果を残すこととなる。まずは玉田。23分に左サイドから突破した長友の粘りから角度のないところでボールを受け、左足を迷わず振りぬき1点差に。さらに、その1分後には左サイドから稲本がDFラインとGKの間に絶妙のクロスを上げ、岡崎が頭で合わせて同点とする。岡崎のヘディングは、ピンポイントのクロスと岡崎の見事なポジショニングが生んだファインゴールだった。

 そして迎えた28分。再び左サイドの長友の突破からゴール正面に走りこんだ稲本へパスが出る。稲本はダイレクトで抑えの効いたシュートを放ち、ボールは左サイドネットへ吸い込まれた。稲本の代表ゴールは2003年3月のウルグアイ戦以来6年ぶり。ジャパンブルーのユニフォームを身に纏って久々の一撃で4−3とした。およそ5分間で3ゴールを上げ、日本が試合を一気にひっくり返した。

 その後は、勝ちを得るために落ち着いて試合を運んだ日本。ガーナにはもはや反撃する気力は残っておらず、危なげなく逃げ切って勝利を収めた。

 岡田監督がガーナ戦で掲げたテーマは「点を取ること」と「失点後にメンタル面で崩れないこと」。先制を許す苦しい展開ながら、この2つのテーマをクリアしたことには価値がある。「いい結果で遠征を締めくくれた」と笑顔で試合後に語った岡田監督。選手たちも結果を残したことには満足の表情だった。

 ただこの試合では、前半にいくつもシュートチャンスを作りながら、ゴールを奪えなかったことも事実だ。コンディションの整っていないガーナ相手に、自分たちの手で逆転勝利を演出してしまった感は否めない。今日の出来ならば、圧勝しても不思議でない状況であった。ここは反省すべき点だろう。

 今回のオランダ遠征は1勝1敗という結果に終わった。W杯グループリーグに例えれば、1試合を残し決勝トーナメントに進出できるか否かという状況だろう。来夏の本大会では、もう1試合で勝ち点を積み重ねられるようなチームにならなければいけない。

 岡田JAPANは世界を相手に通用するのか? この問いの答えは今回の遠征では導き出すことができなかった。それは9カ月の後の南アフリカまでとっておこう。決定力の差を感じたオランダ戦、身体能力の違いを見せ付けられたガーナ戦を糧に、本大会で上位進出を狙えるチームを作ることが来年6月までに日本代表へ課せられたミッションだ。

(大山暁生)

<日本代表出場メンバー>

GK
都築龍太
DF
中澤佑二
田中マルクス闘莉王
駒野友一
長友佑都
MF
遠藤保仁
長谷部誠
→稲本潤一(63分)
中村憲剛
→阿部勇樹(89分)
中村俊輔
→本田圭佑(69分)
FW
岡崎慎司
→興梠慎三(84分)
前田遼一
→玉田圭司(69分)