3月に開幕した2009Jリーグディビジョン1(J1)は残り9節となった。史上初のリーグ3連覇を目指す鹿島アントラーズが序盤から強さを発揮し首位を快走してきたが、ここへきて足踏みが続いている。その鹿島に迫るのは、強豪ながらここまで無冠の川崎フロンターレ。念願の初タイトルがJ1優勝となるか。若手中心でシーズン中盤から勢いを増してきた清水エスパルス、サンフレッチェ広島の追い上げや激戦必至の降格争いなど、見どころ満載のクライマックスがやってくる。
 17年目を迎えた今年のJリーグ。開幕から強さを見せたのは2年連続王者の鹿島だった。昨季の磐石の戦いぶりに磨きをかけ、前評判通りに勝ち星を積み重ねていく。オズワルド・オリベイラ監督がチームの指揮を執って3年目となる今シーズン、選手が監督の意図を十分に理解し安定感のある試合運びを見せた。

 特に昨季は左膝の故障でシーズン後半を棒に振った小笠原満男が今年は開幕からフル回転。好調のチームを牽引し続けた。一方、前線では鳴りもの入りで入団した大迫勇也が第2節にデビューし、第5節にはJリーグ初ゴールをマークする。どのポジションも選手層が厚く欠点らしい欠点を見せずに相手を圧倒してきた。第19節まで13勝5敗1分けの勝ち点44。最大で2位に10差をつけ、リーグ3連覇に早くも当確ランプがつくかと思われた。

 しかし、鹿島に落とし穴が待っていたのは7月以降だ。暑い時期に入り3勝3敗3分けと、これまでの戦いぶりが嘘のように急ブレーキがかかった。慢性的な疲労など故障者が続き勝ちきれない原因だった。

川崎の敵は、四冠の夢!?

 一昨年に浦和レッズ、昨年はガンバ大阪が優勝したことで国内での注目度も飛躍的に上がったアジアチャンピオンズリーグ(ACL)。日本の出場枠は4で、そのうち3つはリーグ戦上位に与えられる(残り1枠は天皇杯優勝クラブが獲得)。そのため近年は3位争いがクローズアップされているが、開幕から常に上位争いをしてきたのが川崎フロンターレだ。鄭大正、ジュニーニョ、レナチーニョの攻撃的3トップと中村憲剛、谷口博之ら点の取れる中盤の選手を擁し、攻撃的なサッカーで勝ち点を積み重ねてきた。得点41はガンバ大阪、サンフレッチェ広島に続き今季3位となっている。

 その川崎も、夏場の鹿島の失速に付き合うように差を埋めることができなかった。鹿島が足踏みを続けた7月以降、こちらも3勝2敗4分けとは勝ち点差を1縮めるに留まっていた。アルビレックス新潟の後退で順位を2位に上げたものの、鹿島を射程圏に捕えるまでには至らなかった。

 そして迎えた9月12日の第25節に直接対決。この試合で鹿島が勝ちを収めれば独走状態に拍車がかかり、優勝はほぼ決まるという大一番だ。しかし、ここで思いもよらない波乱が待っていた。

 雨の中で行なわれた試合は前半、鄭大正の2ゴールで川崎が2−1のリードで折り返す。雨がさらに強くなった後半は、ジュニーニョのゴールで追加点を奪った川崎2点リード。しかし、後半29分に迎えたところで、主審の判断により試合は中断。そのまま強い雨はそのまま降り止むことはなく、ピッチコンディション不良のため試合はこのまま中止された。

 これまで試合の最中に天候不良などで中止となったゲームは全て再試合となってきたが、昨日開かれたJリーグ理事会でこの試合は点差と残り時間を考慮し、後半29分の時点から再開されることが決定した。この決定により川崎が勝ち点3を獲得する公算が高くなった。そうなれば両者の勝ち点差は4となり、野球で例えれば“ゲーム差1.5”となったようなもの。残り試合数を考えると、首位がひっくり返ってもおかしくはない。

 追い上げる川崎だが、彼らの一番の敵は首位・鹿島よりも『過密日程』だろう。現時点でJ1リーグ戦・ナビスコ杯・天皇杯・ACLと4冠の可能性も残っている。直近で行なわれるタイトル決定戦は11月3日(火・祝)のナビスコ杯決勝。相手はライバルでもあるFC東京だ。決勝が行われる国立競技場は両者のホームグラウンドが近いこともあり、盛り上がりは必至だ。ACLでも名古屋グランパスとの直接対決となる準々決勝が9月23日(水・祝)、9月30日(水)に控えており、負けられない戦いが続く。選手層が厚いとはいえないだけに、主力選手の故障が一番の心配事となる。関塚隆監督にとって選手の起用法に神経を使う試合が続いていくことになる。

広島は“史上初の快挙”に挑む

 鹿島の失速と川崎の過密日程を加味すれば、着実に勝ち点を伸ばしてきた広島、清水も優勝も狙える位置にいる。特に広島は昨季、J2を戦っていたクラブ。J1昇格クラブがいきなりの優勝となれば、史上初の快挙となる。佐藤寿人、柏木陽介ら攻撃の核がしっかりと機能しているだけでなく、Jリーグでの戦いに集中できるアドバンテージもある。攻撃的なチームを作ったミハイロ・ペトロビッチ監督の手腕に期待したい。

 今後、優勝争いのカギを握るのは、上位クラブと対決する実力クラブだろう。序盤は快調に飛ばしたものの7連敗を喫するなど急激に勢いをなくした浦和レッズ、負傷者も戻り徐々に本来の形に戻りつつあるガンバ大阪、ACLではベスト8に残っている名古屋。そして、ナビスコ杯で2度目のタイトル獲得を狙うFC東京。この4クラブは中位に留まっているものの、実力的には上位クラブと大差はない。彼らとの対決を多く残している上位クラブは今後、厳しい戦いが続く。

 今季から入れ替え戦がなくなり、3クラブが降格となる下位争いに目をやると、シーズン途中に14連敗を喫した大分トリニータの残留は厳しいだろう。問題は自動降格の残り2枠をめぐる戦い。現在は柏レイソルとジェフユナイテッド千葉が降格圏にいるが、13位の横浜F・マリノスまで勝ち点差はわずか5。最終節まで目まぐるしい争いが繰り広げられそうだ。

 鹿島が春先の貯金をうまく利用し3連覇を果たすのか。それともこれまで無冠の川崎が初のタイトルを獲得するのか。また、勢いにのって若い広島、清水が一気に頂点まで駆け上るのか……。残りわずかとなったJリーグの戦いから目が離せない。