3日、bjリーグ2009−2010シーズンが開幕する。5年目を迎えた今シーズンは京都ハンナリーズが加わり、13チームでスタートする。年々、チーム力は均衡しており、今シーズンもこれまで以上に激しい優勝争いが繰り広げられることが予想されている。果たして、どのような戦いが繰り広げられるのか。今シーズンの展望と注目チームおよび選手について河内敏光コミッショナーに訊いた。
 ダークホースの京都

 いよいよ今週末から2009-2010シーズンのbjリーグが開幕しますね。5年目の今シーズンは、新しく京都ハンナリーズが加わり、13チームでスタートします。
 先日、京都へプレシーズンゲームを観に行ってきましたが、新規チームとは思えないほどの盛り上がりを見せていました。サポート体制も含めて、しっかりと準備してきたということがうかがえました。京都は戦力としてもいいメンバーが揃っていますよ。琉球ゴールデンキングス(沖縄)からG澤岻直人、東京アパッチからはPG/SG岩佐潤、さらにはJBLの三菱電機ダイヤモンドドルフィンズからSG川辺泰三、アイシンシーホースからはG/F瀬戸山京介が移籍してきました。

 そして何より注目してほしいのはGマクムード・アブドゥル・ラウーフ。彼はデンバー・ナゲッツ、サクラメント・キングス、バンクーバー・グリグリーズで活躍した元NBAのスタープレーヤー。1995年まで名乗っていた「クリス・ジャクソン」という名前で思い出す方もいることでしょう。NBAであれだけ活躍した選手が日本のチームに移籍するのは、初めてではないかと思います。それくらいのビッグスターです。ラウーフは、身長は180センチちょっとしかありませんが、決めるところは決めるし、まとめるところはきちんとまとめる。もちろん、自身でドリブルで切り込んでいけますし、ここ1本欲しい時には味方に自分のマークをスクリーンにかけさせて、ノーマークでジャンプシュートをしてきます。彼のムダのないプレーには、きっと驚くことでしょう。

 年齢こそ40歳ですが、体はしっかりと鍛えられています。特にふくらはぎなんて、とても40歳とは思えません。プロとしてのコンディショニングがしっかりとなされている証拠ですね。そういった面でも彼は日本人選手にも外国人選手にも、非常にいいお手本になると思います。ラウーフがチームで機能しさえすれば、京都は安定感抜群のチームになると思いますよ。それこそ他チームは京都を新規チームと思っていては、痛い思いをするかもしれません。そういう意味で京都は西の“台風の目”となることでしょう。それどころか、例えば最初の対戦で昨シーズン覇者の沖縄や大阪エヴェッサに2連勝でもすれば、一気に構図がかわり、京都中心になる可能性さえ秘めています。

 ただ、京都は1年目と若いチーム。bj独特のアウェイでの洗礼を受けても、どれだけ自分たちのバスケットを崩さずにやることができるか。そういう意味では澤岻や岩佐の存在が非常に大きいでしょうね。

 沖縄は超高速バスケット

 さて昨シーズン、大阪の連覇を止め、創設2年目にして王者に輝いた沖縄は、今年も強いと思いますよ。確かに、昨年リーグベスト5に入るなどチームの大黒柱だった澤岻がチームを去った穴は非常に大きい。しかし、沖縄は大分ヒートデビルズから移籍し、新キャプテンに就任したG与那嶺翼がしっかりと埋めているようです。
 正直、与那嶺に澤岻のような圧倒的なドリブル力はありません。でも、彼は球離れが非常によく、パスで相手を崩していくことができます。ですから、リバウンドやターンオーバーで味方のボールになると、すぐに誰かが一目散にゴール下に走っていくわけです。そこに与那嶺からのロングパスが送られてくる。

 先の韓国王者とのチャンピオンシップを観ても、こうした与那嶺スタイルのバスケットを沖縄は確立していましたね。キャッチフレーズは“超高速バスケット”。その名の通り、とにかく展開が速いこと、速いこと。昨シーズンの沖縄とも全く見劣りしないくらいの強さをもっていますから、今シーズンもかなり期待できると思いますよ。

 さて、その沖縄に連覇を止められ、昨シーズン最も悔しい思いをした大阪ですが、今シーズンは2年前、大阪の3連覇に大きく貢献したFデイビッド・パルマーが戻ってきました。これは大阪にとっては非常に大きい。というのも、昨年の大阪はオフェンスもディフェンスもFリン・ワシントンが中心でした。だから、勝負時には必ずリンでくることは相手陣営にははっきりとわかっていました。だから、どのチームもそこを潰しにきたわけです。

 しかし、今年はそこにパルマーがいます。彼はスリーポイントのスペシャリストでもありますから、ゴール下でリンがディフェンスを引きつけて、パルマーにボールをさばくこともある。さらに、逆もあるわけで、オフェンスのオプションが一つも二つも増えます。相手はきっと困惑するでしょうね。昨季の悔しい思いを晴らそうと天日謙作HCも並々ならぬ闘志を燃やしているはずですから、今季大阪も優勝候補の一角に入ることは間違いないでしょう。

 高松、真の“おらが町のチーム”へ

 さて、経済状況の悪化に伴い、これまで全面的にバックアップしてきてくれたスポンサーからの支援がなくなり、チームの存続さえも危ぶまれた高松ファイブアローズですが、今シーズンは間違いなく乗り越えられるというところまできています。もちろん、スポンサーが抜けたことで苦しい状況であることには変わりませんが、私は高松にとってはある意味、いいチャンスになったような気さえしているのです。というのも、チームの苦しい状態を知ったブースターたちが自ら支援団体をつくりました。そこには明らかに「なんとか自分たちが支えていこう!」という気持ちがあります。

 さらに寄付をしてくれた人たちには、自ずと「我々もチームの一員、自分たちが支えているんだ」という気持ちが高まることでしょう。こうした動きの中で、高松は本当の意味で地域と共存した“おらが町のチーム”になってきているのではないかと思うのです。もちろん、ブースターに支えられているという気持ちは、チームの力にもなることでしょう。

 今シーズンの高松は日本人選手に関して言えば、早い段階から優秀な選手を確保していました。ですから、あとはそこに外国人選手をどうアジャストさせていくかということだったわけですが、どうやら心配はすることはないようです。何といっても、指揮官は昨シーズンまでライジング福岡の采配を採ってきたジョン・ニューマンHC。百戦錬磨の彼にかかれば、いるメンバーできっちりと仕上げてきますからね。そこにブースターの応援が加われば、高松はこれまで以上に大きな盛り上がりを見せてくれることでしょう。

 東地区は埼玉が台風の目に

 一方、東地区の方はというと、創設時から指揮をしてきたジョー・ブライアントHCから、青木幹典HCに代わった東京は注目の一つですね。というのも、東京と高松とではチームカラーが全く違うからです。東京はプロスポーツが盛んな地域ですから、ブースターからの要求も高く、他の地域以上に勝敗にこだわる傾向が強いと思います。また、東京の選手にはパフォーマーが多く、チームイメージも華やかです。加えて昨年まではHC自身の派手なパフォーマンスが東京のイメージを作り上げてきたと言ってもいいでしょう。
 その東京に4年間、高松の指揮を務めてきた青木HCがやってきた。果たして、彼がどんなふうにチームを作り上げ、そして東京のブースターたちをどう味方につけていくのか。これは、非常に楽しみですね。

 東京は戦力を固めるのに時間はかかりましたが、メンバーを見れば、今年もやってくれるなという印象を受けます。外国人選手ではPFニック・デービス、Cジュリアス・アシュビーが残りましたから、リバウンドも問題ありません。あとはPG青木康平やSF仲摩純平といった日本人選手のシュートが確率よく入ってくれたら、どこのチームにも十分対抗できるでしょう。

 東地区で台風の目となりそうなのは、埼玉ブロンコスですね。埼玉はリーグ発足時の6チームの中で唯一、プレイオフに進出したことがありません。しかし、今年は結構期待できると思いますよ。G/SG清水太志郎やPG宍戸治一と、もともと日本人選手には優秀なプレイヤーが揃っていますし、今シーズンは外国人選手にも200センチ以上の長身選手が4人も揃いましたので、昨シーズン課題だったインサイドも非常に強化されています。

 さらに、大阪からはF波多野和也が加入しました。彼はフィジカルが強く、外国人選手にも決して当たり負けしません。手足が長く、ポジション取りもいいですから、リバウンドにも強い。彼が外国人とマッチアップすれば、外国人選手が相手の日本人選手とマッチアップできるわけで、そうなるとゴール下はさらに強くなるでしょうね。
 埼玉のブースターは初年度にベストブースター賞をとったほど、非常に熱い。チームがうまく機能すれば、応援に背中を押されて、一気にいく可能性は十分にあります。もしかしたら、昨シーズンの沖縄のような勢いが出てくるかもしれません。

 もちろん、他のチームもそれぞれ優秀な選手が揃っていますから、正直言って、優勝の可能性は13チーム全てにあります。果たして来春、栄光をつかむのはどのチームか。今シーズンも熱い戦いが繰り広げられること間違いありません。皆さん、どうぞプロのバスケットを存分に楽しんでください!

(構成・斎藤寿子)