先日、全出場チーム32カ国が出揃った南アフリカW杯。12月4日には組み合わせ抽選会も行なわれ、いよいよ本番へのカウントダウンが始まる。ここで出場国の歴史や注目選手を紹介し、7カ月後に迫った本大会での見どころを探ってみたい。
【ヨーロッパ】

国名: デンマーク王国
首都: コペンハーゲン
人口: 約5500万人

FIFAランク: 26位
W杯出場回数: 4度目(2大会ぶり)
初出場時成績: ベスト16(86年メキシコ大会)
W杯最高成績: ベスト8(98年フランス大会)
06年ドイツW杯成績: 予選敗退

監督: モアテン・オルセン
愛称: ダニッシュ・ダイナマイト
歴代名選手: ピーター・シュマイケル、ミカエル・ラウドルップ(かつてヴィッセル神戸でプレイ経験有り)
現役キープレイヤー: ヨン・ダール・トマソン(フェイエノールト)、ダニエル・アッガー(リバプール)

国内リーグ: デンマーク・スーペルリーガ(SASリーガ)
代表クラブ: FCコペンハーゲン、オールボーBK

 スカンジナビアの強豪スウェーデンを下し、大激戦となったグループA首位通過を決めた。ここ数年はビッグトーナメントから遠ざかっているが、92年のEUROでは優勝という番狂わせも演じている。北欧のチームらしく巨漢ぞろいだが高度な足元の技術を駆使したサッカーはお家芸といえる。成長著しいシモン・キアル(パレルモ)やニクラス・ベントナー(アーセナル)は大会を経て一気にブレイクする可能性も秘めている。代表最多得点に1と迫るトマソンやベスト8入りを果たした98年大会を知るマルティン・ヨルゲンセン(フィオレンティーナ)らベテランも健在。ダニッシュ・ダイナマイトの大爆発に期待したい。


国名: スイス連邦
首都: ベルン
人口: 約750万人

FIFAランク: 18位
W杯出場回数: 9度目(2大会連続)
初出場時成績: ベスト8(34年イタリア大会)
W杯最高成績: ベスト8(34年イタリア大会、38年フランス大会、54年スイス大会)
06年ドイツ大会成績: ベスト16

監督: オットマール・ヒッツフェルト(ドイツ)
愛称: ラ・ナティ
歴代名選手: アラン・ガイガー、アンドレ・アベグレン
現役キープレイヤー: アレクサンダー・フライ(バーゼル)、トランクィロ・バルネッタ(レバークーゼン)

国内リーグ: スイス・スーパーリーグ(Axpoスーパーリーグ)
代表クラブ: FCバーゼル、FCチューリヒ

 前回大会ではベスト16へ進出しながらも無失点のまま大会を去る(スコアレスドローによるPK戦で敗退)という珍記録を樹立した。今でこそ中堅国だが、W杯黎明期は2大会連続ベスト8へ進出するなど強国だった。永世中立国という土地柄もあり、トルコ系のギョクハン・インラー(ウディネーゼ)、コンゴ民主共和国出身のブライズ・エヌクフォ(トゥヴェンテ)、スペイン人の父とセルビア人の母を持つフィリップ・センデロス(アーセナル)など国際色豊かなのも特徴のひとつである。U−17W杯で優勝するなど近年はユース年代での活躍が目立っている。56年ぶりのベスト8進出で古豪復活となるか。


国名: セルビア共和国
首都: ベオグラード
人口: 約1000万人

FIFAランク: 20位
W杯出場回数: 11度目(2大会連続、ユーゴスラビア、セルビア・モンテネグロ時代を含む)
初出場時成績: 3位(30年ウルグアイ大会、ユーゴスラビア時代)
W杯最高成績: 3位(30年ウルグアイ大会、ユーゴスラビア時代)
06年ドイツW杯成績: グループステージ敗退(セルビア・モンテネグロ時代) 

監督: ラドミール・アンティッチ
愛称: ベリ・オルロヴィ(セルビア語で“白い鷲”の意味)
歴代名選手: ドラガン・ストイコビッチ(現名古屋グランパス監督)、プレドラグ・ミヤトビッチ
現役キープレイヤー: デヤン・スタンコビッチ(インテル)、ネマニャ・ヴィディッチ(マンチェスターU)

国内リーグ: セルビア・スーペルリーガ(メリディアン・スーペルリーガ)
代表クラブ: レッドスター・ベオグラード(かつて鈴木隆行が所属)、パルチザン・ベオグラード

 前回大会は死のグループに沈んだセルビア・モンテネグロ。大会後、同国は解体し、セルビアとモンテネグロに分裂した。主力選手のほとんどをそのまま引き継いだセルビアはEURO出場こそならなかったものの、W杯予選では10試合で22得点を叩き出した攻撃力を武器にフランスを押さえて首位通過を決めた。攻撃陣はキャプテンでもあるスタンコビッチの強烈なミドルシュートやセルビアンタワーの異名を持つニコラ・ジギッチ(バレンシア)の202センチの高さなど強力な武器を備えている。ヴィディッチを中心とした守備陣がいかに持ちこたえられるかが、セルビア躍進のカギとなりそうだ。


国名: イタリア共和国
首都: ローマ
人口: 約6000万人

FIFAランク: 4位
W杯出場回数: 17度目(13大会連続)
初出場時成績: 優勝(34年イタリア大会)
W杯最高成績: 優勝(34年イタリア大会、38年フランス大会、82年スペイン大会、06年ドイツ大会)
06年ドイツ大会成績: 優勝

監督: マルチェロ・リッピ
愛称: アズーリ(イタリア語で“青”の意味)
歴代名選手: パオロ・マルディーニ、ロベルト・バッジョ
現役キープレイヤー: ファビオ・カンナバーロ、ジャンルイジ・ブッフォン(ともにユベントス)

国内リーグ: セリエA
代表クラブ: インテル・ミラノ、ユベントス

 W杯のディフェンディングチャンピオンだがチーム状況は決して芳しくない。前回大会後リッピが勇退し、チームは新指揮官ロベルト・ドナドーニに託されたが、W杯との連覇を狙ったEUROではベスト8に終わる。この結果を受けドナドーニが辞任し、やむなく再登板の形になったリッピだが、こちらもコンフェデレーションズカップでエジプトに足元をすくわれ、グループステージ敗退という大失態を演じている。W杯出場こそ危なげなく決めたものの、国内でリッピに対する信頼は磐石と言い難い。W杯連覇に向けた道のりは前途多難だが、思えば06年は直前に起こった“カルチョ・スキャンダル”のショックを乗り越えての優勝だった。窮地に追い込まれた時のイタリアの強さは侮れない。


国名: ドイツ連邦共和国
首都: ベルリン
人口: 約8200万人

FIFAランク: 6位
W杯出場回数: 17度目(15大会連続、西ドイツ時代も含む)
初出場時成績: 3位(34年イタリア大会)
W杯最高成績: 優勝(54年スイス大会、74年西ドイツ大会、90年イタリア大会)
06年ドイツ大会成績: 3位

監督: ヨアヒム・レーブ
愛称: マンシャフト
歴代名選手: フランツ・ベッケンバウアー、オリバー・カーン
現役キープレイヤー: ミヒャエル・バラック(チェルシー)、バスティアン・シュバインシュタイガー(バイエルン・ミュンヘン)

国内リーグ: ブンデスリーガ
代表クラブ: バイエルン・ミュンヘン、VfLヴォルフスブルク(長谷部誠が所属)

「サッカーという競技は、最後にはドイツが勝つ」。ギャリー・リネカーの言葉通り、ビッグトーナメントでの勝負強さは折り紙つきだ。今大会、予選でも無敗で突破を決めた。メスト・エジルやマルコ・マリン(ともにブレーメン)ら若手の成長も著しく、大会へ向けて全てが順調に進んでいるように見えた。しかし、そんなドイツを悲劇が襲う。代表正GK候補の一人だったロベルト・エンケ(ハノーファー)が突然の自殺。実力派GKを失ったという戦力的ダメージ、それ以上にメンバーの一人を失ったことがチームに与える精神的ダメージの大きさは計り知れない。何よりも今はチームの精神面のケアが今は最優先だ。悲劇を乗り越え、本大会ではいつものタフな“ゲルマン・サッカー”を見せてほしい。


国名: スロヴァキア共和国
首都: ブラチスラヴァ
人口: 約540万人

FIFAランク: 34位
W杯出場回数: 初出場(チェコスロヴァキア時代を含めれば5大会ぶり9回目)
初出場時成績: 準優勝(34年イタリア大会、チェコスロヴァキア時代)
W杯最高成績: 準優勝(34年イタリア大会、62年チリ大会、チェコスロヴァキア時代)
06年ドイツ大会成績: 予選敗退

監督: ウラジミール・ヴァイス
愛称: The Fighting Jondas
歴代名選手: ヤーン・ポプルハール、カロル・ドビアシュ
現役キープレイヤー: マレク・ハムシク(ナポリ)、マルティン・シュクルテル(リバプール)

国内リーグ: ツォルゴン・リーガ
代表クラブ: アルトメディア・ペトルジャルカ、スロヴァン・ブラチスラヴァ

 93年の“ビロード離婚”によるチェコスロヴァキアの分裂に伴い、誕生したのがスロヴァキアである。そのためスロヴァキアサッカーの歴史は浅く、主力の中にも20代前半の選手が多い。卓越した得点感覚と創造性で今やナポリの中心的存在となったハムシク(22歳)、16歳でチェルシーに引き抜かれ、現在はオランダのトゥヴェンテで武者修行中のミロスラフ・ストフ(20歳)、監督と同名で実の息子のウラジミール・ヴァイス(マンチェスターC、19歳)はいずれも若くして代表の中心選手である。予選10試合で22得点は立派な数字だが、このうち10点は弱小国サンマリノ相手の2試合で稼いだもの。むしろ欧州予選突破チーム中最多の10失点の方が目を引く。若き才能を輝かせるためにも、最終ラインの踏ん張りは不可欠だ。


国名: フランス共和国
首都: パリ
人口: 6400万人

FIFAランク: 7位
W杯出場回数: 13度目(4大会連続)
初出場時成績: グループリーグ敗退(30年ウルグアイ大会)
W杯最高成績: 優勝(98年フランス大会)
06年ドイツW杯成績: 準優勝

監督: レイモン・ドメネク
愛称: レ・ブルー
歴代名選手: ミシェル・プラティニ、ジネディーヌ・ジダン
現役キープレイヤー: ヨアン・グルキュフ(ボルドー)、フランク・リベリ(バイエルン・ミュンヘン)

国内リーグ: リーグ・アン
代表クラブ: オリンピック・リヨン、ジロンダン・ボルドー

 ドイツ大会ファイナリストでありながらEUROでは1勝も挙げられず惨敗。W杯予選でもセルビアの後塵を拝し、プレーオフではアイルランドの粘りに苦しめられた末、最後は疑わしい判定にも助けられて何とか本大会出場を決めるという体たらくである。ヨーロッパ予選で9失点を喫したDFラインのテコ入れは急務。特にCBはウィリアム・ギャラス(アーセナル)のパートナーをが固定できず、守備の連係向上もままならない状況だ。ティエリ・アンリ(バルセロナ)を筆頭に世界屈指のタレントをそろえる攻撃陣も、代表では勝負弱さが目立つ。とはいえ、ジダンの後継者としてグルキュフが成長したのは心強い。世代交代の進むフランスの命運はこの若き司令塔が握っている。


国名: ポルトガル共和国
首都: リスボン
人口: 約1000万人

FIFAランク: 5位
W杯出場回数: 5度目(3大会連続)
初出場時成績: 3位(66年イングランド大会)
W杯最高成績: 3位(66年イングランド大会)
06年ドイツ大会成績: ベスト4

監督: カルロス・ケイロス
愛称: セレソン・ダス・キナス(ポルトガル国旗の中央に描かれる5つの盾に由来)
歴代名選手: エウゼビオ、ルイス・フィーゴ
現役キープレイヤー: クリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリー)、リカルド・カルバーリョ(チェルシー)

国内リーグ: スーペル・リーガ(リーガ・サグレス)
代表クラブ: FCポルト、ベンフィカ

 ベスト4進出を果たした前回大会終了後、フィーゴとペドロ・パウレタが代表を引退。一時代を築いた英雄たちの引退によりC・ロナウドを中心とした新たな時代に入ったが、浮き彫りとなった課題は決定力不足だ。W杯予選では10試合で17得点と苦しみ、予選終盤に慌ててリエヂソン(スポルティング)をブラジルから帰化させてなんとか急場を凌いだ格好となった。C・ロナウドをはじめ、シモン・サブロサ(アトレティコ・マドリー)、ナニ(マンチェスターU)などウイングには相変わらず好タレントが溢れているだけにセンターフォワードの物足りなさは際立つ。一方、カルバーリョを中心とした守備陣は予選10試合で5失点と磐石である。かつて、国際大会で上位進出を成し遂げたポルトガル代表にはエウゼビオやパウレタというストライカーの存在があった。新たな時代を担うストライカーの台頭こそが、ポルトガル代表躍進のカギとなる。


国名: ギリシャ共和国
首都: アテネ
人口: 1100万人

FIFAランク: 12位
W杯出場回数: 2度目
初出場時成績: グループステージ敗退(94年アメリカ大会)
W杯最高成績: グループステージ敗退(94年アメリカ大会)
06年ドイツ大会成績: 予選敗退

監督: オットー・レーハーゲル(ドイツ)
愛称: ピラティコ(ギリシャ語で“海賊船”の意味)
歴代名選手: テオドロス・ザゴラキス、ニコス・マフラス
現役キープレイヤー: テオファニス・ゲカス(レバークーゼン)、ゲオルギオス・カラグーニス(パナシナイコス)

国内リーグ: ギリシャ・スーパーリーグ
代表クラブ: パナシナイコス、オリンピアコス

 EURO2004での大金星が記憶に新しいギリシャだが、W杯出場はこれが2度目の出場となる。屈強な選手たちがゴール前を固め、数少ないカウンターやセットプレーのチャンスを活かすというEURO優勝時のスタイルは今も変わらない。予選を通じて失点は10と守備に重きを置くチームにしてはやや多いが、それだけ勝負強いということでもある。セットプレーやクロスで大きな武器になるのはアンゲロス・ハリステアス(ニュルンベルク)やゲオルギオス・サマラス(セルティック)ら長身FWだ。抜群の得点感覚を持つゲカスは10得点を挙げて欧州予選得点王に輝いた。ギリシャ代表にあって数少ないテクニシャンのカラグーニスのフリーキックも貴重な得点源の一つだ。あまりに現実主義的なスタイルのため魅力には欠けるが、しぶとく勝ち残るギリシャのサッカーは必見。南アフリカでもダークホースの期待がかかる。


国名: スロベニア共和国
首都: リュブリュナ
人口: 約200万人

FIFAランク: 33位
W杯出場回数: 2度目
初出場時成績: グループリーグ敗退(02年日韓大会)
W杯最高成績: グループリーグ敗退(02年日韓大会)
06年ドイツ大会成績: 予選敗退

監督: マチャジュ・ケック
愛称: ズマイチキ(スロベニア語で“小さな竜”の意味)
歴代名選手: ズラトコ・ザホビッチ、アミール・カーリッチ(かつてガンバ大阪に所属)
現役キープレイヤー: サミール・ハンダノビッチ(ウディネーゼ)、ミリボイェ・ノバコビッチ(ケルン)

国内リーグ: 1.SNL(プルヴァ・リーガ・テレコム・スロヴェニエ)
代表クラブ: NKマリボル、NKオリンピア・リュブリャナ

 02年日韓大会以来の国際トーナメント進出を果たしたスロベニア。プレーオフのロシア戦終了後にはボルト・パホル首相がロッカールームで選手のスパイクを磨いて祝福するなど、国内でも大きな盛り上がりを見せている。決してタレントに恵まれないスロベニアを支えたのはGKのハンダノビッチ。イタリアのウディネーゼで守護神を勤めるハンダノビッチは予選10試合でわずか4失点。6度の完封を記録し、2点以上失った試合はゼロと出色の安定感を誇った。けっして強豪とはいえないスロベニアでこの数字は驚異的である。攻撃のカギを握るノバコビッチも10試合で5点を記録するなど小国のエースとして十分な働きを見せている。16歳でインテルに引き抜かれたという経歴をもつレネ・クルヒン(インテル)も楽しみな存在だ。何より直接対決で名将ヒディング率いるロシアに勝ったという経験は大きな自身になるはず。南アフリカで東欧の小国が起こす旋風に期待したい。

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【南米】

国名: アルゼンチン共和国
首都: ブエノスアイレス
人口: 約4000万人

FIFAランク: 8位
W杯出場回数: 15度目(10大会連続)
初出場時成績: 準優勝(30年ウルグアイ大会)
W杯最高成績: 優勝(78年アルゼンチン大会、86年メキシコ大会)
06年ドイツ大会成績: ベスト8

監督: ディエゴ・マラドーナ
愛称: セレステ・イ・ブランコ(スペイン語で“水色と白”の意味)
歴代名選手: ダニエル・パサレラ、ディエゴ・マラドーナ
現役キープレイヤー: リオネル・メッシ(バルセロナ)、ハビエル・マスチェラーノ(リバプール)

国内リーグ: プリメーラ・ディビシオン
代表クラブ: リバープレート、ボカ・ジュニオール

 マラドーナを監督に据え、迷走に迷走を重ねたアルゼンチン。奇跡に近い形で何とか予選は突破したものの、マラドーナの行く手には茨の道が待ち受けている。国内ではマラドーナ解任論が8割を超え、本大会を監督として迎えるかどうかは微妙な状況だ。メッシを中心としたチーム作りも失敗に終わり、ここから本大会に向けてまた一からチームを作り直さねばならないが、予選を通じて全くチームに戦術を植え付けられなかったマラドーナに、果たしてそれが可能なのだろうか。現在のチーム状況やドタバタぶりを見るにつけどうしても悲観的になってしまうが、今や世界最高の選手となったメッシを筆頭に他の強豪国らが羨むようなタレントを擁していることも確かだ。何よりマラドーナは現役時代数々の奇跡を起こした。監督となった今、再びW杯の舞台で輝くことができるのか。


国名: チリ共和国
首都: サンティアゴ
人口: 約1700万人

FIFAランク: 17位
W杯出場回数: 8度目
初出場時成績: グループステージ敗退(30年ウルグアイ大会)
W杯最高成績: 3位(62年チリ大会)
06年ドイツ大会成績: 予選敗退

監督: マルセロ・ビエルサ(アルゼンチン)
愛称: ラ・ロハ(スペイン語で“赤”の意味)
歴代名選手: マルセロ・サラス、イバン・サモラーノ
現役キープレイヤー: マティアス・フェルナンデス(スポルティング)、アレクシス・サンチェス(ウディネーゼ)

国内リーグ: プリメーラ・ディビシオン
代表クラブ: ウニベルシダ・デ・チリ、CSDコロコロ

 アルゼンチン人の名将ビエルサを招聘し生まれ変わったチリは、南米予選を2位でフィニッシュした。南米予選18試合で32得点はブラジルの33点に次ぐ2番目の成績で、10ゴールを挙げたウンベルト・スアソ(モンテレイ)は同予選得点王に輝いた。05、07のU−20W杯で活躍した若手主体のチームにはマティアス・フェルナンデス(スポルティング)、アレクシス・サンチェス(ウディネーゼ)など若くしてヨーロッパの名門クラブへ引き抜かれていった選手も多い。守備面に一抹の不安(10試合中22失点)が残るが、ビエルサ仕込みのアタッキングフットボールはそれを補って余りある魅力がある。98年以来のベスト16進出を目指したい。


国名: ウルグアイ東方共和国
首都: モンテビデオ
人口: 330万人

FIFAランク: 19位
W杯出場回数: 11度目
初出場時成績: 優勝(30年ウルグアイ大会)
W杯最高成績: 優勝(30年ウルグアイ大会、50年ブラジル大会)
06年ドイツ大会成績: 予選敗退

監督: オスカル・タバレス
愛称: ロス・チャルーアス(ウルグアイの原住民族“チャルーア族”に由来)
歴代名選手: エンツォ・フランチェスコリ、アルバロ・レコバ(パニオニオス)
現役キープレイヤー: ディエゴ・フォルラン(アトレティコ・マドリー)、ルイス・スアーレス(アヤックス)

国内リーグ: カンピオナトス・ウルグアヨス
代表クラブ: ディフェンソール・スポルティング、ナシオナル・モンテビデオ

 最後の出場国となったのは古豪ウルグアイだった。第1回目のW杯を開催してチャンピオンに輝き、50年大会では聖地マラカナでブラジルを破って優勝を決めるなど過去の栄光も今は昔。90年以降は南米予選突破すらままならない状態である。とはいえ、世界有数のFW原産国である点は今も昔も変わらない。08−09シーズン、リーグ戦で2人合わせて54得点を記録したスアーレスとフォルランの2トップは世界屈指の破壊力を誇る。セリエAで14得点を記録したエディンソン・カバーニ(パレルモ)をベンチに座らせるほどのタレント力だ。なによりウルグアイの持ち味は最後まで戦い抜く闘争心。それはヨーロッパからの侵略に決して屈せず、最後の1人になるまで戦い抜いたウルグアイの原住民チャルーア族の精神に通じるものがある。南アフリカでも彼らの気概溢れるウルグアイ・サッカーを見せ付け、古豪復活へ向けた一歩を踏み出してほしい。

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【北中米カリブ海】

国名: アメリカ合衆国
首都: ワシントンD.C.
人口: 約3億1000万人

FIFAランク: 14位
W杯出場回数: 9度目(6大会連続)
初出場時成績: 3位(30年ウルグアイ大会)
W杯最高成績: 3位(30年ウルグアイ大会)
06年ドイツ大会成績: グループステージ敗退

監督: ボブ・ブラッドリー
愛称: スターズ・アンド・ストライプス(英語で“星条旗”の意味)
歴代名選手: ブライアン・マクブライド、バート・パテナウデ
現役キープレイヤー: ランドン・ドノバン(LAギャラクシー)、クリント・デンプシー(フルアム)

国内リーグ: メジャーリーグサッカー
代表クラブ: LAギャラクシー、コロンバス・クルー

 コンフェデレーションズカップ準決勝でスペインの連勝を15で止め、決勝ではブラジル相手に善戦して準優勝に輝いた。この躍進で「サッカー不毛の地」の呼び名は完全に払拭したと言ってよいだろう。ティム・ハワード(エバートン)、オグチ・オニェウ(ミラン)を中心とした屈強な守備陣がゴールを死守し、マイケル・ブラッドリー(ボルシアMG、監督の実子)のパスを合図にドノバン、デンプシー、ジョジー・アルティドール(ハル)らが一気に相手ゴールへ襲い掛かるカウンターアタックは見る者を圧倒する。コンフェデ杯で活躍したチャーリー・デイビス(ソショー)が交通事故で重傷を負ってW杯は絶望的、オニェウも右膝靱帯断裂で本大会への影響が心配されるなどややネガティブなニュースが続いているが、本大会でも楽しみな存在だ。


国名: メキシコ合衆国
首都: メキシコシティ
人口: 約1億人

FIFAランク: 15位
W杯出場回数: 14度目(5大会連続)
初出場時成績: グループステージ敗退
W杯最高成績: ベスト8(70年、86年メキシコ大会)
06年ドイツ大会成績: ベスト16

監督: ハビエル・アギーレ
愛称: ロス・トリコロレス(国旗が3色であることに因む)
歴代名選手: ウーゴ・サンチェス、ホルヘ・カンポス
現役キープレイヤー: ラファエル・マルケス(バルセロナ)、ホセ・アンドレス・グアルダード(デポルティボ)

国内リーグ: プリメーラ・ディビシオン
代表クラブ: CFパチューカ、クルス・アスール

 メキシコはここ4大会連続でベスト16入りを果たしており、南米やヨーロッパの強国に次ぐポジションを占めている。国内リーグは南北アメリカ大陸をあわせてもトップクラスの資金力を誇り、アルゼンチンを中心とした南米の強国の選手も多く流入しているため非常にハイレベルだ。またギジェルモ・フランコ(ウエストハム)のように、母国で出場機会を得られなかった選手がそのままメキシコ代表入りするケースも少なくない。ラテン系特有のボールテクニックとメキシコらしい組織力を駆使したパスサッカーが持ち味で、ジオバニ・ドス・サントス(トッテナム)やグアルダードらがドリブルや個人技で攻撃に彩りを加える。4大会続けて立ちはだかる“ベスト8の壁”を突破したい。


国名: ホンジュラス共和国
首都: テグシガルパ
人口: 約740万人

FIFAランク: 38位
W杯出場回数: 2度目
初出場時成績: 1次リーグ敗退(82年スペイン大会)
W杯最高成績: 1次リーグ敗退(82年スペイン大会)
06年ドイツ大会成績: 予選敗退

監督: レイナルド・ルエダ(コロンビア)
愛称: ロス・カトラチョス(カトラチョは“ホンジュラス人”のスペイン語の愛称)
歴代名選手: エクトル・セラージャ
現役キープレイヤー: ウィルソン・パラシオス(トッテナム)、アマド・ゲバラ(トロント)

国内リーグ: リーガ・ナシオナル
代表クラブ: デポルティーボ・オリンピア、ディポルティーボ・モテグア

 コスタリカとのデッドヒートを制し、82年のスペイン大会以来、実に28年ぶりのW杯出場を勝ち取った。69年にはエルサルバドルとの間でW杯予選での試合をきっかけに戦争が勃発するなどサッカー熱は非常に熱い。ダビド・スアゾ(インテル)やパラシオスなど、近年はヨーロッパの強豪クラブにもホンジュラス人選手が進出している。キャプテンで代表最多キャップのアマド・ゲバラと代表最多得点のカルロス・パボンの両ベテランがチームの精神的柱だ。爆発的なスピードを持つスアゾや、豊富な運動量を持つパラシオスがキーマンとなる。北中米カリブ最終予選10試合中11失点は、メキシコやアメリカを抑えて最少。高い身体能力を生かしたカウンターを武器にW杯初勝利を目指す。


【アフリカ】

国名: コートジボワール共和国
首都: アビジャン
人口: 約2100万人

FIFAランク: 16位
W杯出場回数: 2度目(2大会連続)
初出場時成績: グループステージ敗退(06年ドイツ大会)
W杯最高成績: 本大会出場(06年ドイツ大会)
06年ドイツ大会成績: グループステージ敗退

監督: ヴァヒド・ハリルホジッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
愛称: エレファンツ(フランス語、英語で“象”の意味)
現役キープレイヤー: ディディエ・ドログバ(チェルシー)、ディディエ・ゾコラ(セビージャ)

国内リーグ: コートジボワール・プレミア・ディビジョン
代表クラブ: ASECミモザ、アフリカ・スポーツ・ナショナル

 前回大会では躍進が期待されたが、組分けに恵まれずグループステージ敗退に終わった。今でこそアフリカ屈指の強豪国だが、コートジボワールがフランスから独立したのはいわゆる“アフリカの年”の1960年で、サッカー界でも比較的新興国である。持ち味はフィジカルを生かしたプレイだ。アフリカ予選6試合で19点という数字はまさに驚異的。大エースのドログバやサロモン・カルー(チェルシー)を中心とした攻撃陣の破壊力を物語る。コロ(マンチェスターC)とヤヤ(バルセロナ)のトゥーレ兄弟を中心とした守備陣も同予選4失点と奮闘している。中盤にも代表最多キャップを誇るゾコラやエヌドリ・ロマリッチ(セビージャ)などフィジカル自慢が名を連ね、攻守に渡ってチームに貢献する。何より南アフリカ開催は大きなアドバンテージ、アフリカ勢初のベスト4も射程圏内だ。


国名: ナイジェリア連邦共和国
首都: アブジャ
人口: 約1億5000万人

FIFAランク: 22位
W杯出場回数: 4度目
初出場時成績: ベスト16(94年アメリカ大会)
W杯最高成績: ベスト16(94年アメリカ大会、98年フランス大会)
06年ワールドカップ成績: 予選敗退

監督: シャイブ・アモドゥ
愛称: スーパー・イーグルス
歴代名選手: フィニディ・ジョージ、ジェイジェイ・オコチャ
現役キープレイヤー: ジョン・オビ・ミケル(チェルシー)、ヤクブ・アイェグベニ(エバートン)

国内リーグ: ナイジェリアン・プレミアリーグ
代表クラブ: エニンバ、オーシャンボーイズFC

 絶望的な状況から大逆転で本大会出場を勝ちとったナイジェリア。アフリカ有数の強豪国でポテンシャルの高さは誰もが認めるところだが、調子の波が大きく格下相手の取りこぼしが多いのもこの国の特徴である。予選6試合で9得点はやや物足りない数字だが、FWのタレント力は世界でも屈指。速さのオバフェミ・マルティンス(ヴォルフスブルグ)、強さのヤクブ、高さのヌワンコ・カヌ(ポーツマス)など攻撃のバリエーションにも富んでいる。このFW陣を中盤で操るのがミケル。フィジカル、テクニック共に優れた若き司令塔が攻撃のカギを握る。また、カヌはW杯終了後の代表引退を表明した。長らく代表を支えてきたキャプテンのためにも、同国初のベスト8進出を目指したい。


国名: カメルーン共和国
首都: ヤウンデ
人口: 約1900万人

FIFAランク: 11位
W杯出場回数: 6度目
初出場時成績: 1次リーグ敗退
W杯最高成績: ベスト8(90年イタリア大会)
06年ドイツW杯成績: 予選敗退

監督: ポール・ル・グエン(フランス)
愛称: 不屈のライオン
歴代名選手: ロジェ・ミラ、トーマス・ヌコノ
現役キープレイヤー: サミュエル・エトオ(インテル)、ジャン・マクーン(リヨン)

国内リーグ: カメルーン・プレミアディビジョン(MTNエリート・ワン)
代表クラブ: コトンスポール・ガルア、キャノン・ヤウンデ

 過去W杯でアフリカ勢では唯一のベスト8進出を果たしているのがカメルーンである。カメルーンの独立は1960年(アフリカの年)だが、6度目となるW杯出場はアフリカ勢最多で、アフリカネイションズカップでもエジプトやガーナと並んで最多となる4度の優勝に輝くなど強豪国である。昨年のUEFAチャンピオンズリーグ優勝に大きく貢献したエトオは代表ではキャプテンとしてチームを引っ張る。何より特筆すべきなのがアフリカ最終予選6試合で僅か2失点の守備力。いまやリーガ・エスパニョーラ屈指の好GKに成長したイドリス・カメニ(エスパニョール)、代表最多キャップを数えるCBリゴベル・ソング(トラブゾンスポル)と、その甥のアレクサンドル・ソング(アーセナル)が築く砦は簡単には崩せない。アフリカ開催の追い風を背に、目標は2度目のベスト8進出。その先にはW杯優勝の2文字も見えてくる。


国名: アルジェリア民主人民共和国
首都: アルジェ
人口: 約3500万人

FIFAランク: 28位
W杯出場回数: 3度目
初出場時成績: 1次リーグ敗退(82年スペイン大会)
W杯最高成績: 1次リーグ敗退(82年スペイン大会、86年メキシコ大会)
06年ドイツ大会成績: 予選敗退

監督: ラバー・サーダン
愛称: フェネック
歴代名選手: ラバー・マジェール、ラフダル・ベルミ
現役キープレイヤー: ナディル・ベラジ(ポーツマス)、カリム・ジアニ(ヴォルフスブルグ)

国内リーグ: アルジェリア・チャンピオナ・ナシオナル
代表クラブ: JSカビリー、USMアルジェ

 エジプトとのプレーオフを制し、24年ぶりとなる本大会出場を決めた。アラブ系の北アフリカ諸国はブラック・アフリカ諸国と異なり、足元の技術の高さが武器だ。アルジェリアもその例に漏れず、ジネディーヌ・ジダンを筆頭にフランス代表にも多くのアルジェリア系選手がいる。ベラジやジアニは巧みなフェイントを駆使してサイドを駆け上がる技巧派ドリブラーだ。課題は決定力不足。プレーオフも含めたアフリカ最終予選7試合で10ゴール、アフリカ予選通しての最多得点者は3ゴールを記録したジアニ、ラフィク・サイフィ(アル・ホール)、そしてCBを務めるアンター・ヤヒア(ボーフム)とやや寂しい。高度なテクニックもゴールに結びつかなければ宝の持ち腐れ。82年大会では西ドイツから金星を挙げるなど楽しみなチームだけに、FW陣の奮起が期待される。

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【オセアニア】

国名: ニュージーランド
首都: ウェリントン
人口: 約400万人

FIFAランク: 77位
W杯出場回数: 2度目
初出場時成績: 1次リーグ敗退(82年スペイン大会)
W杯最高成績: 1次リーグ敗退(82年スペイン大会)
06年ドイツW杯成績: 予選敗退

監督: リッキー・ハーバート
愛称: オールホワイツ(ラグビーの“オールブラッグス”にちなむ)
歴代名選手: ウィントン・ルーファー(かつてジェフ市原に所属)、ヴォーン・コベニー
現役キープレイヤー: クリス・キレン(セルティック)、ライアン・ネルセン(ブラックバーン)

国内リーグ: ニュージーランド・フットボールチャンピオンシップ
代表クラブ: ワイタケレ・ユナイテッド、オークランド・シティ

 大陸間プレーオフでバーレーンを下し、W杯への切符をつかみ取ったニュージーランド。同国ラグビー代表“オールブラッグス”がラグビーW杯初代チャンピオンで世界にその名を轟かせる強豪であるのとは対照的に、“オールホワイツ”のW杯本大会出場は実に28年ぶりとなる。代表は主に国内組で構成されているが、その中にあって海外経験豊富なキレンやネルセンの存在は貴重。特に主将も務めるネルセンはプレミアリーグで数々のFWと対峙してきた経験を持つだけに、守備陣の大黒柱として期待がかかる。17歳でプレミアデビューを飾ったクリス・ウッド(ウエストブロム)は今後のニュージーランドサッカーを担う逸材だけに注目したい。またマオリの伝統舞踊ハカのパフォーマンスも必見だ。

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