「おぉ、これは絨毯の上を歩いているみたいだなぁ」
 編集長が驚きの声をあげたのは真夏の昼下がりでした。
(写真:最新モデルを履き、うれしそうな編集長)

 PCサイト「SPORTS COMMUNICATIONS」のタイアップコーナーの取材でadidasを訪れた時のことです。この日の目的はランナーに大人気のランニングシューズ「boost」の秘密を探るため。ソールに反発力と衝撃吸収性を兼ね備えた新素材「boostフォーム」が搭載され、従来にない履き心地が体感できるとの評判でした。

 ひとしきり話を聞き、担当者から「せっかくなんで履いてみませんか」との提案。編集長には派手なピンクのboostが用意されました。

「足にバネがついた感じがする。これでジョギングしたら、速く走れそうだな」
 すっかりご満悦の編集長。実は健康維持のため、ここ数年、時間をみつけては近所を走っています。

「でもさ、マイペースでゆっくり走っていると、知っている人から声かけられるんだよな。“二宮さ~ん、お散歩ですか”って……」
 笑うに笑えないエピソードを披露した編集長は、このシューズで“ジョギング”であることをアピールする千載一遇のチャンスを得たようです。

「走って帰りたいけど、この炎天下じゃ熱中症になっちゃうな」
 最強のアイテムを足に装着し、編集長はジョギングができる日を心待ちにしていました。

 それから1カ月後……。
「やっぱ、あのシューズはいいぞ」
 編集長の弾んだ声を聞いたのは秋の入口にさしかかった日のことでした。

「走り出すとピョンピョンはねるから、どんどん前に進む。今回はちゃんと“ジョギング、頑張ってください”と言われたよ」
 機能性はもちろん、カラフルなデザインもジョギングをしている雰囲気を醸し出すのでしょう。何事も形から、とは言い得て妙です。

 そんな編集長に触発され、僕もboostを履いてジョギングを始めることにしました。中学時代は陸上部で長距離が専門。田舎の小さな町内ながら、マラソン大会はトップの成績を収めたこともあります。

 しかし、そんな栄光も今や昔。この仕事を始めてからは走ることはほとんどなくなり、学生時代のスリムな体型もメタボまっしぐらです。「健康診断も控え、少しはダイエットしないとな……」。必要に迫られたとはいえ、この機会を逃さないわけにはいきません。

 編集長のピンクに対抗し、僕がチョイスしたのはスカイブルーのシューズ。しかも同じ色のトレーニングウェアも購入し、見た目だけは気合十分です。試しに会社へ履いていくと、「お、その色、目立つな」と編集長からもすぐに気づいてもらいました。

 ただ……10月の声を聞き、僕のboostは下駄箱の住人と化しつつあります。ここだけの話、ついつい調子に乗って、急に走ったため、激しい筋肉痛に襲われてしまったのです。

「イテテテ。ジョギングの前に体力つけないとな……」
 形から入ったのに、これでは、すっかり形無しです。ジョギングの秋との位置付けは、あっさり3日で方針転換。ジョギングを中断している間、食欲の秋の訪れに、またメタボ化が進みつつある今日この頃です……。

(スタッフI)
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