昨年あたりから、ひそかにハマっている旅番組があります。それはNHK BSプレミアムでやっている「にっぽん縦断こころ旅」。俳優の火野正平さんが、愛車の「チャリオ」で視聴者から寄せられたお手紙に書かれた全国のこころの風景を巡るという内容です。

 日頃、仕事であちこちに出かけるものの、日帰りや一泊がほとんど。観光らしい観光もできないまま、東京に戻ってくるため、番組を見て「へぇ~、こんな場所があるのか」と旅気分を味わっています。

 おまけに、行く先々での火野さんの現地の人たち(特にべっぴんさん!)との交流が自然体で、距離の縮め方がうまい! さすが、かつてはプレイボーイとして鳴らしただけのことはあるお方です。

 さりげないやりとりの中で、相手を警戒させることなく、おばあちゃんから淑女、女子高生までナンパ、もといトークを展開するテクニックは、人から話を引き出す仕事をしている身としては非常に参考になります。

 番組は朝7時45分~の14分間の“朝版”と、夜19時~の29分間の“とうちゃこ版”(火野さんはなぜか到着のことを「とうちゃこ」と言うため)。朝は弱く、夜は仕事のため、リアルタイムではなかなか観られず、HDDに録画して夜中や休日にまとめて見るのが習慣になっています。

 現在、番組は夏休み中のため、昼の時間帯に、今年の春の旅(愛知~近畿~北陸~東北~北海道)が再放送されています。また9月からは大阪から山陰、九州・沖縄を巡る秋の旅が始まるとか。僕もこころ旅に刺激を受けて、ダイエットと体力づくりを兼ね、自転車を買ってプチ旅をしてみようかと思っているほどです。

 さて、ある日のこと、編集長の書斎に入ると、いつもはスポーツ中継が流れていることの多いテレビに、火野さんが「ハァハァ」言いながら、必死にチャリオをこぐシーンが映し出されていました。

「編集長、こころ旅、観ているんですか」
「あぁ、結構、観ているよ。僕も全国回っているけど、意外と知らないところが多くておもしろいから」

 それは初耳です。編集長もこころ旅ファンだったとは! こころ旅は、この1月で番組スタート3年目にして47都道府県をすべて回りましたが、編集長は既に取材や講演などで全都道府県を制覇済。たくさんの町を訪れたことのある編集長にとっても、番組を見て新たな発見があるようです。

 そういえば、こころ旅の火野さんと編集長には、ある共通項があるように感じます。編集長もインタビューの際、初対面の人でも自然体で距離を縮め、うまく話を引き出します。親ほど年の離れた御年配の方でも、子供のような若手選手でも、それは変わりません。   
 
 以前、編集長にさりげなく話を聞きだす秘訣を訊ねると、こんな答えが返ってきました。
「こちらが聞きたいことを押しつけるんじゃなくて、相手に気持ちよく話してもらうことを心がけるんだね。もちろん、ある程度の誘導は必要だけど、基本的に相手の話を遮っちゃいけない。こちらが1つ話をして、相手が10しゃべってくれるのが一番なんだから」

 確かに、その通りです。「あれも聞きたい」「これも聞きたい」という気持ちが出過ぎてしまうと、相手がきちんと話をしてくれる前に次の話題に移ってしまい、後からインタビューを聞き返すと薄っぺらいやりとりに終始しているケースはよくあります。

 自分中心の発想ではなく、相手をうまく立てる。それができるからこそ、火野さんも編集長も誰とでも会話が弾むのでしょう。

「ということは編集長も火野正平ばりのプレイボーイというわけですね(笑)」
 ついつい、そんな冗談を飛ばすと、編集長からキツイ一言が返ってきました。

「そういう品のないこと言っているから、いつまで経ってもモテないんだよ!」

 スミマセン。火野さんと編集長を見習って、プレイボーイ、いやいや、仕事のできる人間を目指して、まじめに精進致します……。

(スタッフI)

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