15日、川崎フロンターレはフランスリーグアン・レンヌに所属していた稲本潤一の完全移籍を発表し、稲本が入団会見に臨んだ。稲本のJリーグ復帰は2001年ガンバ大阪以来9年ぶりとなる。背番号はフランクフルト時代にもつけていた「20」に決定した。
(写真:ユニフォーム姿をお披露目する稲本)
 多くの報道陣とサポーターが詰め掛けた川崎フロンターレのホーム・等々力競技場に稲本は姿を現した。記者会見には水色のネクタイを着用しつつスーツで臨み、競技場のピッチへ場所を移したのちサポーターの前でユニフォーム姿を披露した。

 21歳で英プレミアリーグ・アーセナルへ移籍した稲本も昨年9月で30歳となった。「海外に移籍する前から30歳で日本に戻ってこようと考えていた。コンディションもベストの状態でJリーグに復帰したかった」とこの時期に日本へ戻ってきた理由を明かした。

 フロンターレへの移籍を決意したのは稲本のプレースタイルとクラブの姿勢が合致するということ。各クラブのプレーをDVDでチェックした上で川崎への移籍を希望した。「前へすごく速いサッカーをやっている。自分の特長であるボールを高い位置で取ってから前に出すスタイルが生かせる」とフロンターレのサッカーを分析した上で、「自分が日本にいた頃はそんなに強くなかったが、ここ2、3年で急激に力をつけた印象があるので、自分の加入でタイトルを取れるようにがんばりたい」と今シーズンに向けた意気込みを語った。

 稲本の復帰は、もちろん年齢だけの問題ではない。半年後に行なわれるW杯の代表入りに向けても国内でプレーすることは大きなアドバンテージとなる。「常に代表合宿に参加できる点では国内の方が有利だと思う。リーグ戦に出場すれば監督に観て貰う機会も増え、代表だけを考えれば有利でしょう」と本人も語ったように、国内組だからこその利点もある。9年間という海外での経験も加味される稲本にとって、絶好のタイミングでの日本復帰となった。

 先日発表された1月末からの代表合宿のメンバーに稲本の名前はなかったが、川崎との契約が正式に結ばれたため追加招集される可能性が高い。今回の合宿には同年代の小笠原満男(鹿島)も3年ぶりに代表復帰を果たしており、南アフリカでの本番に向け激しいサバイバルが展開しそうだ。

 代表でも中盤を組む中村憲剛とコンビを組むことになる。記者から「(今回の加入について)中村憲とはどんな話をしたか?」との質問が出た際は「電話番号を知らないので、まだ話していません(笑)」と答えたものの、「憲剛はFWに近いところでプレーすることが一番いいので、高い位置でプレーさせてあげられるようにしたい」と中盤の底から超攻撃的布陣を支える構えだ。

 記者会見後に行なわれたユニフォームのお披露目ではスタンドに集まった200名ほどのサポーターの前で背番号20の水色のユニフォームを披露した。詰め掛けたファンに向け「日本でのプレーを楽しみにしています。期待の大きさを感じるのでそれを楽しみながら応えられるようにがんばっていきます」と挨拶した。
(写真:開放されたスタンドには多くのサポーターが集まり稲本を歓迎した)

 ここ2シーズン、あと僅かのところでタイトルを逃し続けた川崎にとって、経験豊富な稲本の加入は心強い補強になった。サッカーの中心である欧州シーンで培った経験と屈強なプレーヤーたちに揉まれたメンタルの強さでクラブを悲願のタイトルへ導くことができるか。さらにはW杯の舞台で3たび中盤の底から日本代表を鼓舞することになるのか。30歳を迎えた稲本潤一の新たな挑戦に注目が集まっている。