2日、キリンチャレンジカップ2010が大分・九州石油ドームで行なわれ、日本代表はベネズエラ代表と対戦した。国内組のみで臨んだ試合では、小笠原満男(鹿島)が06年ドイツW杯以来となる代表戦復帰を果たした。日本は序盤からボールをキープするものの、ゴール前での見せ場を作ることはできず前半を0−0で折り返す。後半も前線に起点ができずチャンスを生み出せない中、13分に平山相太(F東京)らを投入する。しかし、その後も攻め手を欠いたまま時間は経過し、ワールドカップイヤーの国内初戦をスコアレスドローで終えた。

 ボールを支配するも決定機は皆無(九石ド)
日本代表 0−0 ベネズエラ代表
 6日から開幕する東アジア選手権に先立って行なわれた今回のキリンチャレンジカップ。南アW杯南米予選で8位に終わったベネズエラを相手に、日本は1点も奪うことができなかった。ゴールを奪えないだけでなく、得点の気配すら感じることのできない試合となり、ワールドカップイヤーの幕開けとしては不安と不満の残る国内初戦となった。

 小笠原の復帰で注目された中盤では、遠藤保仁(G大阪)、中村憲剛(川崎)とこれまでのレギュラー格に加え、稲本潤一(川崎)と小笠原が先発出場した。大久保嘉人(神戸)もMF登録ではあったが、実質的には岡崎慎司(清水)との2トップという形で試合に臨んだ。

 果敢にプレスをかけてくるベネズエラ相手に、日本はセンターライン付近ではボールをキープすることができた。しかし、そこから先、前線へボールが供給される場面は少なく、ゴール前で相手へ脅威を与える選手がいなかった。
 中盤がボールを持ってもターゲットがいないため、すぐに相手DFに取り囲まれ最終ラインまでボールを戻すシーンも目立った。中盤の底に位置するはずの遠藤が最終ラインにまで下がらなければボールに触れることができない。繋がるパスは横方向のものばかりで、苦しまぎれに出される縦へのロングボールはことごとく相手にクリアされた。
 中盤に小笠原、中村憲、遠藤というパサーが並んだため、受け手となる選手がいない。本来はパスの送り先となる大久保、岡崎もサイドへ流れる動きが多く、攻めの形ができなかった。シュートを何本か放つものの、その多くは中盤からのミドルシュート。岡崎が前を向いてシュートを打つ場面は全くなかった。

 後半13分、ターゲットとなりうる平山を投入すると状況は多少好転した。身長のある選手がゴール前に入ることで、2列目の選手もペナルティエリアに侵入する時間ができ、シュートチャンスがいくつか生まれた。それでも、ゴール前で決定的なシーンを作るには至らず、90分間が過ぎ無得点のまま試合を終えた。

 収穫がほとんどない中、課題ばかりが目立つ試合となった。長いシーズンオフを過ごし、2010年初めての試合だったことを考慮しても、選手たちの試合勘は90分間鈍ったままだった。攻撃が組み立てられないだけでなく、守備でも不要なファウルが目立った。東アジア選手権で戦うことになる韓国や中国を相手にした場合、ペナルティエリア付近でのフリーキックは極力与えたくない。田中マルクス闘莉王(名古屋)が相手に対しイラつくシーンが何度か見受けられるなど、選手たちもフラストレーションの溜まる試合だったのではないか。

 試合後、岡田監督は「勝てなかったのは残念だったが、相手が素晴らしい動きでプレスをかけてくれたので、シーズンの最初にいい経験ができた。東アジア選手権にうまく臨める。新しい選手のテストもできたのでよかった」とベネズエラ戦を振り返った。

 W杯本大会まで5カ月を切った中、国内組のみのチームとはいえ、攻めの形ができなかった試合が“いい試合”だったかは甚だ疑問である。

 6日から始まる東アジア選手権では、ワールドカップに出場する韓国との試合も組まれている。岡田監督がワールドカップベスト4という目標を掲げたのも、2002年日韓大会で韓国がベスト4に進出したことが念頭にあるからだ。ワールドカップベスト4を掲げた上で、東アジア選手権を優勝できないようであれば、多くのサッカーファンや熱心にスタジアムへ足を運んでくれるサポーターから失笑を買うことになるだろう。週末からの大会では、結果と内容をともなった試合を見せてほしい。

(大山 暁生)


<日本代表出場メンバー>

GK
楢崎正剛
DF
中澤佑二
田中マルクス闘莉王
徳永悠平
→駒野友一(58分)
長友佑都
MF
遠藤保仁
稲本潤一
中村憲剛
→平山相太(58分)
小笠原満男
→金崎夢生(74分)
大久保嘉人
→香川真司(85分)
FW
岡崎慎司
→佐藤寿人(74分)