14日、サッカー東アジア選手権決勝大会最終戦が東京・国立競技場で行なわれ、日本代表は韓国代表と対戦した。日本は前半23分に遠藤保仁(G大阪)のPKで先制する。しかし、33分に逆にPKから失点し、さらに39分にはイ・スンヨルにミドルシュートを決められ1点のビハインドとなる。41分にはラフプレーから田中マルクス闘莉王(名古屋)が一発退場となり一気に追い詰められた。後半に入ると6分に韓国は退場者を出し日本が反撃に転じるが、25分にキム・ジェソンにゴールを決められダメ押しを許す。このまま試合は1対3で終了し、日本は東アジア選手権を3位で終え、W杯本大会に向け大きな不安を残した。

 80分近く同人数で戦うも完敗喫す(国立)
日本代表 1−3 韓国代表
【得点】
[日] 遠藤保仁(23分)
[韓] イ・ドングッ(33分)、イン・スンヨル(39分)、キム・ジェソン(70分)
 ライバルとの好勝負を観戦しようと多くのサポーターが国立競技場に詰め掛けたが、日本代表は彼らの期待を大きく裏切った。

 前半21分にフリーキックからゴール前の競り合いで闘莉王が倒されPKを獲得。これを遠藤が落ち着いて決め、日本は先制点を上げた。しかし、その10分後に内田篤人(鹿島)がゴール前でキム・ボギョンを倒し韓国にPKを献上。これをイ・ドングッに落ちついて決められ試合は振り出しに戻った。

 同点で迎えた39分、イン・スンヨルがペナルティエリア手前から思い切りのいいミドルシュートを放つ。ボールはディフェンスに入った中澤佑二(横浜FM)に当たってコースが変わり、楢崎正剛(名古屋)が懸命に飛びつくも、緩やかな軌跡を残しシュートはゴールへ吸い込まれていった。そして41分には攻めあがった闘莉王がゴール前で相手選手との小競り合いで一発退場となる。1点ビハインドで1人少ない状況となり、日本は絶体絶命のピンチに追い込まれた。前半の残り5分間は稲本潤一(川崎F)が最終ラインに入り、どうにか失点を防ぎ試合を折り返す。

 後半から岩政大樹(鹿島)を投入し守備陣を再構築するものの、キックオフ直後にイ・ドングッにDFラインの裏を突かれる。シュートはゴールバーに当たり得点にはならなかったものの、急造のDFラインは不安の立ち上がりとなった。

 日本にとって幸運な出来事が起こったのは6分。キム・ジョンウがこの日2枚目のイエローカードを受け退場となった。これまで少ない人数で戦い押され気味だった日本だが、この時間を境にやや息を吹き返す。ボランチの位置から前へポジションを上げた遠藤を中心に細かいパスをつなぎ何度か好機を作った。

 ただし、ここでゴールを割れないのが今の日本代表だ。後半12分、15分といい形で韓国ゴールに迫るものの、あと一歩のところで得点を奪えない。この時間帯で攻め切れなかったツケは大きく、15分から約20分間は全くといっていいほどチャンスを作ることはできなかった。

 反対に25分にはイ・グノからのスルーパスを受けたキム・ボギョンに左サイドを突破され、最後は中央に待っていたキム・ジェソンにパスが通る。これを冷静にゴール右隅に突き刺し韓国が3点目を奪う。10対10の局面になりながらダメ押し点を奪われた日本は、36分に佐藤寿人(広島)を投入するもののゴールを奪うことはできず、そのまま試合終了の時を迎えた。日本は東アジア選手権で1勝1敗1分の勝ち点4、中国、韓国に次いで3位という成績で大会を終えた。

 試合後、岡田武史監督は「ホームで勝てなかったことは申し訳ない。チームは徐々によくなっている。色々な選手を試せたことは収穫」と今大会を振り返った。中澤は「自分たちの力が足りない結果。これを受け止めてバーレーン戦に準備したい。結果が出なくて残念。言うことはない」とコメントした。

 これまでW杯本大会でベスト4を目標としてきた岡田ジャパン。4カ月前の大会で“東アジア3位”のチームが世界のベスト4に入る可能性などある訳がない。表彰式では日本代表に向かって大きなブーイングが起こった。スタジアムに詰め掛けたサポーターの大多数は現在の日本代表に向けNOの答えを示している。この声は岡田監督以下、選手たちに届いているのだろうか。

 試合後の記者会見で「(この結果について)責任を取らないのか?」との質問が出た際、岡田監督は「進退については契約上、協会に決定権がある。(犬飼)会長や(原)技術委員長が判断すること。ベスト4という目標に向かって選手たちはついてきてくれている。彼らを途中で投げ出すことなどできない」と語った。「契約があるのだから自ら辞める必要はない」と大見得を切った岡田監督。しかし、本当に選手たちは監督の目標に共感しているのだろうか。自分たちを起用する人間を目の前にして、選手は監督が口にする目標に対し首を縦に振らざるを得ないのが実情だろう。少なくとも、東アジア選手権3試合をスタジアムで観戦したサポーターの中に本気でベスト4を信じている人はいないはずだ。3試合ともそう断言できる内容だった。

 岡田ジャパンはとにかくシュートが打てない。今日の韓国戦では前半のシュート数は2本。1本は遠藤のPKで、もう一本は38分に中村憲剛(川崎F)が放ったミドルシュートだ。つまり、流れの中でのシュートは45分間でたった1本である。一進一退の攻防を続けていたように見えても、日本が相手ゴールを脅かすシーンは全くなかった。

 追いかける立場の後半を見てみても、とにかく攻撃が内に偏っているためチャンスを作れない。岡田監督は「内に入る悪い癖が出た」と認めながらも、ゴール前での詰めの甘さについて「前に入る人数が足りない。ボランチやストッパー、サイドバックがもう一人相手のゾーンへ入らなければならない」とさらにゴール前へ人数を割く必要性を感じたという。これでは中央偏重について解決策になっていない。それどころか岡田監督の示した改善プランは全くの逆効果であるように思える。

 3点目を許した後半25分過ぎから左サイドバック長友佑都(F東京)は積極的に相手ゴール前へ詰めていったが、簡単に韓国DFに体を寄せられ守備陣を崩す場面はなかった。中へ絞りすぎており、チャンスの芽を自ら摘んでいた。右サイドでは内田が中村憲からのスルーパスでペナルティエリアに侵入するシーンもあったが、さらに深くサイドをえぐるではなく、中に切り替えしてシュートを放っている。やはり意識は中にある。

「あとはゴールだけ」という言い訳は聞き飽きた。岡田監督のサッカーでは世界に通用しない。極東で3番目のサッカーなのだ。シーズン前でコンディションが上がらないことや海外組の不在という点は韓国も同じ条件だ。南アフリカW杯において本気で結果を出すのであれば、日本サッカー協会はすぐにでも岡田監督のサッカーに失格の烙印を押すべきである。岡田監督は「劇的にチームを変えるマジックはない」と口にしたが、岡田監督よりチームを改善できる人物は世界中にいる。ただ座して死を待つよりは、早急に手を打つべきだ。このままでは南アフリカで、日本サッカー界は修繕不可能なほどの大きな痛手を負うこと必至である。

(大山暁生)

<日本代表出場メンバー>

GK
楢崎正剛
DF
中澤佑二
田中マルクス闘莉王
長友佑都
内田篤人
MF
遠藤保仁
稲本潤一
中村憲剛
大久保嘉人
→香川真司(24分)
→岩政大樹(46分)
FW
玉田圭司
→佐藤寿人(81分)
岡崎慎司