7日、日本代表は大阪・長居スタジアムでキリンチャレンジカップ2010セルビア戦に臨む。先月行われたアジアカップ予選バーレーン戦では松井大輔(グルノーブル)、本田圭佑(CSKAモスクワ)ら海外組の活躍もあり、最低限の結果を出した。しかし国際Aマッチデーに当たらない今回の試合では海外組からの招集はなく、国内組での一戦となる。
 対戦国のセルビアは南アフリカW杯欧州予選で強豪フランスを抑えて一位通過を果たした。しかし、主力の大半が国外のクラブに所属しているため、こちらもセルビア国内クラブのパルチザン、レッドスターを中心とした国内組のみで来日。なおラドミール・アンティッチ監督も来日せず、ラドバン・チュルチッチ監督補佐が指揮を執る。

 今回の日本代表には中村俊輔(横浜FM)、遠藤保仁(G大阪)ら常連の選手に加え、栗原勇蔵、山瀬功治(ともに横浜FM)らが代表復帰を果たしている。

 栗原は岡田ジャパンでは合宿を除いて初招集となる。これまで代表にあまり縁がなかった栗原に白羽の矢が立ったのは、慢性的なセンターバック不足のためだ。中澤佑二(横浜FM)、田中マルクス闘莉王(名古屋)に次ぐセンターバックはいまだに確定できていない。また、前述の2人はともにスピード不足という欠点を抱えており、闘莉王にはケガの不安も付きまとう。その中で、栗原は高さとスピードを兼ね備えており、Jリーグで開幕から2戦連続で得点をマークしているように、セットプレーでの得点能力も高い。本大会では累積警告などで出場停止のリスクもあるポジションだけに、信頼できるバックアッパーの確保は必須である。

 山瀬も久しく代表から遠ざかっていたが、ここに来て1年8カ月ぶりの代表復帰となった。山瀬は高い得点能力を持つシャドウストライカータイプのMFである。これまで日本代表の中盤にはゲームメーカータイプの選手が頻繁に起用されてきたが、世界トップレベルの試合ではMFの選手の得点能力が勝負を左右することも多い。現在の日本代表において、中村と遠藤のセットプレー以外では中盤の選手に得点はなかなか期待できない。本田や山瀬といったシャドウストライカータイプのMFは貴重な存在だ。

 そして、今回の代表チームで1番のサプライズは大学ナンバー1ストライカーの呼び声が高い永井謙佑(福岡大)の招集だ。持ち味は50メートル5秒8を駆け抜けるスピード。岡田監督は「ラスト10分で彼のスピードを活かしたい」と具体的な起用法を明言した。弱冠21歳の大学生ストライカーに、ここぞという場面でのポイントゲッターとしての期待がかかる。

 南アフリカ行きの切符は、そう多く残されてはいない。23枚のうちの大半は既に手渡されていると言ってもいいだろう。残り少ない座席に滑り込むのは、切り札となり得る選手だ。今回の親善試合の目的は「オプションの模索」となる。本大会でどうしても1点が欲しい時、相手を切り崩すための奥の手を岡田監督は探している。彼が指揮した98年大会にはジョーカーとして岡野雅行(現鳥取)、呂比須ワグナーが名を連ねた。今回のメンバーにはスピードが武器の興梠慎三(鹿島)、永井、高さのある矢野貴章(新潟)、ドリブル突破を得意とする石川直宏(F東京)、2列目からの飛び出しでの得点パターンを持つ山瀬ら、一芸に秀でた選手が多く選出されている。彼らはこれまで代表では中心的な存在とは言えなかったが、切り札としてのメンバー入りという一発逆転のチャンスが与えられた。有効なオプションになると判断されれば、その時点で南アフリカ行きは決まる。

 当落線上の選手も含めて、セルビア戦は最後のアピールの舞台となる。相手が主力不在の「2軍」とはいえ、結果を出せばW杯への道が開けるだけに日本代表のモチベーションは高い。W杯メンバー生き残りをかけたサバイバルの火ぶたが切って落とされる。

(杉原晋作)

<キリンチャレンジカップ>
◇4月7日(水)
日本代表 × セルビア代表
長居スタジアム(大阪)