最強王者・長谷川に最強の刺客現る 〜ボクシング世界戦〜

 ボクシングファンならずとも、絶対に見てほしいダブル世界タイトルマッチが30日、日本武道館で開催される。防衛戦に臨むのはWBC世界バンタム級王者の長谷川穂積と、WBC世界スーパーバンタム級王者の西岡利晃。現状の日本人ボクサーのナンバー1とナンバー2とも言える2人が揃って登場するとあって、前売りチケットは完売した。両王者とも調整は順調で、期待を裏切らない闘いを見せてくれそうだ。
(写真:11度目の防衛を目指す長谷川(左)と挑戦者のモンティエル)
 日本では具志堅用高に次ぐ10連続防衛中の長谷川はWBO世界同級王者のフェルナンド・モンティエル(メキシコ)と激突する。WBOは日本では非公認の団体のため、長谷川が勝っても新たなベルトを得ることはないが、バンタム級最強を決める一戦であることは間違いない。31歳の挑戦者はWBOバンタム級を含め、フライ級、スーパーフライ級と3階級制覇を成し遂げた実績を持つ。2月の試合では、フィリピンから来た挑戦者を1RKOで退けた。右のボクサーファイターで強烈な左フックを持つ。メキシコでは最強と謳われているボクサーだ。「ボクサーとして強い相手に勝つことが、ボクシングをやっている意味」。そう語る王者にとっては願ってもない挑戦者だろう。

 ただし相手も世界王者だけに油断はまったくできない。ここ5度の防衛戦ではすべて4R以内に試合を終えている長谷川だが、本人も認めるように今回ばかりは「勝つのは簡単ではない」だろう。かえってKOを狙いにいくと、強打のメキシコ人のペースにはまる危険性がある。スピードで上回るチャンピオンとしては、うまく有効打を重ねて逃げ切る展開もありだ。お互いにどう試合を進めるかが勝敗を左右する。ひとつ長谷川にとって気がかりなのは長丁場になった時のスタミナ。12Rを戦ったのは、2年3カ月前の5度目の防衛戦が最後だ。「より頭のいいほう、よりコンディションがいいほうが勝つ」とのチャンピオンの言葉は一番的確な予想かもしれない。

 一方、西岡は4度目のベルトを守る闘いに臨む。一昨年9月のタイトル獲得以降、3度の防衛戦はすべてKO勝利。今回もKOで挑戦者を倒せば、具志堅(6連続KO)、長谷川(5連続KO)に次ぐ日本歴代3位の記録となる。昨年1月には日本人では渡辺二郎以来24年ぶりに海外での防衛も果たした。この7月で34歳となる王者だが、「最近は30代の世界チャンピオンも多い。体力も落ちていない。まだこれからだと思っている」と試合を重ねるごとに強さを増している。
(写真:「勝つことを確信している」と自信をみせる西岡(左)と挑戦者のバンゴヤン)

 西岡といえば左のパンチが武器だが、このところは右にも磨きをかける。挑戦者のバルウェグ・バンゴヤン(フィリピン)は同級10位。ただ、西岡より10歳若く15戦無敗という点は不気味である。「KOを狙っていきたい」と話す相手の勢いに飲みこまれないように気をつけたい。うまく右を使ってフィリピン人を寄せつけなければ、経験豊富なチャンピオンが優位に立つだろう。またダブルタイトルマッチの前座試合として、前WBC世界フェザー級王者の粟生隆寛がワイベル・ガルシア(パナマ)と対戦する。スーパーフェザー級に階級をあげた26歳は、この試合に勝てば世界再挑戦が濃厚だ。2階級制覇への足がかりを築きたい。

 GW終盤の5月8日には、WBA世界スーパーフライ級王者の名城信男が3度目の防衛戦を迎える。挑戦者は昨年9月に戦った同級1位のウーゴ・カサレス(メキシコ)。辛くもドローでベルトを守った相手との再戦だ。カサレスは基本はサウスポーだが、右構えにもスイッチするため、チャンピオン陣営では左右両方での対策を練っている。前回の対戦では後半に相手の足が止まり、名城が攻勢をみせただけに、序盤でいかにペースをつかむかがポイントだ。冨山浩之介(ワタナベ)との初防衛戦でも1Rにダウンを喫して苦戦を強いられており、立ち上がりは注意したい。 

4月30日(金) 15時30分開始、日本武道館
<WBC世界スーパーバンタム級タイトルマッチ>
 西岡利晃(帝拳) − バルウェグ・バンゴヤン(フィリピン)
<WBC世界バンタム級タイトルマッチ>
 長谷川穂積(真正) − フェルナンド・モンティエル(メキシコ)

 粟生隆寛(帝拳) − ワイベル・ガルシア(パナマ)

5月8日(土) 16時45分開始、大阪府立体育会館第1競技場
<WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ>
 名城信男(六島) − ウーゴ・カサレス(メキシコ)


 期待高まるルーキー星野 〜プロ野球セ・リーグ〜 

 開幕して約1カ月が経ったプロ野球、今シーズンも連日のように熱戦が繰り広げられている。最も好調なのが下馬評通り独走態勢を築きつつある巨人だ。特に打線が好調でチーム打率2割7分8厘、36本塁打はリーグトップだ。開幕から不動の「2番・センター」を担い、打線を牽引してきた松本哲也が故障で戦線離脱したものの、代役として2番に入った脇谷亮太がその日から2試合連続でタイムリーを放つなど、安定したバッティングを見せている。外野も長野久義、谷佳知、亀井義行と十分にコマは揃っているだけに、戦力ダウンの印象は全く感じられない。

 一方、下馬評では不安視されていた投手陣も安定したピッチングを見せている。開幕投手を務め、4連勝中の内海哲也を筆頭にゴンザレス、オビスポ、東野峻、藤井秀悟がローテーションを確立。後ろには防御率0点台を誇る越智大祐、球界屈指の剛速球を誇るクルーンが控えている。

 そんな中、注目すべきは育成から這い上がってきたルーキー左腕の星野真澄だ。28日現在、3試合に登板。11人の打者に対し、打たれたヒットはわずか1本。防御率は0.00と見事なピッチングを見せている。特筆すべきは27日の中日戦。8−0と巨人が大量リードで迎えた最終回にマウンドに上がった星野は、1死一塁の場面でブランコからプロ初となる空振り三振をとってみせた。最後は見逃せば完璧にボールという高めのストレート。しかし、ブランコが思わず振ってしまうほど、グンと伸びのあるボールだった。
徐々に首脳陣の信頼を得つつある星野。山口鉄也が不安定なだけに、期待する声も大きい。今後セットアッパーとして大事な場面を任せられるかどうかは、この連休での結果次第といえそうだ。山口、松本に続いての育成出身からの新人王獲得となるか。今後のピッチングに注目したい。

 必勝リレーで独走態勢なるか!? 〜プロ野球パ・リーグ〜

 パ・リーグでは西村徳文新監督の下、快調に飛ばしてきた千葉ロッテがここにきて苦しんでいる。今月は福岡ソフトバンクに2度も負け越しを喫すると、27、28日と埼玉西武に連敗。貯金も徐々に減り、4月2日以来守り続けてきた首位の座を西武に明け渡した。一方、西武は13日の東北楽天戦からの4連勝を皮切りに、首位ロッテを猛追。5カード連続で勝ち越しを決め、ついにリーグトップに躍り出た。

 西武躍進の要因は3部門(勝利数、防御率、セーブ数)でトップを独占している投手陣にある。今や押しも押されもしない西武の守護神となったのがシコースキーだ。25日のオリックス戦で両リーグ最速となる10セーブ目に到達。28日現在、15試合に登板し、被安打9、28日現在で12セーブをマークしている。そして新セットアッパーの藤田太陽にも注目したい。28日現在、14試合に登板し、打たれたヒットはわずか5本、防御率は0.00だ。その強心臓ぶりを発揮したのが24日のオリックス戦。8回無死一、二塁のピンチの場面でマウンドに上がった藤田はラロッカを三振、T−岡田を併殺打と強打者を前にしても全くひるむことはない。

 昨シーズンは前年の日本一から5位に転落した西武。その最大の要因と言われていたのがリリーフ陣の不安定さだった。そして今シーズンの開幕前、優勝予想で西武をあげた評論家も一様に不安視していたのがグラマンの抜けたクローザーのポジション。16年ぶりに古巣復帰したベテラン工藤公康も2軍調整を余儀なくされ、予想ではシコースキーでは心許なく、小野寺力、藤田太陽などとの併用も考えられていた。しかし、今シーズンは藤田−シコースキーと必勝パターンが確立しつつある。開幕前から故障者が続いている打線が本領発揮となれば、一昨年のような独走態勢に入る可能性もある。5月中旬からは交流戦に入るだけに、その前にしっかりと貯金を増やし、勢いをつけたいところだ。

<セ・リーグ>
4月29日(木・祝)
 東京ヤクルト − 阪神 (神宮)
 中日 − 巨人 (ナゴヤドーム)
 広島 − 横浜 (マツダスタジアム)
30日(金)〜5月2日(日)
 東京ヤクルト − 横浜 (神宮)
 阪神 − 巨人 (甲子園)
 広島 − 中日 (マツダスタジアム)
3日(月・祝)〜5日(水・祝)
 巨人 − 東京ヤクルト (東京ドーム)
 横浜 − 広島 (横浜)
 中日 − 阪神 (ナゴヤドーム)

<パ・リーグ>
4月29日(木・祝)
 北海道日本ハム − オリックス (札幌ドーム)
 埼玉西武 − 千葉ロッテ (西武ドーム)
 福岡ソフトバンク − 東北楽天 (ヤフードーム)
30日(金)〜5月2日(日)
 北海道日本ハム − 埼玉西武 (札幌ドーム)
 東北楽天 − オリックス (Kスタ宮城)
 福岡ソフトバンク − 千葉ロッテ (ヤフードーム)
3日(月・祝)〜5日(水・祝)
 埼玉西武 − 東北楽天 (西武ドーム)
 千葉ロッテ − 北海道日本ハム (千葉マリン)
 オリックス − 福岡ソフトバンク (スカイマーク/京セラドーム大阪)


 浦和の2連戦 上位対決に注目! 〜Jリーグ ディヴィジョン1〜

 GWのJ1は1日(土)と5日(水・休)に試合が組まれている。注目は浦和レッズの戦いぶりだ。1日の第9節はアウェーで清水エスパルスと、5日の第10節はホームで名古屋グランパスと対戦する。現在3位につける浦和は2季目に突入したフォルカー・フィンケ体制で好スタートを切っている。その浦和の上を行くのが、首位・清水と2位・名古屋だ。上位直接対決2連戦はリーグ全体にも大きな影響を及ぼすカードになる。

 清水はこれまで5勝3分けと無敗で来ている。好調の要因は6年目となる長谷川健太監督の一貫した戦術と今季より小野伸二の加入した中盤の安定ぶりだ。得点15、失点5はともにリーグ最高の数字であり、総合力で昨シーズンよりも一ランク上がった印象がある。昨季は終盤に息切れしACL出場圏内に届かなかっただけに、今季は二の舞のないよう好調時に少しでも多く勝ち点を積み重ねておきたい。

 名古屋はやはり田中マルクス闘莉王の加入が大きい。DFラインが安定したことで、攻撃にもいいリズムが生まれている。元来、攻撃陣は破壊力を持っているが新加入の金崎夢生らもマッチしてきており、さらなるのびしろが期待できそうだ。ドラガン・ストイコビッチ監督が就任して3年目の今季は、是が非でもビッグタイトルがほしい。浦和とのビッグマッチを制し、勢いに乗って首位奪取を狙いたい。

 好調・浦和を牽引するのは田中達也だ。昨季はシーズン後半でコンディションが上がらず出番も減り、代表からも遠ざかる苦しい日々を過ごした。しかし、10シーズンは開幕戦こそ途中出場だったものの2節からは先発出場、2ゴールを上げている。浦和がこのままの勢いを維持するには、やはり田中の活躍は不可欠。この2連戦をものにすれば、W杯中断前に首位へ浮上することもあり得る。

 非常に熱いことで有名なレッズサポーターが、古巣と対戦する小野と闘莉王にどのような反応をするのかもみどころといえよう。両選手ともクラブの浮沈を握るキーマンだけに、敵に回すことになるレッズサポーターは彼らの存在に頭を抱えることになるかもしれない。

◇第9節
・5月1日(土)
横浜FM−磐田(13:00、日産ス)
神戸−新潟(13:00、ホームズ)
名古屋−山形(14:00、瑞穂陸)
仙台−C大阪(15:00、ユアスタ)
鹿島−G大阪(16:00、カシマ)
川崎F−湘南(16:00、等々力)
清水−浦和(16:00、エコパ)
大宮−京都(19:00、NACK)
広島−F東京(19:00、広島ビ)

◇第10節
・5月5日(水・祝)
湘南−神戸(13:00、平塚)
京都−清水(13:00、西京極)
浦和−名古屋(14:00、埼玉)
F東京−仙台(14:00、味スタ)
C大阪−鹿島(14:00、長居)
新潟−横浜FM(16:00、東北電ス)
磐田−広島(16:00、ヤマハ)
山形−大宮(19:00、NDスタ)
G大阪−川崎F(19:00、万博)