10日、日本サッカー協会(JFA)はFIFAワールドカップ南アフリカ大会に出場する日本代表23名を発表する。メンバー表は岡田武史監督自らが読み上げ発表していく予定だ。これまで日本がW杯に出場した3大会では様々なドラマがあった。果たして今回はどのような筋書きが用意されているのか。
 W杯初出場の1998年フランス大会では、直前の合宿でメンバー候補だった三浦知良、北澤豪、市川大祐が帰国している。2002年日韓大会では中村俊輔が最終登録メンバーから外れた。06年ドイツ大会では久保竜彦が涙を呑んだのは記憶に新しい。彼らとは逆に、98年は当時18歳の小野伸二が抜擢され、日韓大会ではベテランの中山雅史、秋田豊がメンバー入りしている。ドイツ大会では、発表会見でジーコ監督が「ムァキ(巻誠一郎)」と言ったシーンが連日テレビで放送され、大きな話題となった。

 そして迎える4大会目のメンバー発表。23名のメンバーのうち大半は予想できるが、最後の枠に滑り込む選手が誰になるのか。このカードを考えることで、岡田監督がチームに求めるものが見えてくるのではないか。

 チームの柱となる選手たちについて「8割方決まっている」と岡田監督は口にしている。特に海外組の長谷部誠、本田圭佑、松井大輔についてはすでに“当確”のコメントも出しているのだ。岡田監督が中心にすえてきた中村俊輔や遠藤保仁、中澤佑二といった選手たちが選考から漏れることは考えにくい。そこで岡田監督が決めかねている残りの2割の部分、人数でいえば4人程度が意外な選手の大抜擢がありうる枠となる。

 過去のサプライズ招集の歴史を見ると、2つのパターンに分かれる。98年、06年の「若手抜擢型」と、02年の「ベテラン復帰型」だ。前者はチームの不足部分を補うために、勢いのある若手を登用するタイプ。後者は試合以外の面でも精神的な支柱となれる選手を加えるタイプといえよう。

 現在の岡田ジャパンを覆っているのは閉塞感だ。先月のセルビア戦ではホームでの試合に関わらず0対3と完敗を喫した。このような状況ではサポーターの熱もあがってこない。現状を打破するために、本大会で対するカメルーン、オランダ、デンマークにも物怖じしないベテランの復帰を望みたい。

 そこで推したいのは、川口能活と小野伸二だ。二人とも過去3大会にすべて出場しており、経験については申し分なし。特に小野は清水に復帰した今シーズン、開幕から抜群の動きを見せ、首位快走の大きな原動力となっている。川口はケガから復帰した直後だが、出場機会を考えることよりも、彼の存在がチームに大いなる安定感を与えるはずだ。

 他にも小笠原満男や槙野智章、田中達也など当落線上の選手はいるが、川口、小野といった選手が名を連ねればサポーターに与えるインパクトは絶大だ。ベテランが後ろからチームを支えることは非常に大きな意味を持つ。彼らが一生懸命練習していれば、刺激を受けない若手選手はいないはずだ。何と言っても、この二人が世界で戦ってきた経験は、日本サッカーにとって数少ない宝物だ。彼らは常に成功してきたわけではない。欧州で失敗してきたからこそ得た強さを持っている。
 
 グループEの実力を冷静に判断すれば、日本は4カ国中4番目であることは間違いない。そのチームが上位進出を狙うのならば、チームを一気に活性化させるようなインパクトのある選手起用が必要だ。せめて、大きな驚きはなくとも状況を明るくさせるような決断を、岡田監督には示してもらいたい。

(大山暁生)