23日、東京・有明コロシアムでbjリーグ09−10ファイナルが行われ、浜松・三河フェニックスが大阪エヴェッサを下し、初優勝。初めてイースタン・カンファレンスから王者が誕生した。MVPには前日のカンファレンス ファイナルで35得点をマークし、ファイナルでも司令塔としてチームを牽引したG大口真洋が日本人として初めて選ばれた。また、3位決定戦では前回覇者の琉球ゴールデンキングス(沖縄)が新潟アルビレックスBBとの接戦を制した。
(写真:選手たちから胴上げされる浜松・中村HC)
◇ファイナル
 イースタン初の王者誕生
浜松・東三河フェニックス 84−56 大阪エヴェサ
【第1Q】14−16【第2Q】22−11【第3Q】21−17【第4Q】27−12

「(優勝は)大勢のファンの人たち、あなた方のおかげです」
 そう言って沸き上がるスタンドに向かってお礼を述べた中村和雄HC。念願の優勝を達成し、有明で宙を舞った感想を聞かれると、「最高です! 本当に嬉しい。これをスタートにしてこれからも頑張ります!」と声を張り上げた。

「インサイドワークというバスケットの鉄則を守れば勝てるのに外国人は時として個人技に走る」
 優勝インタビューでの中村HCの言葉の通り、1Qは外国人勢がボールを持ちすぎ、個人プレーが多かった浜松に対し、大阪はボールをまわしいつものチームバスケットで対抗した。しかし互いにシュートの確率が悪く、リズムに乗り切れない。2Qに入ると、徐々に浜松の外国人勢が当たり出した。序盤、C/Fジャーフロー・ラーカイが次々と得点を挙げると、中盤にはエースのG/Fウェンデル・ホワイトが豪快にアーリーウープ、さらにはスリーポイントを鮮やかに決め、チームに勢いをもたらした。大阪もシュートチャンスはつくるものの、ことごとくリングに嫌われ、スコアを伸ばすことができない。前半は浜松9点リードで終えた。

(写真:エースのワシントンがダンクを決める場面もあったが……)
 後半に入っても、浜松の勢いは止まらなかった。その象徴がG/Fウィリアム・ナイトだった。3Q、全てのシュートをノーミスで決め、最後はブザーとともにスリーポイント。これに浜松のベンチ、スタンドから歓声が沸きあがり、流れは一気に浜松へと傾いていった。4Qに入ると、さらに浜松の勢いは増していった。まずは一発目、ホワイトが大口からのアーリーウープを決め、会場のボルテージは最高潮に。その後も縦横無尽に駆け回り、次々とシュートを決めていく浜松。リーグ一の平均得点をマークしたレギュラーシーズンの勢いそのままに、得点を積み重ねていった。一方、大阪はスリーポイントで逆転を狙おうとするも、勝利の女神から見放されたとしか思えないほど、ボールはリングから外れた。結局、フリースローもほぼ完璧に決めた浜松が28点という大差をつけ、初優勝を果たした。

「シュートチャンスはつくれたし、最後のスクラップタイムを除けば、得点力のある浜松をよく抑えたと思う。問題はシュートが入らなかったこと」と天日謙作HC。bjリーグで3度も王者に導いた指揮官も、この試合はなす術がなかった。
 一方、中村HCは「2年前のファイナルはテレビの解説をしていた。そのとき、『これだけのお客さんの中で優勝できたら死んでもいい』なんて言ったが、実際勝ってみると、『何だ、こんなものか』という感じ。自分は勝って泣いたことがないが、今回は泣くかもしれないと思ったが、案外あっさりしたものだ」と“中村節”を披露した。
 しかし、日本人選手として初めてMVPを獲得した大口の話になると、嬉しさを隠し切れない様子で次のように語った。
「大口のMVPは日本人選手みんなに与えられた賞だと思っている。彼が選ばれたことで日本人選手も勇気づけられたと思うし、本当に嬉しい。(優勝は)彼らが頑張ってくれたおかげ。『ありがとう』と言いたい」
 やもすると、個人技に走り、わが道をいく外国人選手を抱えながらチームを一つにまとめ、優勝へと導いたのは、中村HCの手腕はもちろん、そこには試合に出場する、しないに関係なく、日本人選手の陰の努力があったのだ。
「まだまだやることはある。頑張りますよ!」と中村HC。今年70歳を迎えるベテラン指揮官の闘志はまだ燃え尽きていない。


◇3位決定戦
 沖縄、来季につながる勝利
新潟アルビレックスBB 75−82 琉球ゴールデンキングス
【第1Q】19−21【第2Q】20−25【第3Q】15−13【第4Q】21−23

 沖縄が前覇者の意地を見せ、新潟との接戦を制した。モチベーションを保つのに最も難しい試合がこの3位決定戦だ。しかし、昨日の両HCが宣言したように、両チームともに既に気持ちは切り替わっていたようだ。スタートから一進一退の攻防戦が繰り広げられ、最後まで目が離せない好ゲームとなる。

 1Q、最初に試合の主導権を握ったのは沖縄だった。アウトシュートが入らない新潟に対し、Fアンソニー・マクヘンリー、G与那嶺翼が立て続けにスリーポイントを決め、リズムをつかむ。さらに、ジェフ・ニュートン、ジョージ・リーチのセンター陣も内外からシュートを決め、新潟を引き離した。新潟も相手のファウルから得たフリースローをほぼ確実に決め、なんとか食らいつく。終盤にはSG小菅直人が奮闘し、最大9点あった差を2点に縮めた。だが、2Qに入ると沖縄の外国人勢が競うようにシュートを決め、その差は7点と広がった。

 ハーフタイムを挟んで始まった3Q、スタートから2分以上得点のなかった新潟はタイムアウト後、小菅がスチールからレイアップシュート、さらには自らドライブしてインサイド勝負し、孤軍奮闘する。それでもなかなかシュートが決まらない新潟だったが、PFウチェ・エチェフ、G小松秀平がフリースローを確実に決め、5点差に縮める。そして4Qは両チームの意地がぶつかり合い、会場の盛り上がりは最高潮に達した。激しい攻防戦が続き、残り1分22秒のところで小松が値千金のスリーポイントを決め、新潟が2点差に迫った。だが、ここで沖縄を救ったのは前回MVPのニュートンと今シーズン主将としてチームを牽引してきた与那嶺だった。新潟がファウルゲームに持ち込み、勝負をかけてきたものの、ニュートン、与那嶺がフリースローをほぼ確実に決め、逆に点差を広げていった。新潟もC/Fポール・ビュートラックがインサイドを攻めて追い上げを図るも、最後は試合巧者の沖縄に軍配が上がった。
(写真:スタートから激しい攻防戦が繰り広げられた)

「勝てるチャンスがあったし、選手も最後までよく頑張ってくれた。勝たせてあげることができなかった自分の責任です」と廣瀬昌也HC。その表情は憔悴しきっていた。開幕当初はチームがうまく機能せず、最下位に陥った時期もあった。そこから4位を確保し、そしてセミファイナルではレギュラーシーズンで1勝しかできなかった仙台89ERSを下してのファイナル4進出。指揮官にとってこのシーズンはあまりにも長く、険しい道のりだった。
「正直、疲れました。シーズン中はどうなるんだろう、と思った時期もあった。コミュニケーションがとれず、拒絶反応を示す選手もいた。しかし、最後は一人一人が役割を果たしてくれて、いいチームになった。4位という結果は残念だが、若い選手が多いチームなので、いい経験になったと思う」
 負けたとはいえ、沖縄とほぼ互角に渡り合ったチームにブースターからは温かい拍手が送られていた。

 一方、なんとか3位を確保した沖縄の桶谷大HCは次のように述べた。
「今シーズンを勝って終わることができ、来シーズンにつながる。今日負けていれば、負け癖がついてしまう。だから今日勝ったことは大きい」
 そして「常に優勝争いができるチームをつくり、沖縄の人たちに元気を与えたい。来年はまたこの場に帰ってきて、再びブースターに(優勝を)プレゼントしたい」と王座奪還を誓った。果たして来シーズン、再び有明で沖縄旋風を巻き起こすことができるのか。32歳、若き指揮官の手腕に注目したい。