30日、サッカー日本代表はオーストリア・グラーツで国際親善試合を行ない、イングランド代表と対戦した。前半7分に田中マルクス闘莉王(名古屋)がコーナーキックからボレーシュートを決め、日本が先制する。その後は強豪相手に攻め込まれながらも、GK川島永嗣(川崎F)がPKを止めるなどビッグセーブを連発し、どうにか持ちこたえる。しかし、後半27分、右サイドを突破されると闘莉王がクロスボールをクリアに入るも、ボールはそのまま日本ゴールに吸い込まれオウンゴールとなり、同点に追いつかれる。さらに38分には左サイドから突破され低いクロスに足を伸ばした中澤佑二(横浜FM)が再びオウンゴールを献上し逆転を許す。その後、同点に追いつこうとする姿勢は見せるもののゴールは遠く、日本は1対2でイングランドに敗れた。岡田ジャパンは6月4日にコートジボワールとの親善試合を戦い、W杯本大会に臨む。

 前半リードも、終盤に2失点(グラーツ)
日本代表 1−2 イングランド代表
【得点】
[日] 田中マルクス闘莉王(7分)
[イ] オウンゴール(72分、83分)
 24日の韓国戦で惨敗した日本代表は、南アフリカW杯で優勝候補にも挙げられているFIFAランキング8位のイングランドと親善試合を行った。前半7分にコーナーキックから闘莉王が豪快なシュートを決めたものの、試合はほぼ90分の間、強豪に主導権を握られ続ける展開となった。日本が決定的なシーンを作ったのは、前半では得点シーンのみ、後半では6分の本田圭佑(CSKAモスクワ)のミドルシュートと17分の森本貴幸(カターニャ)左足のシュートの2回。合計3回の決定機で1点のみにとどまったことが、試合結果に大きく反映された。

 守備面ではオウンゴールの2失点という結果だけに、見方によればよく守ったとも言えるかもしれない。しかし、このスコアは川島のビッグセーブがあったからこそ。前半19分のアーロン・レノンのシュートや後半23分のウェイン・ルーニーのミドルでも神懸り的なセーブをみせ、日本のピンチを切り抜けた。さらに川島のハイライトシーンは後半9分。フリーキックの壁に入った本田がハンドを犯しPKを与える絶体絶命のピンチで、フランク・ランパードが放ったPKを川島が右に飛んで超ファインセーブを見せる。彼の好守で1対2のスコアで試合は終了したものの、力の差はスコア以上に埋めがたいものだった。

 日本にとって収穫は中盤の底で起用された阿部と最終ラインに復帰した闘莉王の活躍だ。韓国戦で全く機能しなかった中盤の底に阿部が入ったことで、長谷部誠(ヴォルフスブルク)と遠藤保仁(G大阪)、阿部の3人でボールを回すことはできた。特に阿部の守備面での献身は大きく、強豪相手に戦う一つの方法としてメドが立った。阿部が中盤に入ることで、長谷部が前線に顔を出す場面も増えそうだ。あとは、遠藤の調子が上がってくればさらにパスをつなぐことができるだろう。遠藤のコンディションが整わなければ、中村憲剛(川崎F)の起用も面白い。また、韓国戦では右足を痛め出場できなかった闘莉王が最終ラインに入り、守備が格段に安定しただけでなく、最終ラインから前線やオーバーラップした長友佑都(F東京)へボールが供給されるようになった。

 一方、この試合での一番の課題はサイドの守備だ。韓国戦の2失点目もサイドバックが上がったスペースを起点にされている。今日のオウンゴールでの2失点も、サイドにスペースを与えたことで、クロスを上げられた。1点目の場面ではジョー・コールを右サイドで完全にフリーにしている。世界のトップレベルの選手にPA外でボールを自由に持たせれば、必ず精度の高いクロスが入ってくる。ゴール前にはルーニーらが待ち構えていたため、闘莉王のオウンゴールはクロスを上げられた時点で、失点したのも同然だった。W杯本大会で対戦する3カ国も長友や内田篤人(鹿島)がオーバーラップしたスペースを突いてくるだろう。サイドからの崩しに対してチェックが甘くなるのは昨年9月のオランダ戦から進歩していない。このスペースを消すためにも、阿部やセンターバック2人、反対サイドの選手で連係を強化する必要がある。2点目の失点シーンでも、左サイドでショーン=ライト・フィリップスとアシュリー・コールをフリーにしている。このエリアで数的優位を保たなければ、サイドが強力なオランダやカメルーンに同じような形で点を奪われる可能性は高い。

 前半は強豪と互角以上のスコアで戦い、終盤に追いつかれ逆転されるという展開は、ドイツW杯でのオーストラリア戦や、昨年のオランダ戦でも目にしている。自分たちより力のある相手に対し、残り30分からのゲームマネージメントがまだまだ未熟と言わざるを得ない。先述したとおり、日本がチャンスを作れる回数はそう多くない。少ない好機で1点に終わるか、それとも2点目が入るか。ここで勝負の行方は大きく異なる。本田、森本など可能性を感じさせるシュートを放つ選手が、さらに高い精度でゴールを狙ってほしい。試合後、本田は「(コーナーキックからの)1点目がなければ、もっと難しい試合になっていた。力の差はある。どうやって2点目を取りにいくのか、どうやって失点を防ぐのか。(そこを考えて)プレーしていかないといけない。これではまだまだ勝てない。(惜しいミドルシュートも)入っていないので……」と力負けの内容に危機感を吐露していた。決められるところで決める。攻撃陣の奮起に期待したい。

 6月4日には、アフリカの強豪、コートジボワールと対戦し、いよいよ南アフリカW杯に臨むことになる。サイドの守備を修正し、枠内に可能性のあるシュートを何本放つことができるか。本大会前の最後の試合で、今日の試合から一歩でも二歩でも前進したチームの姿を見せてほしい。

(大山暁生)

<日本代表出場メンバー>

GK
川島永嗣
DF
中澤佑二
田中マルクス闘莉王
長友佑都
今野泰幸
MF
阿部勇樹
遠藤保仁
→玉田圭司(86分)
長谷部誠
大久保嘉人
→松井大輔(71分)
本田圭佑
FW
岡崎慎司
→森本貴幸(63分)