ホスト国の南アフリカ、実績十分のフランス、4大会連続16強入りを果たしているメキシコ、2度のW杯制覇の経験を持つ古豪ウルグアイと、興味深い顔ぶれが揃ったグループだ。
 前回ファイナリストのフランスを擁するグループだが、本命には敢えてウルグアイを推したい。いまでこそ中堅国に成り下がっているが、かつてはブラジルをも凌駕する強豪だった。1930年に記念すべき1回目のW杯を開催し、最初の優勝国となっている。さらに50年大会決勝では開催国ブラジルを聖地マラカナンで破り、2度目の栄冠を手にした。その後は長らく低迷期にあるが、今大会の台風の目となる可能性は十分にある。

 ウルグアイ躍進のカギを握るのは抜群の破壊力を誇るFW陣。特にルイス・スアレス(アヤックス)は注目すべきタレントだ。今シーズン、エールディビジで33試合出場35得点の大活躍を見せ、今大会でのブレイクの期待がかかる。その他にも大黒柱のディエゴ・フォルラン(アトレティコ・マドリー)、セリエAのパレルモで13得点を挙げたエディンソン・カバーニ、193センチの長身FWセバスティアン・アブレウ(ボタフォゴ)とFW陣は世界屈指の陣容である。キャプテンのディエゴ・ルガーノ(フェネルバフチェ)やGKのフェルナンド・ムスレラ(ラツィオ)を中心とした守備陣がどれだけ踏ん張れるかが、ウルグアイ躍進のカギとなりそうだ。

 シードを逃したフランスにとって、南アフリカのグループへ組み入れられたことは幸運だったが、ウルグアイ、メキシコという難敵も同居し決して簡単ではないグループになってしまった。

 疑惑のアシストでフランスをワールドカップへ導いた主将ティエリ・アンリ(バルセロナ)は所属クラブでレギュラーの座を失い、年齢から来る衰えも隠しきれない。また、センターバックにはケガでシーズン終盤を棒に振ったウィリアム・ギャラス(アーセナル)と本職はサイドバックのエリック・アビダル(バルセロナ)を起用せざるを得ないなど不安が残る。「ジダン2世」の期待がかかるヨアン・グルキュフ(ボルドー)はその重圧に耐えられるだろうか。実力は世界でもトップクラスだが、ともすると1勝も挙げられずに大会を去ることになったEURO2008の二の舞もあり得る。

 実力、実績で他の3カ国に劣るとはいえ、開催国南アフリカを侮るべきではない。昨年のコンフェデレーションズカップではブラジル相手に0対1と善戦。スペインとの3位決定戦では2対3で敗れたものの後半ロスタイムに同点に持ち込む大激戦を演じた。コンフェデ終了後には名将カルロス・アルベルト・パレイラが監督に復帰し、さらに力をつけてきた。選手層の薄さは心配だが、攻撃の要のスティーブン・ピーナール(エバートン)や主将のアーロン・マクエナ(ポーツマス)、国内リーグのスター選手テコ・モディセ(オーランド・パイレーツ)など、戦える最低限の戦力は揃っている。何より地元の熱い声援こそ他国にとって一番の脅威だ。大声援を背に受けた「バファナ・バファナ(南アフリカ代表の相性)」は旋風を巻き起こすことができるのか。

 メキシコの可能性も捨てがたい。懸案だったFW陣でもハビエル・エルナンデス(チバス・グアダラハラ)がここ数試合で結果を残している。快足ウイングのアンドレス・グアルダード(デポルティーボ・ラ・コルーニャ)のドリブルも大きな武器だ。反面、ラファエル・マルケス(バルセロナ)やカルロス・ベラ(アーセナル)といった本来中心となるべき海外組が低調なシーズンを送ったのはやや心配なところか。他の3カ国と比べると決定的な要素に欠ける感は否めない。

◎ ウルグアイ
〇 フランス
▲ 南アフリカ
△ メキシコ

(S.S)

 開催国南アフリカが入るグループAは、シード以外の国ならどこも入りたいと望んでいたグループだ。その恩恵を受けることになったのはメキシコ、ウルグアイ、そしてフランスだ。特に98年王者のフランスは、シードから漏れ厳しい戦いが予想されたがA組に入ったことで一転、大きなアドバンテージを得た。

 下馬評の高くない“レ・ブルー”は5月30日に行なわれたチュニジア戦でも1対1のドローで仕上がりに不安を残す。国内ではチームを率いるレイモン・ドメネク監督への風当たりは相当厳しい。それでもドメネクは「チュニジアは準備段階にいる我々を押し込んだが、これは予想していたこと。重要なのは6月11日から7月11日までに起こることだ」と強気の姿勢を崩さない。過去に好成績を収めてきた98年フランス大会、06年ドイツ大会ともに、彼らの前評判は高くなかった。逆に優勝候補に挙げられていた02年日韓大会はグループリーグ敗退。これらの例を振りかえると、活躍する条件は揃っている。

 フランスのキーマンはGKウーゴ・ロリス(リヨン)だ。今大会で大ブレイクする可能性が高い。ベテランが揃うDFラインは強固とは言えないだけに、彼の活躍はチームにとって不可欠だ。一度当たり出すと、手に負えないほど好セーブを連発する。今大会を機に、ビッグクラブへのステップアップも十分に考えられる。

 攻撃陣に目をやれば、フランク・リベリ(バイエルン・ミュンヘン)、ニコラ・アネルカ(チェルシー)、グルキュフ、アンリと駒は揃っている。注目はやはりアンリか。欧州予選プレーオフでの“ハンド”騒動は、いまだに終幕を見ない。自らの苦境をはね返すには、南アフリカで結果を出すしかない。主将の奮起に期待したい。

 フランスに続くのはウルグアイ。南米勢の中では当たりに強く、闘志あふれるプレーが魅力だ。生粋の点取り屋であるフォルランのプレーは必見。04−05シーズン、08−09シーズンとリーガ・エスパニョーラで得点王を獲得している。1試合で多くの得点を生むこともあり、南アフリカ戦で爆発すれば、大会得点王も見えてくる。

 メキシコにもチャンスはある。37歳のクアウテモク・ブランコ(ベラクルス)は今大会も健在。北中米カリブ海予選でも4ゴールを記録している。02年日韓大会では「カニばさみ」など意外性のあるプレーを披露し、記憶に残っている方もいるのではないか。布陣は4−4−2で統制のとれた堅実なサッカーをする。4大会連続で決勝トーナメントに駒を進めた経験があるだけに侮れない。

 地元の南アフリカは厳しい戦いが予想される。これまで開催国は全て決勝トーナメントへ駒を進めてきたが、その記録もここで途絶えるのではないか。ホームの大声援を味方につけ、どこまで粘れるか。開幕戦のメキシコ戦が命運を握る。

 決勝トーナメントの日程を考えると、A組1位、2位は早い日程で試合が組まれているためトーナメントが進むにつれ有利になっていく。隣のグループBにはアルゼンチンがいる。比較的楽なグループに入ったアルゼンチンは1位で突破する可能性は高い。グループ2位通過となると、1回戦でいきなりアルゼンチンとの戦いになる。どの国もそれは避けたいところだ。

 1位通過となれば一気にベスト8も視界に入るA組。フランスが汚名返上のために一歩を踏み出す。

◎ フランス
〇 ウルグアイ
▲ メキシコ
  南アフリカ

(A.O)