最後のグループに入った08年欧州王者スペインは、世界中で最も愛されるサッカーを展開している。彼らのプレーは美しいだけでなく、結果も残してきた。2006年11月以降、敗戦はコンフェデレーションズカップ準決勝アメリカ戦のたった一つだけ。欧州予選も10連勝で通過している。ホンジュラス、チリ、スイスと同居するグループで彼らが足踏みすることは考えられない。
◎ スペイン
〇 チリ
▲ スイス
  ホンジュラス

 ビセンテ・デル・ボスケ監督率いる無敵艦隊は豪華なメンバーで南アフリカに乗り込む。司令塔のシャビ・エルナンデス(バルセロナ)、不動の守護神イケル・カシージャス(レアル・マドリッド)、最終ラインからイレブンを鼓舞するカルレス・プジョル(バルセロナ)。他にもスター選手が揃う磐石の布陣だ。得点王候補の1人、フェルナンド・トーレス(リバプール)が故障明けではあるが、それを補ってあまりあるリザーブ陣がおり、不安はない。

 注目はダビド・ビジャ(バルセロナ)とヘスス・ナバス(セビージャ)だ。前者はF・トーレスと並びスペインが誇るストライカーだが、トーレスのコンディションに不安があるだけに彼の重要度は増す。器用さがありツートップでもワントップでも確実な働きをする。先日、念願だったバルセロナへの移籍も決定し、気持ちも充実している。EURO08の得点王は再びゴール量産体制に入るだろう。ヘスス・ナバスは今季急成長した生粋のウイング。先発出場は難しいかもしれないが、後半途中から彼がピッチに立てば、相手にとってこれほど脅威になることはない。今大会の活躍次第では、一気にワールドクラスの選手として世界中に名を轟かすかもしれない。

 スペインを追うのはチリだ。南米予選をブラジルに続く2位で通過し存在感を示した。3−4−3の布陣で高い位置から相手にプレッシャーをかけ、ボールを奪えば速攻をしかける。アルゼンチン人のマルセロ・ビエルサが3年かけて築き上げてきたスタイルの集大成を南アフリカで披露する。

 攻撃の核は3トップの中央に位置するウンベルト・スアソ(サラゴサ)。抜群のゴール嗅覚で相手DFを苦しめる。さらに左サイドのマルク・ゴンザレス(CSKAモスクワ)にも注目だ。特に左足から放たれる強烈なミドルシュートは必見。ドリブルの切れ味も素晴らしく超攻撃的スタイルで果敢にゴールを狙っていく。

 欧州予選ではギリシャを抑えグループ1位通過を果たしたスイスは、派手さこそないものの安定感のある好チームだ。前回大会はフランス、トーゴ、韓国と同居したグループを1位突破しながら決勝トーナメント1回戦でウクライナにPK戦で敗退。4試合で1点も奪われることなく大会を去るという珍記録を作った。4年前の悔しい想いを晴らしたいところだが、チリとの2位争いを制するのは少し厳しいか。スイス歴代最多得点記録を持つアレクサンダー・フライ(バーセル)、35歳ながらオランダリーグで活躍の続けるブライズ・クフォ(トゥベンテ)とベテラン2トップの働きぶりがカギを握る。

 24年ぶりの出場となるホンジュラスは、いかに失点を抑えられるかにかかっている。GKノエル・バジャダレス(オリンピア)は国際経験こそ少ないものの、安定感のあるセービングを誇る。本大会でも落ち着いたプレーができれば力を発揮できるだろう。初戦がチリとの戦いになる。ここで勝ち点を一つでも拾えばチャンスは生まれる。まずは堅固なディフェンスを築いていきたい。

(A.O)


 今大会、チームとして一番注目されているのは間違いなくスペインだ。EURO08で悲願の欧州制覇を達成。シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケッツ(いずれもバルセロナ)、ダビド・シルバ(バレンシア)、シャビ・アロンソ(レアル・マドリッド)の豪華な中盤が織りなす華麗なパスサッカーはもはや芸術の域だ。前線にはビジャとF・トーレスがおり、決定力にも不安はない。ただ時折脆さを露呈するDFラインは磐石とは言い難い。“本物の無敵艦隊”と目されるスペインに唯一付け入る隙があるとしたらここだろう。

◎ スペイン
〇 チリ
▲ スイス
  ホンジュラス

 優勝を狙うスペインにとっては、日程もネックになるかもしれない。グループステージの試合日程が一番遅いH組は、決勝トーナメントに入ってからの日程が厳しくなる。特に、トーレスとイニエスタはコンディションに不安を抱えている。1戦目のスイス戦と2戦目のホンジュラス戦を連勝して決勝トーナメント進出を決め、3戦目のチリ戦で主力を温存できれば理想的だ。

 強豪国にもかかわらずこれまで優勝は一度もなく、唯一のベスト4進出も60年前まで遡る。スペクタクルな攻撃サッカーで、敗北の歴史を払拭することができるか。

 チリもスペインに劣らず攻撃サッカーを標榜するチームだ。南米予選では18試合で22失点を喫しながらブラジルに次ぐ32得点を記録。エースストライカーのウンベルト・スアソ(サラゴサ)は10得点で同予選得点王に輝いた。両ウイングにはM・ゴンサレス、アレクシス・サンチェス(ウディネーゼ)、トップ下にはマティアス・フェルナンデス(スポルティング)と、前線にはヨーロッパで活躍する好タレントを擁する。少々の失点を覚悟の上で攻めに行くスタイルは魅力的だ。スペインとの一戦は壮絶な撃ち合いになるだろう。グループステージの隠れた注目カードだ。

 スイスは攻守に安定している。名将オットマー・ヒッツフェルト率いるチームは成熟度も高い。DFはシュテファン・グリヒティンク(オセール)、中盤にギョクハン・インレル(ウディネーゼ)、トランクィロ・バルネッタ(レバークーゼン)、前線にエレン・デルディヨク(レバークーゼン)と、各ポジションに実力のある選手が揃っている。前回大会に続く16強進出も充分射程圏内だ。

 ホンジュラスは82年のスペイン大会以来、7大会ぶりの出場となる。現在の代表チームにはウィルソン・パラシオス(トッテナム)をはじめ、ヨーロッパで活躍する選手が多い。ダビド・スアソ(ジェノア)、エドガル・アルバレス(バーリ)のスピード、W・パラシオスの運動量、マイノル・フィゲロア(ウィガン)のフィジカルなど自慢の身体能力を活かしてW杯初勝利を目指す。

(S.S)