17日、南アフリカワールドカップグループリーグB第2節がヨハネスブルグ・サッカーシティで行われ、アルゼンチン(FIFAランキング7位)と韓国(同47位)が対戦した。序盤から実力に勝るアルゼンチンが押し気味に試合を進める。得点が生まれたのは前半16分。フリーキックのチャンスで、相手のオウンゴールが生まれ、アルゼンチンが幸運な形で先制する。33分にはFWゴンサロ・イグアイン(レアル・マドリッド)がヘディングで追加点を奪う。前半ロスタイムに韓国が1点を返すが、アルゼンチンはイグアインが後半31分、35分と立て続けに決めてハットトリックを達成し、4対1で大勝した。

 イグアインが今大会初のハットトリック(ヨハネスブルグ・サッカーシティ)
アルゼンチン 4−1 韓国
【得点】
[ア] オウンゴール(16分)、ゴンサロ・イグアイン(33分、76分、80分)
[韓] イ・チョンヨン(45+1分)

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 グループリーグBの第2節アルゼンチン対韓国戦は、共に初戦を勝ったチーム同士の対決となり、決勝トーナメント進出を占う意味でも注目度の高い一戦となった。両国のW杯での対戦は86年メキシコ大会以来となり、その時はアルゼンチンが3対1で勝利している。

 その86年大会以来の優勝を目指すアルゼンチンのディエゴ・マラドーナ監督は、前節と同じくリオネル・メッシ(バルセロナ)、カルロス・テベス(マンチェスター・シティ)、イグアインと欧州トップリーグでゴールを量産する豪華な3トップを並べ4−3−3の攻撃的なフォーメーションで試合に臨んだ。

 対する韓国のホ・ジョンム監督は、パク・チュヨン(ASモナコ)を1トップとした4−2−3−1という布陣を敷く。チームの核であるMFパク・チソン(マンチェスター・ユナイテッド)はトップ下で起用した。これには攻撃だけではなく、豊富な運動量を誇るパク・チソンに高い位置からのプレッシングを期待する意図が見えた。また右サイドバックに守備能力の高いオ・ボムソク(蔚山現代)を入れたことからも、守勢にまわることを想定した現実的な采配だった。

 序盤から試合を支配したのはアルゼンチン。前線で自由に動き回るメッシにボールを預けて攻撃を展開する。韓国も組織的な守備で対抗するがファウルで止めるシーンが目立つ。

 すると得点が生まれたのはフリーキックからだった。16分、左サイドで得たフリーキックを蹴るのはメッシ。ニアサイドに飛び込んだDFマルティン・デミチェリス(バイエルン・ミュンヘン)に合わせようと速いボールを蹴るもデミチェリスのヘディングは空を切る。後ろに流れたボールはパク・チュヨンの足に当たってゴールに吸い込まれ、幸運な形でアルゼンチンが先制する。

 幸先よくリードを奪ったアルゼンチンだったが、アクシデントに見舞われる。守備の要DFワルテル・サムエル(インテル・ミラノ)が左足を痛めてDFニコラス・ブルディッソ(ASローマ)と交代する。

 しかし、その災いは転じて福となす。33分に再び左サイドでフリーキックの場面が訪れる。メッシが短くつないでMFマキシ・ロドリゲス(リバプール)へパスを送る。M・ロドリゲスが中にクロスを入れると、ブルディッソが頭でファーサイドへ逸らす。フリーで待っていたイグアインがヘッドで叩き付けてゴールネットを揺らす。待望の追加点をアシストしたのはサムエルに代わって入ったブルディッソだった。

 一方の韓国は、前半ロスタイムに1点を返す。GKのロングキックをパク・チュヨンがPA内に頭で落とすが、ボールはデミチェリスの前にこぼれる。その処理にデミチェリスがもたつく間に、MFイ・チョンヨン(ボルトン)がボールを奪うとGKと1対1になり右足で落ち着いてシュートを決める。終始押されていた韓国だったが、このゴールによって1点差に詰め寄った。高い位置からのボール奪取は理想としていた形だけに、後半も反撃を期待させた。

 ハーフタイムを挟んだ後半13分、イ・チョンヨンが中央でボールを持つと、右サイドにスルーパスを送る。フリーでもらったMFヨム・ギフン(水原三星)がGKと1対1になりシュートを放つが、ゴールのわずか右に外れてしまう。同点に追いつく最大のチャンスを逃し、一度掴みかけた流れを再び相手に戻してしまった。

 対するアルゼンチンは31分、メッシが途中出場のセルヒオ・アグエロ(アトレティコ・マドリッド)とのワンツーで抜け出して、シュートを放つ。1度はGKに阻まれるが再びボールに詰めてシュート。今度はゴールポストへ当たり、その跳ね返りをイグアインが落ち着いて流し込み、再び2点のリードを奪う。

 ダメ押しとなった35分の4点目も、アグエロとメッシの華麗なコンビネーションからチャンスを作り、アグエロのセンタリングからイグアインがヘッドで決めた。この日3点目をあげたイグアインは今大会初のハットトリックを達成した。試合はそのまま4対1で終了し、アルゼンチンがグループB首位に立った。

 アルゼンチンは初戦のナイジェリア戦と同じくメッシ中心のサッカーを展開し、この日のメッシは4ゴール全てに絡む大活躍だった。またイグアインが3得点を奪ったのは、今後に向けて大きな収穫だ。決勝トーナメント進出へ勢いのつく試合となった。

 敗れた韓国は、実力の差をまざまざと見せつけられた形となった。同点に追いつくチャンスがあっただけに番狂わせを演じる可能性も少なからずあった。その好機を生かせないところに強豪との試合運びに隔たりを感じさせた。次の最終節ナイジェリア戦で勝ち点を奪い、目標であるベスト16進出を果たしたい。

(杉浦泰介)

【アルゼンチン】
GK
ロメロ
DF
サムエル
→ブルディッソ(23分)
デミチェリス
グティエレス
エインセ
MF
マスチェラーノ
M・ロドリゲス
ディ・マリア
FW
メッシ
テベス
→アグエロ(75分)
イグアイン
→ボラッティ(82分)

【韓国】
GK
チョン・ソンリョン
DF
イ・ジョンス
チョ・ヨンヒョン
オ・ボムソク
イ・ヨンピョ
MF
キム・ジョンウ
キ・ソンヨン
→キム・ナミル(46分)
イ・チョンヨン
ヨム・ギフン
パク・チソン
FW
パク・チュヨン
→イ・ドングッ(81分)