19日、南アフリカワールドカップグループリーグD第2節がルステンブルグで行われ、ガーナ(FIFAランキング32位)とオーストラリア(同20位)が対戦した。前半11分、フリーキックのこぼれ球をMFブレッド・ホルマン(AZ)が左足で押し込み、オーストラリアが先制する。早い時間の得点で勢いに乗るかと思われたが、24分にFWハリー・キューウェル(ガラタサライ)がPA内でハンドを犯してしまう。キューウェルは一発退場となり、オーストラリアはPKを与える上に数的不利に追い込まれる。一方のガーナはこれで得たPKをFWアサモア・ギャン(レンヌ)が落ち着いて決め同点に追いつく。その後は数的優位に立つガーナが押し気味に試合を進めるが、得点を奪えない。1人少ないオーストラリアに高さを生かした攻撃で反撃を受けるが、GKリチャード・キングソン(ウィガン)を中心とした守りで凌ぎ、そのまま1対1で引き分け両チームが勝ち点1を獲得した。ガーナはこれで勝ち点を4としグループDの首位に立った。


 オーストラリア、PKで追いつかれ勝ち逃す(ルステンブルグ)
ガーナ 1−1 オーストラリア
【得点】
[ガ] アサモア・ギャン(25分)
[オ] ブレッド・ホルマン(11分)

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 前日にドイツがセルビアに敗れたため、勝ち点3で3カ国が並ぶ混戦模様のグループD。ガーナがここで勝ち点を伸ばし単独首位に躍り出るか。それともオーストラリアが勝利をあげ4カ国が勝ち点で並ぶ、さらなる混戦となるかに注目が集まった。

 オーストラリアは前節のスタメンを4人入れ替えキューウェル、MFマーク・ブレッシアーノ(パレルモ)など攻撃的な選手を起用し試合に臨んだ。

 序盤からオートストラリアが押し気味に試合を進める展開で、一方のガーナは少し受けに回る慎重な姿勢だった。初戦を大敗しているオーストラリアと、初戦を勝って勝ち点3を有しているガーナ。2チームの異なる状況が立ち上がりの姿勢に表れた。

 試合が動いたのは11分。ゴール正面で得たフリーキックをブレッシアーノが直接狙う。ドライブのかかったボールはワンバウンドし相手GKが掴みきれず弾いてしまう。こぼれたボールに詰めていたホルマンが落ち着いて決め、オーストラリアが待望の先制点を奪う。早い時間帯に得点を決めたことによりオーストラリアがこのまま勢いに乗るかと思われた。

 しかし慎重な立ち上がりを見せていたガーナも、1点を失いようやくエンジンがかかり始め反撃に出る。20分、MFアンドレ・アイエウ(アルル=アビニョン)がミドルシュートを放ち相手守備陣を脅かすと、24分にガーナに決定的なチャンスが訪れる。右サイド深いところまで粘ったA・アイエウがグラウンダーのセンタリングを入れると、DFジョナサン・メンサー(グラナダ)が右足で合わせシュートを放つがライン上にいたキューウェルがブロックし跳ね返す。オーストラリアがピンチを防いだかと思われたが、ここで主審の笛が鳴る。

 シュートはブロックしたキューウェルの腕に当たっており、決定機でハンドを犯したキューウェルは一発退場となりガーナにPKが与えられた。これをキッカーのギャンがしっかりとゴール右隅に入れて同点に追いつく。

 数的優位に立ったガーナは更に攻撃を仕掛ける。44分、高い位置でボールを奪ったMFケビン・プリンス・ボアテング(ポーツマス)がドリブルでPA内に侵入するとゴール左へ強烈なシュートを放つ。これはGKマーク・シュウォーツァー(フルアム)に右手一本で弾かれ得点にならない。

 後半に入ってもガーナ優勢は変わらず、ワントップのギャンを中心に攻撃を仕掛ける。5分、ギャンがドリブルからミドルシュートを放つが再びシュウォーツァーに止められる。そこからガーナは立て続けにミドルシュートを放つがどれも精度を欠いたもので、単調な攻撃となり徐々に相手に流れを渡していく。

 オーストラリアのピム・ファーベック監督は21分、ブレッシアーノに代えてスコット・チッパーフィールド(バーゼル)を入れて立て直しを図る。直後の22分に右サイドバックのルーク・ウィルクシャー(ディナモ・モスクワ)のクロスが入るとファーサイドで合わせたのはチッパーフィールド。ヘディングシュートは枠を逸れたものの交代した選手がすぐにチャンスにからんだ。高さを生かした攻撃に活路を見出したオーストラリアは続けて長身FWのジョシュア・ケネディ(名古屋)も投入する。

 すると同点の絶好機が生まれるが、そこに立ち塞がったのはガーナの守護神キングソンだった。左からのチッパーフィールドのクロスをウィルクシャーがPA内フリーでボールを受ける。胸でトラップしてシュートを放つが猛然と飛び出してきたキングソンにセーブされる。こぼれ球をケネディがつめるも再びキングソンがキャッチ。最大のピンチを守護神のファインプレーで救われたガーナは、その後もオーストラリアの高さを生かした攻撃にあいながらもキングソンを中心とした守備陣がなんとか凌ぎ切り、そのまま1対1のスコアで引き分けた。

 ガーナは数的優位に立ちながら、追加点を奪えず引き分けに終わった。攻撃は個人技への依存度が高かった。シュートは22本とオーストラリアを圧倒したものの、枠内にいったのはわずか6本だった。単調な攻めを繰り返すうちに相手の反撃を受けるなど、試合運びに稚拙さが見られた。勝ち点1を獲得しグループ首位に立ち、次戦は引き分けでも決勝トーナメント進出が決まるが、強豪ドイツ相手に今日のような隙を見せれば、逆にグループリーグ敗退もあり得る。コンディションは万全ではないがサリー・ムンタリ(インテル・ミラノ)、ステファン・アッピアー(ボローニャ)など経験豊富な選手の起用も考えるべきだ。

 一方のオーストラリアは攻撃的な姿勢を見せ、先制点を奪うなど幸先のよいスタートを切った。しかし、前半のうちに退場で1人失いPKで追いつかれるなど、苦しい展開となったのは首脳陣の想定外の出来ごとだったはず。それでもシュウォーツァーの奮闘もあり相手の攻撃を1点で防いだため、首の皮一枚つながった格好だ。後半は高さを生かした攻撃でチャンスを作り、次節に向けて光明を見出した。最終節セルビア戦にすべてを懸け2大会連続のベスト16を目指したい。

(杉浦泰介)


【ガーナ】
GK
キングソン
DF
Jon・メンサー
アディ
パントシル
サルペイ
MF
アナン
K・ボアテング
→アモアー(87分)
A・アイエウ
タゴエ
→オウス・アベイエ(56分)
アサモア
→ムンタリ(77分)
FW
ギャン

【オーストラリア】
GK
シュウォーツァー
DF
ニール
ムーア
カーニー
ウィルクシャー
→ルカビツヤ(85分)
MF
ヴァレリ
クリナ
エマートン
ブレッシアーノ
→チッパーフィールド(66分)
ホルマン
→ケネディ(68分)
FW
キューウェル