26日、南アフリカワールドカップ決勝トーナメント1回戦がポートエリザベスで行われ、ウルグアイ(FIFAランキング16位)と韓国(同47位)が対戦した。前半8分にFWルイス・スアレス(アヤックス)が右足でシュートを決め、ウルグアイが先制する。このまま前半を1対0で折り返すと、後半はリードを許した韓国がボールを保持しペースを掴む。すると、23分にセットプレーからMFイ・チョンヨン(ボルトン)がヘディングを押し込み同点に追いつく。しかし、35分にコーナーキックのクリアボールをつなぎスアレスが芸術的なシュートを決めウルグアイが再びリード。そのまま2対1でウルグアイが逃げ切り勝ちを収め、準々決勝進出を果たした。

 粘る相手を突き放し、40年ぶりの8強(ポートエリザベス)
ウルグアイ 2−1 韓国
【得点】
[ウ] ルイス・スアレス(8、80分)
[韓] イ・チョンヨン(68分)

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 グループリーグAではメキシコ、フランスなどを抑え首位通過を果たしたウルグアイは、強力なツートップのディエゴ・フォルラン(アトレティコ・マドリッド)とスアレスのコンビに期待がかかる。さらに守備陣も安定し、これまで3戦を無失点で切り抜けてきた。爆発力のある前線と強固なDFラインを擁し、どこまで決勝トーナメントを勝ち上がるのか。

 一方の韓国は、アルゼンチンと同居する難しいグループを2位で勝ち進んできた。才能あふれる選手が中盤におり、これまで当たりの強さを武器にしていたチームにパスワークのよさも加わった。注目はもちろんMFパク・チソン(マンチェスター・ユナイテッド)だ。アジアが誇るスーパースターが主将としてチームを牽引し、自国開催以来のベスト8進出を狙う。なお、この組み合わせは90年イタリア大会でも一度対戦しており、その時は1対0でウルグアイが勝利している。

 ベスト16ラウンド初戦だけに、両者慎重な立ち上がりを見せるかと思いきや、序盤で互いにビッグチャンスがやってくる。

 最初に決定機を迎えたのは韓国だ。前半5分、パク・チソンが倒されて得たフリーキックのチャンス。PA少し外の位置、やや左サイドからシュートを狙うのはFWパク・ジュヨン(ASモナコ)だ。グループリーグのナイジェリア戦でも同じような位置からゴールを決めたパク・ジュヨンは、4人の壁の上を通しゴール左隅を狙う。うまく壁をよけたボールはゴールへと向かって行くも、シュートは惜しくも左ポストに直撃する。今大会で話題の「ジャブラニ」はゴール直前でやや左に曲がっているようにみえ、ほんの少しの変化で韓国にゴールが生まれなかった。

 片や、最初のチャンスをしっかりとものにしたのがウルグアイだ。8分、MFエディンソン・カバーニ(パレルモ)がカウンターでボールを持つと、大きく左サイドへ展開する。それをフォルランがキープしてゴール前にクロスを通す。韓国DFは5人がゴール前へ戻っていたものの、ボールはファーサイドからPAに侵入したスアレスの足元に入る。GKと1対1になった場面でスアレスは落ち着いてシュートをゴール左サイドネットへ突き刺し、ウルグアイが先制に成功する。

 09−10シーズンでは所属クラブで35ゴールをあげているスアレス。左サイドへフォルランが開いた際にも無理にゴール前でポジションを取らず、逆サイドへ流れていきクロスを受けようとする動きはさすがだ。そしてフォルランのクロスもDFラインとGKの間を通す最高のボールだった。二人がポジションを取り、クロスが上がった瞬間に勝負があったと言ってもよい。ウルグアイは得点シーンに絡んだ3人で、得点後も好機を作っていく。攻めのカードがしっかりとしているため、後ろから無理に攻め上がる必要はない。これが今大会での安定した守備の根幹となっている。

 先制された韓国は30分過ぎからペースを自分たちへと引き戻す。細かいパスを繋ぎ攻めのリズムを作っていった。後半に入ると韓国の攻める時間がさらに増す。ウルグアイはペースダウンのため敢えてボールを持たせていたのかもしれないが、段々と間合いをつめるタイミングが遅れ始め、韓国に決定機が訪れる。6分にはクリアボールを拾ったパク・ジュヨンがゴール前でフリーになりシュート。これは大きく浮いてしまったが、確実にシュートチャンスは増加していった。

 韓国が同点に追いついたのは23分だった。パク・ジュヨンが左サイドからのフリーキックをゴール前へ入れると、ウルグアイDFが一旦クリアするものの、ボールはゴール方向へとあがる。そこへ反応したのはフリーになっていたイ・チョンヨンだった。ヘディングでクリアボールをウルグアイゴールへと押し込んで1対1の同点となる。今大会はセットプレーからの得点が多い韓国。今日も得意の形で追いつき、ここからさらに相手を突き放したいところだった。

 しかし、ここから試合を決めにかかったのは追いつかれたウルグアイだった。1点リードの際には、一旦勢いを弱めた攻撃陣が再びペースを上げていく。この迫力に韓国DFは徐々に押されていき自陣深くまで後退する場面が多くなった。

 そして35分、ウルグアイ右サイドからのコーナーキックをフォルランがゴール前へ入れる。クリアされたボールをヘッドで繋ぎ、ボールは左サイドへ開いたスアレスの元へ。スアレスはDFとの1対1で抜きにかかろうとするも、そこへDFの足が出る。一度はコントロールを失ったように見えたが、スアレスは素早くそのボールを取り戻し、右足でカーブをかけシュートを放つ。巻きながらゴールへと向かったボールはファーサイドから戻ってくるように右ポストへ当たり、そのままゴールへと吸い込まれる。スアレスのこの日2点目、大会3ゴール目が決まりウルグアイが再び韓国を突き放した。

 試合はこのまま終了し2対1でウルグアイがベスト8進出を決めた。ウルグアイの8強入りは70年メキシコ大会以来40年ぶり、その大会では4位にまで上り詰めている。韓国は目標だった決勝トーナメント進出を果たしたものの、2大会ぶりの準々決勝進出はならなかった。

 勝敗を分けたのは、ストライカーの決定力だった。特にスアレスの2点目は大会でも屈指のファインゴールになるだろう。流れを掴んだ時にしっかりと加点する力のあったウルグアイがトーナメントを勝ち上がった。韓国も自分たちの時間を作り同点までは追いついたものの、そこからあと1点を取ることができなかった。セットプレーから好機を演出したパク・ジュヨンも、中盤でチームを鼓舞し続けたパク・チソンもゴール前で決定的な仕事をするには至らない。攻撃の最後の1ピースが輝きを放ったウルグアイに勝利の女神はほほ笑んだ。

 ウルグアイは直後に行われるアメリカ−ガーナ戦の勝者と準々決勝で対戦する。このカードならば、大いに準決勝へ駒を進める可能性がある。フォルラン・スアレスの2トップが更なる躍進のカギを握ることになるだろう。

(大山暁生)

【ウルグアイ】
GK
ムスレラ
DF
ルガノ
ゴディン
→ビクトリーノ(46分)
フシーレ
M・ペレイラ
MF
ペレス
アレバロ
A・ペレイラ
→ロデイロ(74分)
カバーニ
FW
フォルラン
スアレス
→A・フェルナンデス(84分)

【韓国】
GK
チョン・ソンリョン
DF
チョ・ヨンヒョン
イ・ジョンス
イ・ヨンピョ
チャ・ドゥリ
MF
キム・ジョンウ
キ・ソンヨン
→ヨム・ギフン(85分)
イ・チョンヨン
キム・ジェソン
→イ・ドング(60分)
パク・チソン
FW
パク・ジュヨン