日本相撲協会は4日、名古屋市内で臨時理事会を開催し、野球賭博に深く関与していた大嶽親方(元関脇・貴闘力)と大関・琴光喜を解雇処分とした。大嶽親方には退職金は支払われない。琴光喜には特別功労金の支給はないが、引退の際に出される力士養老金(大関は1000万円)、勤続加算金は受け取れる。また自身と弟子が賭博を行っていた時津風親方(元幕内・時津海)は1階級降格(主任から平年寄)で、5年間は昇格させない。弟子9人と床山が関わっていた阿武松親方(元関脇・益荒雄)は2階級降格(委員から平年寄)で、10年昇格させないことになった。その他、賭博の関与が認定された力士ら19名と、所属部屋の親方11名が名古屋場所千秋楽(25日)まで謹慎となる。武蔵川理事長(元横綱・三重ノ海)も謹慎となるため、理事長代行に外部理事の村山弘義元東京高検検事長が就任する。
 結局、この組織では長年のウミが出しきれない。そう思われても仕方のない決定だ。協会が設置した特別調査委員会が出した勧告では、大嶽親方、琴光喜は除名または解雇処分が相当とされ、協会は4日の臨時理事会でこれを受け入れた。除名は最も重い罰則規定で、理事会のみならず、全親方らによる評議員会での4分の3以上の賛成が必要になる。大嶽親方については賭け金も多く、一度、協会に関与を否定する虚偽報告も行っていることから除名もやむなしとの声は強かった。しかし、理事会が出した結論は解雇止まりだった。

 確かに、この賭博問題で問われているのは相撲界全体の体質であり、単に大嶽親方を除名しただけで済むものではない。だが、野球賭博は賭け金が胴元を通じ、反社会的勢力の資金源となっていた可能性が高い。長年続いた関係を断ち切るための意思表示として、理事会は評議員の賛成も求められる除名を打ち出すべきではなかったか。

 ただでさえ、ここ数日の協会の動きは、どこまで事態を深刻にとらえているか首をかしげるものが少なくない。当初は東京からの移動も許されない予定だった謹慎力士や親方は名古屋入りして指導や稽古を行うことが認められた。さらに監督官庁である文部科学省が指導した理事長代行の外部登用にも、力士出身者でなければ務まらないと異論が出た。協会は独自に武蔵川理事長が30%、謹慎役員は20%の減俸とする処分も決めたが、その程度の話ではないだろう。

 角界の常識は世間の非常識――。相次ぐ不祥事の元凶はここにある。その根本が変わらない限り、反社会的勢力との関係はおろか山積する課題は何も変えられない。また相撲ファンを悲しませる出来事が繰り返されるだけだ。

(石田洋之)