10日、南アフリカワールドカップ3位決定戦がポートエリザベスで行われ、ウルグアイ(FIFAランキング16位)とドイツ(同6位)が対戦した。前半19分、MFトーマス・ミュラー(バイエルン・ミュンヘン)の今大会5得点目でドイツが先制すると、対するウルグアイは28分、MFエディソン・カバーニ(パレルモ)がカウンターからゴールを奪い同点に追いつく。ハーフタイムを挟み後半6分、ウルグアイはFWディエゴ・フォルラン(アトレティコ・マドリッド)がこちらも大会5得点目を豪快なボレーで叩き込み勝ち越しに成功する。しかしその5分後、ドイツのMFマルセル・ヤンゼン(ハンブルク)がヘディングシュートを決め再び同点となる。点の取り合いに決着をつけたのはドイツだった。37分、コーナーキックでゴール前の混戦からヘディングを押し込んだのはMFサミー・ケディラ(シュツットガルト)。伝統の勝負強さを発揮したドイツがウルグアイを下して前回大会に続く3位となった。なお、得点をあげたミュラーとフォルランは得点ランクトップタイに浮上している。

 前回大会に続きトップ3を欧州勢が独占(ポートエリザベス)
ウルグアイ 2−3 ドイツ
【得点】
[ウ] エディンソン・カバーニ(28分)、ディエゴ・フォルラン(51分)
[ド] トーマス・ミュラー(19分)、マルセル・ヤンゼン(56分)、サミー・ケディラ(82分)

全64試合詳細レポートと豪華執筆陣によるコラムはこちら

 両者にとって今大会7試合目となるこの試合は満身創痍の中で行われた。特にドイツは風邪による体調不良と負傷者続出もあり、ベストメンバーから大幅な変更を余儀なくされた。今大会でも4得点をあげ、W杯歴代最多ゴール記録15ゴールにあと1点と迫ったミロスラフ・クローゼ(バイエルン・ミュンヘン)が背中を痛め欠場したのは残念な限り。そのかわり、準決勝では出場停止だったミュラーが戻り、次代を担う若きドイツ代表が2大会連続の3位を狙った。

 一方のウルグアイも出場停止明けのFWルイス・スアレス(アヤックス)が先発へ復帰した。しかし、ガーナ戦終了間際のハンドを犯したスアレスに対し、彼がボールを持つ度にスタンドからは一斉にブーイングが浴びせられた。フォルランとの2トップは大会屈指の破壊力を持つものの、スタンドを敵に回しスアレスが本来の動きができるか、ここも関心の的となった。

 過去の3位決定戦を振り返ってみると、得点が多く生まれるケースをよく見受ける。勝つにこしたことはないが、負けても大きな痛手を負うわけではない3位決定戦は、お互いに積極的なプレーができる。各選手には疲労が残っているものの、今日の試合でもゴールラッシュが期待された。

 試合は立ち上がりからドイツがボールを保持しながら進んでいく。スペインとの準決勝では、それまでのように細かいパスを繋ぎながらゴールへと迫っていく動きがほとんど見られなかった。だが、今日の試合ではMFメスト・エジル(ブレーメン)、MFバスティアン・シュバインシュタイガー(バイエルン・ミュンヘン)がボールを触る機会も多く、世界を魅了したサッカーが戻ってきた。一方のウルグアイは2トップにカバーニが絡んで3人で攻撃を組み立てていく。これはグループリーグからウルグアイが一貫してきた戦法だ。まさに堅守速攻のスタイルでドイツ陣内へと攻め込んだ。

 先制点が入ったのは前半19分。中盤でボールを持ったシュバインシュタイガーの前にスペースができると、ドリブルでゴールへ向かいミドルシュートを放つ。無回転のシュートを一旦はGKネストル・ムスレラ(ラツィオ)がはじくものの、ゴール前へ飛び出したミュラーがはね返りを落ち着いてゴールへと流し込みドイツが先手を奪った。シュバインシュタイガーがシュートを放った瞬間、両軍の選手の中でミュラーだけがウルグアイゴールへと向かって動きだしていた。ミュラーの好調さを象徴するようなゴールで早々とドイツが先制した。

 前線からプレッシャーをかけていたウルグアイにビッグチャンスが生まれたのは28分だ。シュバインシュタイガーからボールを奪ったMFディエゴ・ペレス(ASモナコ)がスアレスへボールを預ける。それと同時に右サイドにはフォルラン、左サイドにはカバーニが駆け上がった。ドリブルで持ち込んだスアレスがラストパスを出したのは左サイド。PA内へ入ったカバーニが冷静にトラップしたボールを左足でシュートし見事、同点に追いつく。今大会で何度も目にした得意のパターンでウルグアイが試合を振り出しに戻した。

 1対1のまま試合を折り返すと、後半立ち上がりからウルグアイが攻勢に出る。6分、スアレスとのワンツーで右サイドを突破したMFエンディオ・アレバロ(ペニャロール)がゴール前へとクロスを送る。やや中途半端な高さになったパスをフォルランがダイレクトボレーで地面へと叩きつけながら強烈なシュートを放つ。ゴール右隅を襲ったシュートに対しGKヨルク・ブット(バイエルン・ミュンヘン)は全く反応できず、ボールはゴールネットを揺らした。フォルランの大会5ゴール目でウルグアイがドイツをリードする。

 しかしその5分後にはドイツがしっかりと追いつく。右サイドを駆け上がったDFイェロメ・ボアテンク(ハンブルク)が速いクロスボールを入れると、ゴール前にあがったMFマルセル・ヤンゼン(ハンブルク)がヘッドで合わせに行く。身長190cmのヤンゼンには2人のDFがついており、さらにGKも飛び出したが、クロスボールをしっかりと頭でとらえたヤンゼンは、ボールを確実にゴールへと導いた。リードを奪われてもすぐに追いつくあたり、いかにも勝負強いドイツの姿だった。今大会は平均年齢が24歳と非常に若いチームだが、これまでドイツ代表が築いてきた精神的な強さはしっかりと受け継がれている。それを証明するゴールとなった。

 互いに2ゴールを生んだ試合にドイツが決着をつけたのはコーナーキックからのチャンスだった。左サイドから高いクロスを送ったエジルのボールはゴール前の混戦でややルーズになる。クリアに入ったDFディエゴ・ルガノ(フェネブバフチェ)の足に当たったボールはファーサイドにポジションをとっていたケディラの目の前にこぼれる。今大会で攻守にわたり活躍してきたケディラはここでも落ち着いてボールをゴールへと押しこみ、決勝点をあげることに成功した。ケディラはミヒャエル・バラック(チェルシー)が負傷したため、急遽代役としての重責を担った選手だ。彼の目の前にボールがこぼれてくるのも、勝負の綾なのかもしれない。このチャンスをケディラがしっかりとものにし、ドイツがウルグアイに引導を渡した。

 試合終了間際には相手ゴール正面でウルグアイがフリーキックのチャンスを得る。キッカーはもちろんフォルランだ。直接ゴールネットを揺らすことになれば同点に追いつくばかりでなく、単独得点王の可能性も出てくる。きわめて重要なシーンだったが、フォルランの右足から放たれたシュートは無情にもゴールバーを叩きゴールキックとなる。その瞬間、主審のホイッスルが鳴り響きタイムアップ。ドイツがウルグアイを3対2で下し、2大会連続の3位を確定させた。ウルグアイは初のベスト4進出を果たした70年メキシコ大会でもドイツ(当時、西ドイツ)と3位決定戦で戦っているが、その時も0対1で破れており、10大会ぶりの再戦でリベンジを果たすことはできなかった。

 ドイツが3位を確保したため、欧州勢のトップ3独占も決まった。今大会序盤では劣勢が伝えられたヨーロッパ勢も、終盤にくるとその力をいかんなく発揮した。中でもスピーディーなサッカーを展開したドイツに対し、世界中から賞賛の声が送られた。エジル、ミュラー、ケディラといった若手は14年ブラジル大会でも十分に主力として戦える。前回は地元開催の3位であり、南アフリカの地で得た今大会の3位のほうが価値は大きい。この成績は次回ブラジル大会での決勝進出への大きなステップとなるに違いない。

(大山暁生)

【ウルグアイ】
GK
ムスレラ
DF
ルガノ
ゴディン
フシーレ
カセレス
MF
ペレス
→ガルガノ(77分)
アレバロ
M・ペレイラ
カバーニ
→アブレウ(89分)
FW
フォルラン
スアレス

【ドイツ】
GK
ブット
DF
フリードリッヒ
メルテザッカー
アオゴ
ボアテンク
MF
ケディラ
シュバインシュタイガー
ヤンゼン
→クロース(81分)
ミュラー
エジル
→タスキ(90+1分)
FW
カカウ
→キースリンク(74分)