パナソニック第5回世界大学野球選手権大会は4日、横浜スタジアムで準々決勝が行われ、日本代表は台湾代表と対戦した。日本は初回に4番・伊藤隼太(慶大)のタイムリーなどで2点を先制すると、2回以降も打線がつながり、大量13得点。投げては先発の菅野智之(東海大)が5回を無失点に封じる好投をみせ、13−0で7回コールド勝ちを収めた。日本は5日の準決勝で大会3連覇中の米国代表と対戦する。

 1番・伊志嶺、5打数5安打3打点(横浜)
台湾代表    0 = 0000000
日本代表   13 = 220432× (規定により7回コールド)
[台] ●廖文揚−頼鴻誠−林ユウ清−陳冠宇
[日] 〇菅野−野村−大石
(写真:最速150キロの速球で台湾打線を牛耳った菅野)
「負けられない試合は1番・伊志嶺、先発は菅野で決めていた」
 一発勝負の決勝トーナメント、日本代表の榎本保監督は温めていたプランを、ついに実行に移した。そして指揮官の期待通り、2人のキーマンが日本を勝利に導いた。

 まず投のヒーローは菅野だ。相手の台湾は予選ラウンドA組3位ながら、王者・米国と延長戦にもつれ込む打撃戦を演じている。「打撃は力があっていい。低めに丁寧に投げよう」。8月1日のキューバ戦では157キロの速球を投げ込んだ剛腕だが、むやみにストレートで押すことはしなかった。この日の球速は最高150キロながら、スライダーなどの変化球をうまく交え、アウトを重ねていく。

 テンポのよいピッチングにバックも好守で応えた。2回には1、2塁間を抜けそうな当たりをファーストの荒木郁也(明大)が横っ飛びで抑え、ピッチャーにトス。その回の攻撃を3人で終わらせた。また4回には菅野が初の連打を許したものの、レフトの長谷川雄一(近大)が好返球。ホームを狙った走者を刺し、相手に得点を許さなかった。結局、菅野は5回を投げて4安打無失点。6回以降は野村祐輔(明大)、大石達也(早大)と継投して無失点リレーを完成させた。

 そして攻撃の流れをつくったのは、1番に打順をあげた伊志嶺翔大(東海大)だ。「彼が(塁に)出ると出ないではチームの活気が全然違う」。榎本監督はかねてより、この走攻守3拍子揃った右打者をトップに起用する構想を明かしていた。その新オーダーが絵に描いたようにはまった。「どの打順でも塁に出ることを意識している」と語るリードオフマンは、初回の第1打席でライトの右を破る2塁打でチャンスメイク。2打席目では外のボールにうまく合わせてタイムリーを放つ。その後も振ればヒットの活躍でなんと5打数5安打の大当たり。理想的な結果に指揮官は「伊志嶺はこれからも1番で続けていく」と手ごたえを感じていた。

 打線のつながりでは伊志嶺のあとを打つ2番・渡邉貴美男(国学院大)の存在も大きかった。キューバ戦で右ひざを負傷して7針を縫いながら、わずか2日で強行出場。1打席目できっちり犠打を決めると、2打席目以降もノーヒットながら3四死球で出塁し、クリーンアップに打順を廻した。「小さな体なのに、どこから出てくるのだろうと思うほどエネルギーがある。彼を(先発から)外す気はまったくない」。榎本監督も絶賛する働きぶりだった。

 満を持して組んだラインアップで投打がかみ合い、いよいよ5日は最大の関門、米国と激突する。米国とは2年前の前回大会では決勝で顔を合わせ、延長の末に涙を飲んだ。しかし、昨年の日米大学野球選手権でも3勝2敗と勝ち越している。「もうひとりの軸はみなさんもご存知でしょう。後は彼に託したい」。榎本監督は名前こそ出さなかったが、大一番の先発はエースの斎藤佑樹(早大)が確実だ。今大会は初戦(7月30日)の韓国戦に先発し、6回無失点で日本に勝利をもたらせた。数々の大舞台を踏んできた右腕で強敵をねじ伏せる。

(石田洋之)