パナソニック第5回世界大学野球選手権大会は5日、横浜スタジアムで準決勝が行われ、日本代表は米国代表と対戦した。日本は初回、相手のバッテリーミスに乗じて1点を先制したが、先発・斎藤佑樹(早大)の制球が定まらず、満塁弾を浴びて逆転を許す。日本はすぐさま2回に1点を返したものの、以降は米国投手陣に抑えこまれ、2−4で敗れた。日本は地元開催での悲願の初優勝ならず。7日に3位決定戦で韓国代表と対戦する。

 斎藤、痛恨の被弾 打線もわずか3安打(横浜)
日本代表   2 = 110000000
米国代表   4 = 40000000×
[日] ●斎藤−乾−大石
[米] ○グレー−ノア・ラミレス
本塁打  (米)スプリンガー満塁
(写真:満塁弾を打たれ、マウンド上で榎本監督(中央)から声をかけられる斎藤)
 試合後、会見場に斎藤の姿はなかった。
「彼は4年間、日本代表のユニホームを着てきて今日の試合にかけていた。斎藤の気持ちはよく分かる。(会見に臨むのは)勘弁してやってほしい……」
 榎本保監督はそうエースの心情を思いやると声を詰まらせた。

 まさに1球に泣いた試合だった。初回、1死満塁のピンチ。打席には5番のジョージ・スプリンガー。初球、フォークが落ちず、甘く入った。鋭く振りぬかれた打球は左中間スタンドで大きくはねた。あっという間の4失点。これが日本には重くのしかかった。

 何より満塁にした過程がよくなかった。榎本監督が「自分のフォームで投げられていなかった。いいボールと悪いボールがはっきりしていた」と評したように、制球がままならなかった。先頭打者にいきなり3ボールから入ると、2番打者には粘られた末に四球を与える。ヒットでつながれた後、4番のライアン・ライトには追い込みながら死球。パワーのある相手に走者をためたことが致命傷になった。

 しかし、斎藤も並の投手ではない。そこから徐々に自らの投球スタイルを取り戻した。低めにボールを集め、強打の米国打線に自分たちの打撃をさせなかった。5回には内野のまずい守備もあって1死1、2塁と走者を背負ったものの、スイッチが入ったのか声を上げながら気合の投球をみせる。グランドスラムを打たれたスプリンガーを143キロのストレートで空をきらせるなど、2者連続三振。「ストレート、フォーク、スライダーを必要な時に、必要なところにきちっと投げられる」。一発で日本を沈めたヒーローも、その投球には舌を巻いた。
(米国のキンナバーグ監督は「間違いなくメジャーに行ける」と太鼓判を押した)

 結局、斎藤は2回以降は外野へのヒットは許さず、6回4安打4失点。2番手の乾真大(東洋大)、3番手の大石達也(早大)も1イニングずつを三者凡退に仕留めた。特に大石は相手の4〜6番に対して三者連続の空振り三振。しかも決め球はすべてストレートだった。「投球術が優れている。大きな成功を収める投手だ」。敵将のキンナバーグ監督も賛辞を送る内容だった。

 ただ、投手陣の踏ん張りに打線は応えられなかった。というよりも米国投手陣の出来がさらに良かったというべきか。先発のソニー・グレーは来夏のMLBドラフト上位指名が有力視されている右腕。初回、2回こそコントロールにばらつきがあったものの、3回からは本人も語ったように「ストレートのコントロールを修正した」。左打者が並ぶ日本打線に対して、クロスファイアでインコースの低めを突き、尻上がりに調子を上げた。しかもストレートの球速は150キロ超。そこへ緩いチェンジアップも織り交ぜて日本を牛耳った。

 グレーとは昨年の日米大学野球選手権で対戦している。最終第5戦では最終回に同点に追いつき、延長戦の末、サヨナラ勝ちを収めた。だが、主将の伊志嶺翔大(東海大)は「昨年はコントロールがアバウトで真ん中から散らばっていたが、今年は良くなっていた。的を絞らせてくれなかった」と唇をかんだ。終わってみれば、日本のヒットはわずか3本。8回から継投したノア・ラミレスもスリークォーターから繰り出される速球に威力があり、反撃はならなかった。

 初の地元開催で優勝を目指した日本だったが、結果的には最大のライバルであるキューバ、米国には相次いで敗れた。いずれも相手のパワーにねじ伏せられた格好だ。榎本監督は米国については「日本にも勝つ要素はある」としながらも、キューバには「2回やっても2回やられる」とレベル差があることを認めた。今の野球界にはプロの世界でもWBCがある。互いに成長したステージで再び激突することを期待したい。

 なお、決勝はキューバ−アメリカの組み合わせ。米国は大会4連覇を、キューバは4大会ぶりの優勝を目指す。日本は2大会連続のメダル確保へ韓国との3位決定戦に臨む。

(石田洋之)